シリーズ「文明と平和学」について[佐々木寛]
はじめに――3.11からの平和学[鴫原敦子]
第1部 「3.11」とは何か
第1章 語りにくい原発事故被害――なぜ被害の可視化が必要なのか[清水奈名子]
1 はじめに――原発事故被害を語り続けることへの批判について考える
2 原発事故とその被害を否認する社会
3 被害の不可視化と過小評価を可能にする「否認の構造」
4 おわりに――被害の可視化がもたらす可能性と課題
第2章 3.11後の復興と〈自然支配〉――ポスト開発論の視点から[鴫原敦子]
1 はじめに――「復興」を相対化する
2 「創造的復興」は被災地をどう再編したか
3 原発事故が生み出した克服困難な課題
4 「復興」に透徹される開発主義
5 おわりにー生いのち命を置き去りにする構造に抗う
第3章 福島県中通りにおける地域住民の闘い――放射性廃棄物処理問題をめぐって[藍原寛子]
1 はじめに
2 除染廃棄物処分をめぐる住民の抵抗運動
3 考察
4 おわりに
第4章 福島県外自治体が経験した原子力災害――原子力との関係性に変化はみえるか[原口弥生]
1 「ふくしま」の外の低認知被災地への視座
2 福島県内にとどまらない放射能汚染への対応――近隣県の自治体アンケート結果から
3 福島原発事故後の原子力ローカル・ガバナンスの変化――茨城県・東海村
4 福島原発事故の教訓の内面化
第5章 福島原発事故 メディアの敗北――「吉田調書」報道と「深層」をめぐって[七沢潔]
1 はじめに
2 「国家存亡の危機」――3月15日に何が起こったか?
3 メディアの敗北
4 リベンジのメディアスクラム
5 結びに代えて――原発回帰のかげで
第2部 グローバルな文脈からみた「3.11」
第6章 原子力災害と被災者の人権――国際人権法の観点から[徳永恵美香]
1 はじめに
2 権利主体としての被災者
3 被災者の権利と被災国の義務
4 国内避難民の人権に関する特別報告者の訪日調査
5 おわりに
第7章 戦後の核開発国際協調体制とフクシマの連続性――UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)を中心に[高橋博子]
1 はじめに
2 米原子力委員会とプロジェクト・サンシャイン
3 ビキニ水爆被災とUNSCEARの発足
4 UNSCEAR米側代表
5 軽視された広島・長崎のフォールアウト
6 おわりに――日本政府の問題として
第8章 福島第一原発事故の後始末――海洋放出に反発する太平洋諸島の人びとの声[竹峰誠一郎]
1 はじめに
2 「日本は核の加害国になったのか」――北マリアナ諸島議会決議
3 「震災の瓦礫も流れついた」――北マリアナ諸島・自治体連合
4 「新たなゴジラの誕生」――マーシャル諸島から相次ぐ「懸念」
5 おわりに
第9章 気候危機とウクライナ危機と忘却とによる「究極の選択」――原発再稼働への平和学からの問題提起[蓮井誠一郎]
1 はじめに
2 再稼働への三つの動き――気候危機、ウクライナ、忘却
3 再稼働に伴うリスクと構造的暴力――平和学の視点からの批判
4 平和学からの現代エネルギー政策への提言
第3部 原子力型社会を乗り越える
第10章 原発事故後の分断からの正義・平和構築――非対称コンフリクト変容と修復的アプローチ[石原明子]
1 はじめに――原発事故と紛争解決学
2 原発事故直後の家庭や地域での対立や葛藤
3 なぜ原発事故後に対立や葛藤が多発したのか
4 原発事故後の紛争変容・平和構築の理論
5 原発事故から10年の取り組みを評価する
6 10年目からの原発事故をめぐる紛争変容・平和構築
7 おわりに
第11章 「風評」に抗う――測る、発信する、たたかう人びと[平井朗]
1 はじめに
2 「風評」言説に抗って
3 平和学的分析
4 おわりに
第12章 「脱原子力社会」へ歩み出した台湾――原発廃止・エネルギー転換・核の後始末[鈴木真奈美]
1 はじめに
2 「非核家園」の政治過程
3 エネルギー転換
4 ニュークリア・バックラッシュ
5 「核の後始末」
6 おわりにかえて――「脱原子力社会」と市民参加
おわりに――近代「文明災」としての3.11[佐々木寛]