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エリア・スタディーズ 98

現代バスクを知るための60章【第2版】

編著:萩尾 生
編著:吉田 浩美

紙版

内容紹介

スペインとフランスにまたがるバスク地方。独特の言語や文化が注目されてきたが、独立を求めた武装組織の解散もあり、飲食(ガストロノミー)、観光、イノベーションなど多方面でのグローバルな存在感を近年急速に高めている。初版以後の重要事象を増補し、情報更新を図った改訂版。

目次

 第2版刊行にあたって
 はじめに(初版)[抜粋]
 バスク地方略図
 バスク語の語のカタカナ表記に関するガイド

Ⅰ 土地・ひと・ことば

第1章 バスク地方とは――空間領域の問題
第2章 バスク人とは――その起源と自己定義
第3章 バスク語とは――系統不明の謎の言語
第4章 バスクの「家」――家屋の名前・名字・個人名
第5章 山バスク――バセリを中心とする小宇宙
第6章 海バスク――異質な外界との門戸
第7章 バスク的でないバスク地方――分水嶺の南側と飛び地
 【コラム1】バスク語を学ぶには
 【コラム2】バスク地方の主要都市

Ⅱ 移ろいゆくものと留まるもの

第8章 歴史舞台への登場――ローマ化とキリスト教化
第9章 フエロ体制――旧体制下のバスク地方
第10章 近代化の足音――経済活動の発展と社会的反目
第11章 民族・階級・国家――民族主義・社会主義・国家主義
第12章 抑圧・加担と忍従・抵抗――フランコ独裁下のバスク地方
第13章 グローバルな人の移動――在外同胞と流入者
第14章 日本とバスクとの関わり――端緒としてのカトリックと柔術
 【コラム3】世界史の中の「バスク人」
 【コラム4】バスク地方の世界遺産
 【コラム5】ゲルニカ
 【コラム6】内戦の記憶――英国に渡ったバスク学童

Ⅲ 「バスク地方」の形成と再編

第15章 「バスク地方」の形成――領域性の拡大か拡散か
第16章 バスク州――領域・自治権・県制
第17章 バスク・ナショナリズムの行方――その多様化と和平の模索
第18章 ナファロア州――異例の成立過程と更改された特権体制
第19章 錯綜し席巻する「ナバリスモ」――スペインの淵源かバスクの源郷か
第20章 歴史の重み――2種類のderechos históricos
第21章 経済協約と経済協定――高度な財政上の自治
第22章 フランス領バスク地方――変革の兆しか
第23章 バスク・ディアスポラの現在――時間的・空間的隔たりとの向き合い方
 【コラム7】アルゼンチンの「バスクの家」

Ⅳ われわれ意識をつくる

第24章 記念日――「祖国バスクの日」と「バスク州の日」
第25章 イクリニャ――民族旗か州旗か
第26章 バスク民族の歌――歌曲の政治性
第27章 バスク語の「正常化」――言語政策と言語権
第28章 バスク語教育の現状――存続・教育から普及へ
第29章 現代スペイン・バスク社会におけるカトリック教会――暴力と分断をこえて
第30章 身体性とバスク・アイデンティティ――伝統スポーツの技法
第31章 バスク・アイデンティティの復興――「記憶」の継承と再生の「場」
第32章 変容するバスク・アイデンティティ――バスク地方辺境域とグローバル都市
 【コラム8】シンボルと表象
 【コラム9】国際バスク語の日とバスク・ディアスポラの日
 【コラム10】コリカ

Ⅴ きずなとしがらみの間

第33章 伝説・伝承――昼と夜、大地と精霊
第34章 歳時記・年中行事――四季と人びとの営み
第35章 伝統的な習俗――古きをたずねる
第36章 諺・格言――古いことばは賢いことば
第37章 口承文芸――時空を越えて、ひとからひとへ
第38章 ベルチョラリツァ――ことばとメロディの職人芸
第39章 力比べ・技競い――労働からスポーツへ
第40章 食文化――バスクの日常の食卓
第41章 バスク女性――伝統社会の神話を乗り越えて
 【コラム11】民族衣装
 【コラム12】バスク地方の被差別民
 【コラム13】エルカルテ・ガストロノミコとはしご酒
 【コラム14】牧羊とチーズ製造

Ⅵ 古くて新しいもの

第42章 「グッゲンハイム効果」――美術館誘致による都市再生という投機
第43章 対外活動――国家を介さないディプロマシー
第44章 バスク語環境の近代化――古くて新しい言語へ
第45章 バスク語文学の新たな地平――話しことばから書きことばの芸術へ
第46章 リテラシーとメディア――バスク語による情報の授受
第47章 現代の「バスク音楽」事情――「エス・ドク・アマイル」以降
第48章 現代バスク・アート――オテイサとチリダ
第49章 バスク伝統スポーツのプロ化――ピロタの場合
第50章 助け合いの精神――モンドラゴン協同組合
第51章 新バスク料理とガストロノミー産業――バスク・ガストロノミーの功績
 【コラム15】バスク地方の博物館・美術館・文書館
 【コラム16】バスク語文学の翻訳

Ⅶ 分断から共生へ

第52章 人口動態の変化――多様化する社会構成員と共生社会
第53章 観光振興とオーバー・ツーリズム――日常生活の質の確保をめぐって
第54章 ジェンダー平等と伝統文化――女人禁制の伝統祭をめぐる確執
第55章 現代スペイン・バスク社会における宗教性――宗教的心性と宗教教育のゆくえ
第56章 研究開発イノベーション――持続可能な社会への道のり
第57章 ICTとバスク語文化――サイバー空間と現実空間
第58章 地産地消と地域呼称――地域のブランディング
第59章 社会的経済――労働から協働へ
第60章 自決権を問い直す――2010年代以降のバスク州の動向
 【コラム17】地域通貨エウスコの挑戦
 【コラム18】ローカル・コモンズとしての共有地

 バスクについてさらに知りたい人のための情報源
 略号一覧
 地名対照表

著者略歴

編著:萩尾 生
東京外国語大学世界言語社会教育センター教授。専門はバスク地域研究/言語社会学。著書にEgile nafarren euskal literaturaren antologia(共著、Nafarroako Gobernua, 2018年)、『世界歴史大系 スペイン史2』(分担執筆、山川出版社、2008年)、Identidad y estructura de la emigración vasca y navarra hacia Iberoamérica (Siglo XVI-XXI)(分担執筆、Thomson Reuters/Aranzadi、2015年)などが、訳書にB. エチェパレ『バスク初文集――バスク語最古の書物』(共訳、平凡社、2014年)、M.モンテロ『バスク地方の歴史――先史時代から現代まで』(単訳、明石書店、2018年)、J. アリエール『バスク人』(単訳、白水社、1992年)、L.=J.カルヴェ『社会言語学』(単訳、白水社、2002年)などが、論文に“External Projection of the Basque Language and Culture. The…
編著:吉田 浩美
早稲田大学非常勤講師。東京大学大学院人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士論文題目『バスク語アスペイティア方言の主要な動詞述語に関する記述的研究』(東京大学、2001年)。専攻:言語学、バスク語。著書・論文に『ニューエクスプレスプラスバスク語』(白水社、2019年)、『バスク語のしくみ〈新版〉』(白水社、2021年)、「スペイン領バスク自治州の4自治体における高校生のバスク語の使用状況――社会的側面と文法的側面から」(2019年、CSELシリーズ21、神戸市看護大学)、「バスク語アスペイティア(Azpeitia)方言の助動詞と動詞語彙に関する世代間の相違」(2023年、CSELシリーズ24、神戸市看護大学)などが、訳書にB. エチェパレ『バスク初文集――バスク語最古の書物』(共訳、平凡社、2014年)などがある。

ISBN:9784750356020
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:408ページ
価格:2000円(本体)
発行年月日:2023年06月
発売日:2023年06月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB