はじめに
第Ⅰ部 パレスチナの概要と教育制度
第1章 パレスチナ自治政府とは
1.1 パレスチナ自治政府の設立までの歴史
□イスラムと十字軍の時代(7~16世紀)
□トルコの支配(1516~1831年)
□ヨーロッパの侵攻とシオニズム(1831~1913年)
□第一次世界大戦とバルフォア宣言(1914~1918年)
□第一次世界大戦から第二次世界大戦まで(1919~1940年)
□国連パレスチナ分割決議とイスラエル建国(1947~1948年)
□中東戦争とPLOの誕生(1956~1973年)
□和平への動きとレバノン戦争(1977~1987年)
□和平と独立パレスチナへの道(1988~2000年)
□パレスチナ自治政府の発足(1996年~現在)
1.2 パレスチナ自治政府の地理的環境・行政及び住民
コラム1:ガザ地区への入域
第2章 パレスチナの教育制度・教育課程・教科書
2.1 教育制度
2.2 教育課程(カリキュラム)
2.3 教科書・教員用指導書
コラム2:パレスチナ自治政府の学校
第Ⅱ部 パレスチナの中学校の数学教育とその実践
第3章 分数の演算
3.1 日本:「量分数」で量感を理解させる
□「量分数」の導入
□詳細で視覚的な計算方法の説明
□乗除法では計算前後の量の変化を視覚的に表示
□分数同士の除法計算の原理の説明
3.2 パレスチナ:「分割分数」を使った四則計算?
□「分割分数」での加減乗除の計算
□「分割分数」と割合を表す数とが混同
□分数同士の乗法での「面積図」の利用
□分数同士の除法の原理の説明
□帯分数の乗法における驚くべき計算手法
コラム3:二つの文化圏――分数圏と小数圏
コラム4:等号、不等号の表記
第4章 小数の演算
4.1 日本:意味理解と計算方略の習得
□数直線を用いた意味の徹底理解
□筆算の重視とその明確なアルゴリズム
□「分数・小数並行学習」の教育課程の構造
4.2 パレスチナ:分数をもとにした小数学習
□分割分数を多用した説明――大きな違和感!?
□小数点を打つ位置についての徹底練習
□筆算式は参考程度?
□「分数・小数並行学習」の教育課程の構造をもってはいるが!?
コラム5:世界の小数点の表記
コラム6:分数と小数の本質的差異
第5章 割合
5.1 日本:工夫された学習構造だが、生徒の認識ギャップは不可避
□系統性を重視した学習構造
□比の学習の配置における疑問
□避けられない生徒の認識ギャップ
5.2 パレスチナ:基本的な概念理解ができない!?
□不明瞭な割合の定義と系統性を欠いた学習内容
□比と比の値の混同
□かなりの時間を費やす百分率の学習
第6章 整数(正の数・負の数)
6.1 日本:複雑な計算規則の解説
□工夫された負の数を用いた計算の文脈説明
□計算規則の説明が複雑過ぎ
6.2 パレスチナ:演算記号と正負を表す符号とが並ぶ?
□負の数を用いた計算の文脈説明はほとんどない
□計算における二つの方法
□計算記号と正負を表す符号とが未整理?
コラム7:負の数の起源
コラム8:演算記号「+」「-」「×」「÷」の起源
第7章 平方根と根号を含む式の計算
7.1 日本:さらなる学習の効果的な実施のための数の拡大
□興味深い平方根の意味の解説
□重要な用語についての簡潔で分かりやすい説明
□根号を含む加減乗除の仕方についての丁寧な解説
7.2 パレスチナ:計算の仕方についての解説がない!?
□分かりにくい「無理数」の定義
□平方根を分解するという乗法
□平方根の加減法の仕方の説明なし!
コラム9:根号(√)の起源
第8章 文字式・方程式
8.1 日本:文脈を重視した導入と計算方法の徹底学習
□文脈を重視した文字式と方程式の導入学習
□計算の仕方を徹底的に練習
コラム10:様々な場分けを必要とする問題
8.2 パレスチナ:様々な内容が詰め込まれた過密な内容
□用語や概念の定義をしっかりと理解させる
□学習の拡張による難度の急上昇
□方程式の解法についての不十分な説明
コラム11:授業実践(その1)――「移項」で躓く生徒たち
第9章 関数
9.1 日本:表、式、グラフの相互関連を重視した学習
□日本独特の関数の定義
□小学校での既習学習をもとにした系統的な学習
□表、式、グラフを相互的に関連付けた学習
9.2 パレスチナ:式を重視した暗記型学習
□集合の要素間の対応としての関数定義
□事典的な内容、非系統的な学習構造
□新たな関数内容が次々に登場
コラム12:授業実践(その2)――集中して学習に取り組む生徒たち
第10章 図形の証明
10.1 日本:系統立った学習過程と丁寧な解説
□「角」と「三角形の合同」の学習の熟考された系統性
□証明の仕方についての詳細な説明
□二年間を通じた徹底した「図形の証明」学習
10.2 パレスチナ:既習学習と「証明」学習との弱い関係性
□難解な「ピタゴラスの定理」の学習
□「ピタゴラスの定理」と「三角形の合同」の弱い繋がり
□不思議な「三角形の相似」の学習内容
□かなり高度な「円」の学習内容
□証明手順の解説がほとんどない!?
コラム13:授業実践(その3)――分度器が正しく使えない!
コラム14:「三平方の定理」の美しい証明方法
コラム15:合同記号と相似記号
第11章 統計と確率
11.1 日本:文脈のあるデータ活用とその分析重視
□文脈をもったデータで分布傾向を徹底学習
□統計的問題解決力の育成を目指す学習
□不確定な事象を捉え考察する学習
11.2 パレスチナ:統計に必要な計算重視
□代表値の計算を重視した内容
□かなり遅い円グラフの学習
□集合論を用いた難度の高い確率学習
コラム16:授業実践(その4)――用語の定義だけで終わり?
コラム17:確率論の起源
コラム18:確率の意味についての誤解
コラム19:確率の不思議――「モンティ・ホール問題」
第12章 集合
12.1 パレスチナ:日本の「教育現代化」時代の学習内容の再現?
□集合の概念(集合と要素)
□集合同士の関係
□全体集合と部分集合
□補集合
□共通部分と和集合
コラム20:集合記号の由来
第13章 パレスチナに特有の過激な内容
13.1 領土に関する記述
□「パレスチナ国」の国土(5、6、8、9年生)
□「パレスチナ国」の都市(5、6年生)
13.2 歴史的出来事に関する記述
□ナクバ大虐殺(7年生)
□永遠なる土地の日(7年生)
13.3 現代に抱える課題に関する記述
□イスラエルによる分離壁(5、6、8年生)
□殉教者(9年生)
□難民問題(9年生)
コラム21:数学以外の教科書における過激な内容記述
おわりに
参考文献
附属資料1:日本の算数・数学教科書の内容
附属資料2:パレスチナの算数・数学教科書の内容