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世界人権問題叢書 115

ヨーロッパ中世のジェンダー問題

異性装・セクシュアリティ・男性性

著:赤阪 俊一

紙版

内容紹介

西洋中世世界のジェンダー構造について、とりわけキリスト教における性の観念に注目し、男装と女装、レイプ・売春、マスキュリニティ(男性性)といった観点から、一般読者にもわかりやすい語り口で詳述する。現代のジェンダー問題への示唆にも富む一冊。

目次

 はじめに

第一章 衣服のジェンダー論
 1 衣服とは何か――衣服の文化論
 (1)何のために衣服を着るか
 (2)ジェンダーを決定する衣服
 (3)ジェンダーとセックス
 2 衣服の権力論
 (1)権力とジェンダー
 (2)衣服条例とは何か
 (3)ジェンダー構造を維持するための衣服条例
 (4)衣服規制とファッション
 3 前近代の服装論
 (1)旧約聖書の服装論
 (2)新約聖書の服装論
 (3)教父たちのおしゃれ批判
 (4)トマス・アクィナスの衣服論
 (5)ルネサンスの衣装論

第二章 異性装論
 1 異性装という問題
 (1)「異性装」という言葉の登場
 (2)禁じられている異性装
 2 聖女たちによる男装
 (1)女性の聖人たち
 (2)『黄金伝説』に登場する男装の聖女たち
 (3)ヤコブスは男装聖女たちをどのように見ていたか
 (4)シェーナウのヒルデグントの場合
 (5)女たちはなぜ男装をしたのか
 (6)男になる
 3 騎士となった女性――『シランス』の場合
 (1)『シランス』という物語
 (2)名は体を表す
 (3)行動がジェンダーを決定する
 (4)マーリン
 (5)封建制
 (6)〈生まれ〉と〈育ち〉
 4 手段としての女装
 (1)女に近づく手段としての女装
 (2)売春の手段としての女装
 (3)演劇空間における女装
 (4)『女性への奉仕』を読む
 (5)ウルリヒはなぜ女装をしたのか
 (6)ウルリヒの女装は男装者とどのように違っていたのか
 (7)マスキュリニティと女装

第三章 セクシュアリティとジェンダー
 1 西洋中世におけるレイプの構造
 (1)レイプは歴史を持っているか
 (2)古代ローマの法に見るレイプ
 (3)ゲルマン部族法におけるレイプ
 (4)聖書解釈学者たちのまなざし――旧約聖書に見られるレイプとその解釈の歴史
 (5)教会法におけるレイプ
 (6)女に対する性犯罪としてのレイプの成立
 2 レイプ犯罪の現実を見る
 (1)襲われたジョーン
 (2)グランヴィルとブラクトン
 (3)実際に起訴されたレイプ犯罪の数
 (4)女を恐れる男たち
 3 中世末期の娼婦たち
 (1)教会人の売春観
 (2)中世都市と売春
 (3)中世末期のロンドンと売春
 (4)サザクを概観する
 (5)サザク娼館条令を読む
 (6)生活者としての娼婦

第四章 西洋中世における教会とジェンダー
 1 教会法による結婚
 (1)教父たちの結婚論
 (2)教会法に見る結婚
 (3)アレクサンデル三世による結婚論の完成
 (4)教会法による結婚の問題性
 2 カトリックと女性聖職者
 (1)カトリック教会における聖職からの女の排除
 (2)宣言
 (3)書簡
 (4)教父たち
 (5)教会法
 (6)スコラ哲学者たち
 (7)開かれた議論のために
 (8)神学的議論から歴史的議論へ
 (9)叙階に関しての問題
 (10)女助祭
 (11)当時の人々にとって女助祭は助祭であった
 3 教皇になった女性
 (1)女教皇の登場
 (2)女教皇の存在が受容される
 (3)女教皇をめぐる論争とその存在の否定
 (4)女教皇のファンタジー

第五章 中世のマスキュリニティ
 1 グレゴリウス改革とマスキュリニティ
 (1)グレゴリウス改革
 (2)グレゴリウス改革とはなんであったか
 (3)聖職者はなぜ結婚してはいけないのか
 (4)教会との結婚
 2 中世におけるハゲとマスキュリニティ
 (1)カール禿頭王は禿げていたか
 (2)長髪の王たち
 (3)短髪の王たち
 (4)なぜカールはハゲ王と呼ばれたか
 (5)トンスラ
 (6)頭髪をめぐる戦い――男らしさをめぐって

 おわりに

 あとがき

著者略歴

著:赤阪 俊一
元埼玉学園大学教授。現関西学院大学大学院非常勤講師。
主な著作に、『西洋中世史〔下〕』(共著、ミネルヴァ書房、1995年)、『神に問う――西洋中世における秩序、正義、神判』(嵯峨野書院、1999年)、『流行と社会――過去から未来へ』(共著、白桃書房、2004年)、『対話で入門 西洋史』(森話社、2008年)、『パンデミック――病の文化史』(共著、人間と歴史社、2014年)。主な編著に、『文化としての暴力』(森話社、2006年)、『罪と罰の文化誌』(森話社、2009年)、『生活と福祉(ジェンダー史叢書8)』(明石書店、2010年)。主な訳書に、ジョン・ベラミ『ロビン・フッド――歴史学からのひとつの試み』(法律文化社、1992年)、メクゼーパー/シュラウト『ドイツ中世の日常生活――騎士・農民・都市民』(共訳、刀水書房、1995年)、ジョージ・ハッパート『西洋近代をつくった男と女』(朝日新聞社、1996年)、シーリア・シャゼル他『現代を読み解くための西洋中世史――差別・排除・不平等への取り組み(世界人権問題叢書89)』(明石書店、2014年)、ユミ・ムン『日本の朝鮮植民地化と親…

ISBN:9784750356143
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:432ページ
価格:5000円(本体)
発行年月日:2023年08月
発売日:2023年07月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBS