はじめに
一 水辺と日本人
ヒトとサルをくらべると
ヒトは「裸のサル」
「悪食のサル」でもある
超雑食は進歩への基盤
陸から海に押し戻された
海のなかでなにが起こったか
女の由来にかくされている
「水辺のサル」になった
平らなユカと平らなアシが発達した
二 山海に暮らして一万年
生きている大地
海からやってきた
海上からめだつ断層崖
舟をあやつる縄文人
段丘上にある集落
汽水域の生活
一五〇〇年つづいた集落
階層社会があったか
一大祭祀集落が母集落か
縄文空間をいまに伝える東京
花綵のような山すその水辺
三 海が水辺をつくった
海中の絶島
葦が繁る海をみつめていた
葦から国土が湧いてくる
佐賀平野をみたか
雲のようにひろがる原野があった
干潟を行き来する淡水
風、木、山、野の神、そして最後に
あらたな国のイメージ
出雲の葦原の中つ国
お米が海の水辺に目をつけた
出雲を見捨てた
四 内陸の湖を蹴裂いた
海中の島のなかは
盆地に目をつけた
内陸の低湿地だった
溜池と小河川を利用して
湖盆の水を抜いた
全国にある蹴裂伝説
縄文人も蹴裂いた
「安住の地」のイメージ
小盆地宇宙
盆地と水のつきあい方
五 自然の上に海辺の低湿地を拓いた
しらぬひ筑紫
かつて平野は海だった
海と平野はつながっている
泥水が毎日はいりこむ
泥水を暴れ川が運ぶ
呪術で川を治める
神石が土地をつくる
クリークができた
水と土の世界が生まれた
地下情報を共有する小さな地域
「共同自助」の世界
地域ごとに「みず道」がある
内なる「小さな環境」づくり
六 水辺は遊び庭
火の文化と決別した
水辺で行動を起こした
ヒメヒコ制が宣言された
水辺はヘッドクオーター
他者との交流の場
川中の聖地
中州に根拠を置いた
熊野にいます神が増幅した
アマツカミ族の「水辺のニワ」
水辺の思想
古代の集落の「遊び庭」
水辺のニワは遊び庭
曲水の宴としてひろまった
州浜で政治をおこなった
七 水辺のニワがすまいになった
古代の貴族のすまい
すまいに壁がない
家屋文鏡はなにを語るか
「ヤシロ」に住まう
祭住一致のすまい
寝殿造は「遊び庭」に建つ
「水辺のニワ」のすまい
段差による場づくり
寝殿造はなぜ高床か
「水辺のニワ」に回帰して発展した
八 水辺がすまいを進化させた
水辺で暮らしつづけた
ユカに特別な感情をもっている
土間と共存する板床
土間は最初のユカ
ユカに人格をあたえた
土間のイメージと空間
畳に照射された土間
框が発達した
ユカは外にもむかった
「にわ」はユカである
ユカはコミュニケーションの場
九 水辺から都市が生まれた
環濠の拠点集落
乱流地帯に神殿都市をつくった
水の祭祀が町になる
水をつくりだして集住する
川原に町が生まれた
低湿地が都市化時代をつくりだした
わたしたちの都市は低平地都市
山川藪沢の思想
一〇 劇場は都市の水辺の遊び庭
四条河原で歌舞伎が生まれ育った
水辺の都市のなんでもない水辺
中州が聖地になった
四条河原に先住者がいた
転々とする芸能興行地
五条河原が興行地になったのは
かぶきおどりの創始
野天に仮設の小屋掛け
あたらしい「水辺の遊び庭」ができた
「水辺の遊び庭」が町になった
一一 海辺にもうひとつの都市があった
幕末期、製造業にすぐれたものが
山の隅々まで耕されている
沿岸を利用した
自然生産物はめぐまれている
農業国家とおしえこまれた
「村とよばれた都市」があった
海辺が生活の主たる場
海辺の根拠地にあらわれた港市
湊におおくの寺社が
寺社が海辺を発展させた
一二 山海の一大都市をつくった
mountain goes to sea
いわゆる人工島とは異なる
地味な調査による防災と人づくりから
港外に人工島都市を
都市はひらかれている
埋め立ては自然の賜物
海を忘れかねる情
低平地都市は蟻地獄
「草木と青空とを忘れかねる情」
平地とはちがった文化を得た
縄文のリ・インカネーションだ
ひとつの結語
あとがき
参考文献