監訳者解説
日本語版への序文
序
第一部 世界議会の構想――その歴史と先駆者達
第1章 ストア学派からカントまで――コスモポリタニズム、自然法、そして契約の思想
古代ギリシャのコスモポリタニズム/インドと中国におけるコスモポリタンのルーツ/ヴィトリアの「全世界共和国」/「国家主権」下の平和の概念/ホッブスとロックの社会契約思想/社会契約とボルフの「諸民族の国家Völkerstaat」/カントのコスモポリタン構想
第2章 18世紀――啓蒙主義運動、革命、議会主義
米国の連邦国家と代表民主制/議会主義の歴史的ルーツ/フランス革命のコスモポリタニズム/クローツの「人類共和国」/コスモポリタニズムの終焉
第3章 ウィーンからハーグまで――統合のダイナミックスと国際議会運動
サルトリウスの「人民共和国」/ペキュールの世界規模の統合の概念/ペキュールの世界連邦と世界議会/テニスンの「人類議会」/選挙権拡大のための長き闘争/国際議会運動の誕生/列国議会同盟IPUの設立/促進材としてのハーグ平和会議/米国における国際主義/列国議会同盟IPUを巡るイニシアティブ/ドイツの平和運動から登場した議論
第4章 世界大戦と国際連盟
「円卓会議」グループの計画/社会文化的進化の理論と世界連邦/ヴェルサイユ講和会議の協議事項となった世界議会/国際連盟規約の「ドイツ案」/国際連盟に対する失望
第5章 第二次世界大戦と原子爆弾――国連初期の世界連邦主義
ファシズムの圧力下の連邦主義/世界連邦主義の発展/戦後秩序のプランニング/国連に対する根本的な批判と原子爆弾の衝撃/世界連邦制への著名人の支持/リーブの民主制、国民国家と国家主権に対する批判/支持者としてのアルバート・アインシュタインとアルベール・カミュ/カトリック教会の立場/1945年11月の英国のイニシアティブ/国連憲章レビュー会議の論点/欧州評議会の設立/ソーンの国連における議員総会設置の提案/世界憲法のモデル/クラークとソーンのモデル/世界政府調査教育会議の討議と結論/世界連邦への議会の協力
第6章 東西ブロックの対立と非政府組織NGOの台頭
冷戦の最前線の間に捕らえられた世界連邦主義/世界連邦主義運動と北大西洋条約機構NATOの創立/世界連邦主義への支持の低下と世界議会/世界秩序モデル・プロジェクト/非政府組織NGOの重要性の増加/「第二院」の構想/国連総会における加重投票の問題/ベルトラン報告/ペレストロイカとゴルバチョフのイニシアティブ
第7章 冷戦の終結――民主化の波とその議論の活性
民主化の波/民主化議論の活性化/戦略的概念としての国連議員総会/世界議会と国連議員総会UNPAへの支持/グローバル統治委員会の報告/文化と開発についての世界委員会の報告書
第8章 グローバル化時代の民主制
グローバル化と国民国家/「コスモポリタン民主制」の理論/フォークとストラウスの論文/民主制国家の共同体?/ヘッフェの世界連邦共和国/WTO議会を求める声と列国議会同盟IPUの役割/世界議会と国連議員総会UNPAに向けた他のイニシアティブ
第9章 「テロとの戦い」、IPUの役割、UNPAへのキャンペーン
地雷禁止、国際刑事裁判所と世界社会フォーラム/グローバル議会の構想に関する新たな貢献/ラクナウ会議/9.11とグローバルな民主制/ドイツ連邦議会の調査委員会の報告書/グローバル化の社会的側面に関する世界委員会による報告書/ウブントゥ・フォーラム・キャンペーン/カルドーソ・パネルの報告書/UNPAへの支持の拡大/UNPA設立を求める国際キャンペーン/2007年以降の国連議員総会UNPAの設立要請/第3回世界議会議長会議/2011年の欧州議会の決議/デ・ゼイヤスの勧告/その後の進展/オルブライト・ガムバリ委員会による報告/トランプの選出と進行中の努力
第二部 世紀の統治と民主主義
第10章 人新世、惑星地球の限界、コモンズの悲劇
人類の時代/地球システムの限界/ボランタリズムの問題/コモンズの悲劇/グローバル共通財の管理/世代の問題/グローバル多数決による決定/国際法の悲劇
第11章 オーバーシュート、「大いなる変容」、グローバルな環境・社会市場経済
オーバーシュートとエコロジカルフットプリント/成長のユートピアの終わり/グローバルな環境・社会的発展という課題/変容への主な障害としての「政治的障壁」/国家形成のプロセスと市場経済の興隆/市場原理主義と国家介入主義の間の「二重運動」/グローバルな環境・社会市場経済
第12章 ターボ資本主義、金融危機、グローバルな規制緩和への反撃
「二重運動」の現代的妥当性と規制からの解放問題/金融危機と継続する金融システム全体のリスク/金融システム安定化のための国家の介入/「最重要グローバル公共財」としての金融システム/国際法の無政府的なシステム/自由主義、自由放任主義と世界国家の問題/規制緩和のグローバルな競争/タックス・ヘイブンと匿名のダミー会社の重要な役割/隠された数兆ドル/規制緩和反対運動のゴールとしてのグローバル国家の形成
第13章 世界通貨、グローバル課税、財政連邦主義
世界通貨と世界中央銀行/国家の通貨政策の対外的影響と通貨戦争/世界準備通貨に関する最近の提案/徹底的な財政競争/多国籍企業への一律課税/OECDによる拒絶/グローバル財政連邦主義と財政主権の復活/グローバル税の構想/グローバル税の収入の管理、監督と支出
第14章 世界国内政策、主権超越的問題、複雑な相互依存
「主権超越的問題」/相互依存の概念/政府横断的ネットワークそして国内政策と外交政策の融合/国際秩序の発展の諸局面/主権そして「爆縮implosion」の時代
第15章 世界文明の脆弱性、実存的危機、人類の進化
世界的崩壊の可能性/人類の遺産としてのゲノム/生殖遺伝学/超人間主義と人工知能/自律的兵器/バイオテロリズム、ナノボットと新ウィルス/グローバル法に基づく規制の必要性
第16章 核兵器の脅威、軍備縮小、集団安全保障
万物の破滅をもたらす核戦争/核戦争に陥る危険性/核による事故の危険性/全面的かつ完全な軍備撤廃という果たされることなき義務/核軍縮の枠組み/核兵器と在来兵器の軍縮との関連/マックロイ・ゾーリン協定/実現されていない国連憲章の平和構想と国連軍/世界の平和秩序の四本柱/世界議会の役割
第17章 テロとの戦い、「ブローバック」、データ保護
戦いそのものを目的とする「テロとの戦い」/米国の秘密戦争/米国の外交政策と「テロとの戦い」の結果/人権侵害と米国のドローン戦争/国際的テロリズムの根本原因と世界議会の妥当性/グローバルな監視システムと万人の権利への侵害/グローバルなデータ保護法
第18章 世界法施行制度、刑事訴追手続き、ポスト・アメリカ時代
世界警察法と多国籍警察機関の必要性/古典的な制裁の失敗/国際刑事裁判所を支援する超国家的警察軍/ICCの訴追権限の拡大/主権、そして法の施行機関間の協力/国際的刑事訴追手続きの強化と世界議会/インターポールと説明責任/世界警察法の要としての世界議会/米国の役割と重要性
第19章 グローバル食糧安全保障と飢餓の政治経済学
世界的規模の飢餓の規模と十分な栄養摂取の権利/人口増加と食糧生産/グローバルな食糧供給の脆弱性/石油とリン酸肥料への依存/政治経済学の問題としての飢餓/民主制の妥当性とその国際的制度/農業補助金、WTO、食糧の安全保障/商品市場と金融投機/グローバルな公共財としての食糧の安全保障とG20の失敗/食糧農業機関FAO、世界食糧委員会、そしてグローバルな食糧備蓄/自由貿易、食糧安全保障、そして世界平和秩序/世界議会とグローバルな食糧政策の民主化
第20章 グローバルな「水政策」
飲料水供給の現状/グローバルな問題としての水の安全保障/水の管理における民主制の赤字と世界議会
第21章 貧困の根絶と全ての人々の基本的社会保障
貧困:最重要問題/極貧と適度な生活水準の権利/国際的な開発への新たなアプローチの必要性/経済成長だけでは十分ではない/惑星地球の社会契約の基礎としての社会保障/グローバルなベーシック・インカム/グローバル公共財の世界的な所有権/経済的抑圧なき生活の夢
第22章 グローバル階級の形成、「超富裕階級」、グローバルな不平等
グローバルな階級対立の出現とグローバルな中流階級の役割/グローバルな不安定層プレカリアト/大衆という概念/超富裕層とグローバルな権力構造/多国籍資本家階級/多国籍国家機関/多国籍企業間の相互連携/グローバル反トラスト機関の必要性/グローバルな不平等と不安定性/金融危機の原因としての不平等/投下資本の増加と資本に対するグローバル課税/グローバルな公共政策機関と世界議会の必要性/新たなグローバル階級間の妥協
第23章 世界政府、エントロピーの時代、連邦主義に関する議論
グローバルエリートと世界政府の問題/グローバルなレバイアサンの亡霊/階層的秩序と複雑さ/階層制の様々な形態/権限移譲の原理/グローバルな統治と国際法の双方の分裂/統一のとれた世界法と世界議会/混迷する世界秩序と「エントロピーの時代」/世界文明のエントロピックな衰退?/複雑さの減少手段としての世界連邦主義/タブーの話題としての世界国家/政府間主義の揺れ動くパラダイム/一般的な反動的議論
第24章 第三次民主的変容とグローバルな民主制の赤字
民主化の波/経済発展と民主主義/脱工業化の社会の価値観の変容/普遍的な価値としての民主主義/民主制の権利/政府間主義による民主制の弱体化/多国籍企業の影響/食品規格委員会の例/民主制の問題としての分裂/規模のジレンマ/正当化の連鎖の概念/出力正当化Output legitimation/世界市民への説明責任/国際法と世界法における平等性と代表制/第三次民主主義的変容/国際的議会組織
第25章 惑星地球意識の発達と新たなグローバルな啓蒙運動
戦争と社会-政治的な進化/暴力の減少/理性、共感、そして道徳規範の発展/グループ淘汰における道徳の起源/集団内の道徳と青年期の人間性の危機/社会起因と精神起因/広がる共感の輪/統合的意識への移行/集団的な自己賛美とプロメテウスのギャップ/文化的停滞の問題/グローバルアイデンティティと他者/「概観効果」と惑星地球的な世界観/アイデンティティ、国民、そして国家形成/世界の人々の進歩的な態度/グローバルな歴史と世界市民権のための教育/現代の創造の物語としての「ビッグ・ヒストリー」/近代性プロジェクトの継続/新たなグローバルな啓蒙運動
第三部 将来展望――世界民主制の設計図とその実現
第26章 世界議会の設立
欧州議会の例/国連議員総会UNPAの提案/権限と責任の拡大/増大する民主主義の課題/議席の配分
第27章 世界法の創設
国際法と世界法の比較/二院制の世界立法府/世界憲法裁判所
第28章 制度変容の諸条件
制度変更のための構造的条件/コスモポリタン運動/非政府組織NGOの役割/変化を促進する触媒としての国連議員総会UNPA/四つの要因/恐ろしい事態を予想し、そして回避すること/気候に誘発される事象/民主制の中国/その始まりに当たって
訳者あとがき
国境なき民主主義(DWB)――変化への行動計画
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