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児童相談所一時保護所の子どもと支援【第2版】

ガイドライン・第三者評価・権利擁護など多様な視点から子どもを守る

編著:和田 一郎
編著:鈴木 勲

紙版

内容紹介

初版刊行から7年。近年、一時保護ガイドラインなど一時保護所をめぐる状況は大きく変化しつつある。本書は2022年5月の改正児童福祉法などの一時保護関連分野の学術的知見を豊富に取り入れ、現場にも活用できる実践的な内容を目指して編集された。

目次

 はじめに

Ⅰ 一時保護所とは何か

第1章 一時保護所の成り立ち、課題、取り組み
  1……誕生の経緯と役割
   戦後からの変遷
   この10年の改善
   三つの役割
  2……現況と課題
   構造的な困難
   保護児童の増加と運営
   人手不足と予算不足
  3……これからの一時保護所に向けて
   新たな潮流
   広域行政と基礎自治体
  4……おわりに

第2章 一時保護ガイドラインの方向性と課題
  1……児童相談所と一時保護所
   法的根拠
   不十分な現状
  2……保護の判断と認定
   誰がどう決めるのか
   保護期間はどのくらいか
   委託一時保護とは
   運営の規定
  3……「ガイドライン」に見る安全確保と権利擁護
   「ガイドライン」とは
   安全確保
   権利擁護
   安全と権利との葛藤
  4……おわりに

Ⅱ 環境・評価・研修

第3章 子どもにとっての環境とは
  1……児童福祉での環境
  2……周囲の大人もまた環境
   職員の存在、職員との関わり
   大切にされる環境
   職員にはどんな支援スキルが求められるのか
  3……職員組織
   理念や運営方針の明確化
   生活の構造化
   支援体制・チームアプローチ
  4……見えない環境を伝える
   ルールも環境として考える
   入所時・インテーク時に伝えたいこと
   権利擁護――参画権・意見表明権を中心に
  5……「他の子どもたち」という環境
   一時保護所の子どもたちの特徴
   阻害要素となる他の子どもの行動
   促進要素となる他の子どもの行動
  6……生活用品(具)・遊具など
  7……学習環境

第4章 生活空間を再設計する
 現在の施設が抱える課題
  1……進まぬ改善
  2……環境整備とは何か
  3……「小規模化」「家庭的養護」の実現の難しさ
  4……施設整備から見た一時保護所が抱える課題
   立地
   居室の構成と配置
   共用空間の構成と配置
   音・光・温熱環境
 具体的な指針
  1……建築と設備
  2……建築の高層化
  3……各室の機能的な配置
   居室の広さについて
   リビング(リビングダイニング)について
   トイレ
   浴室
   執務室(職員室、事務室)
   学習室
  4……まとめ

第5章 第三者評価を洗い直す
 第三者評価の概念
  1……第三者評価とは
  2……福祉施設の第三者評価
   社会福祉施設の場合
   児童福祉施設の場合
   一時保護所の場合
  3……第三者評価の課題
   制度そのものが抱える課題
   一時保護所の特殊性に伴う課題
   評価制度(努力義務)の課題
   自治体設置という運営(ローカルルール)の課題
  4……第三者評価の将来像
   評価員の質の担保
   経済的に独立した評価機関の必要性
   一時保護所に特化した評価尺度
   第三者評価受審の義務化に絡む課題
   経験交流や人材育成としての第三者評価への参加
  5……一時保護所の地位向上のために
 第三者評価の実際
  1……一時保護所への導入
  2……第三者評価「手引き」書について
   「手引き」書とは
   評価基準の構成
   評価の流れ
   現地調査による評価の実施
  3……課題
   評価機関について
   評価結果(内容)とその妥当性
   結果の受容
   第三者評価の公表について

第6章 職員研修の制度検討
 全国基準と自治体ごとの実践
  1……職員の現状と専門性の向上
  2……研修格差
  3……社会調査結果を基にした問題点の提起
  4……今後の人材育成において考慮すべき点
 研修現場での環境学習
  1……ニーズを学んでいるのか
   一時保護所での生活の実態
  2……調査結果から見えること
   研修項目の割合は
   必要・重要な学習なのか
  3……研修項目としての環境設定
   生活を豊かにする環境設定
   環境設定への課題と子どもたちのニーズ
   環境設定の一工夫例
  4……おわりに
 研修の評価と改善
  1……研修評価とは
   評価のとらえ方
   研修評価の目的
  2……研修評価の実際
  3……研修評価の対象と方法
   コンピテンシーとパフォーマンス評価
   研修評価のための情報収集
   新たなカークパトリックモデルに基づく情報収集
  4……研修評価の改善に向けて

Ⅲ 現場からの声

第7章 シェルターで守る子どもの権利
  1……児童相談所の子どもの権利保障
   子どもの人権とは何か、子どもの権利とは何か
   子どもの人権保障の3本の柱
  2……児童相談所を必要とする子ども
   一時保護所にやってくる子どもの状況
   子どもが権利を行使する場
   子どもとおとなの対等なパートナーシップ
   子どもを真ん中にした協働
  3……カリヨン子どもセンター(シェルター)の実践
   発足の契機
   権利保障のための工夫
  4……子どもの権利保障を実現するために
   入居時対応
   個別的処遇
   遊び、余暇、休息の重要性
   外出、通信、面会
   ケースワーク
   退去時
  5……意見表明支援制度について
   意見表明権保障に関する法整備
   意見表明支援とアドボカシ―
   一時保護所の子どもが求めていることは何か

第8章 中野区の児童相談所の設置と運営
  1……新規設置へ向けて
   設置の背景
   運営の基本
   地域に身近な児童相談所
  2……一時保護所の取り組み
   運営の基本
   定員
   空間づくりの工夫
   個別的な支援の実践
   権利擁護
   理由や見通しの説明
   一時保護所と相談部門の連携
  3……取り組みを支える基盤
   人員体制
   人材育成
   子どもの権利を支えるチーム編成と係横断チーム
  4……今後の展開

第9章 自治体の新たな取り組み
 明石市の通学支援
  1……明石こどもセンターについて
   概要
   組織体制
  2……通学支援の実際
   支援の概要
   実施による成果と意義
  3……ソーシャルワークと通学支援
  4……まとめ
 江戸川区のアドボカシー
  1……温かみのある場をつくる
   アドボカシー活動の導入
   アドボケイト担当職員の役割
   権利実現の事例
  2……最善の利益と権利擁護は共存できるか
   アドボケイト活動はピースの一つ
   これからのこと
 堺市の観察会議と職員育成
  1……観察会議の位置付け
  2……観察会議実施の工夫
  3……行動アセスメント尺度の導入
  4……グループスーパービジョンの場としての観察会議
  5……グループスーパービジョンと職員育成
 相模原市の人材育成と実施
  1……課題
  2……傷ついた子どもたち
  3……必要な力
   知識
   技術
   価値観・倫理観
   姿勢・態度
  4……取り組み
   グループスーパービジョン
   実践報告会
   外部スーパーバイザー研修
   ひまわりのタネの会
   のびのびクラブ
  5……環境が人を育てる

Ⅳ これからの一時保護所に向けて

第10章 改革には何が必要なのか
  1……急速に進む少子化
   人口減でも減らせないもの
   少子化による人材不足
  2……迫り来る課題
   人事システムの問題
   政策の不備と現場の疲弊
   里親委託の課題
   研究者の課題
   行政の課題
  3……自治体にできる処方箋は?
   実現するためにどうすればいいか?
  4……おわりに

第11章 子どもたちにとってより良い一時保護所とは
  1……はじめに
  2……子ども時代の回想
  3……MOTから考えること
   「出会い」のマネジメント
   職場に求心力を持たせるマネジメント
   安心して仕事ができる職場のマネジメント
  4……去りゆく一切は比喩にすぎない

 おわりに

著者略歴

編著:和田 一郎
学習院大学理学部卒業後、茨城県入庁(行政事務)。在職中に筑波大学にて修士(環境科学)及び博士(ヒューマン・ケア科学)取得後、日本子ども家庭総合研究所にて一時保護等の研究をおこなう。子ども総研が事業仕分けにより廃止になったため大学へ転じ、現在は獨協大学国際教養学部教授(数理データサイエンス領域)。専門は政策評価、行政DX、こども論。
編著:鈴木 勲
名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科准教授。自治体の福祉職として、障害児支援施設等で勤務の後、児童相談所で児童福祉司や一時保護所の児童指導員として勤務する。その後、新島学園短期大学コミュニティ子ども学科、公立大学法人会津大学短期大学部幼児教育学科を経て2022年4月より現職。社会福祉士、保育士。共著に『子どものための児童相談所――児童虐待と子どもへの政治の無関心を超えて』(自治体研究社、2021)、論文に「児童相談所一時保護所の人材育成に関する基礎的研究」(社会保育実践研究 第7巻、2023)などがある。専門は社会的養護、子ども家庭福祉。

ISBN:9784750356518
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:272ページ
価格:2800円(本体)
発行年月日:2023年09月
発売日:2023年10月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS