はじめに[稲垣みどり]
第1章 ことばの教育は何をめざすか――共生社会のためのwell-being[細川英雄]
はじめに
1.何のためにことばを学ぶのか――ことばの教育とその分化の問題性
2.戦後の日本語教育の枠組みと展開
3.欧州評議会による言語教育政策から
4.文化観・言語観の変容とことばの教育
5.ことばの教育実践とは何か
6.改めて「言語習得」とは何か――ことばの教育の目的論を問う
7.ことばの市民の教育へ――共生社会のためのWell-beingへ
第2章 「共生社会におけることばの教育」の実践としての「本質観取」[稲垣みどり]
1.はじめに
2.哲学対話としての言語教育における本質観取の実践
3.現象学の原理と本質観取――何のための「対話」か
4.日本語教育は何をめざすか――共生社会のための日本語教育
5.おわりに
第3章 詩人金時鐘と母語の復権――言語をめぐる対立と共生[金泰明]
はじめに――母語か、母国語か
1.「母語」をめぐる対立と共生
2.和解と共存の「言語ゲーム」としての共生
3.母語の復権――言語による「共通了解」と「相互承認」
4.おわりに
第4章 言語権の視点からことばの教育を再考する[杉本篤史]
1.はじめに
2.言語権とはなにか
3.言語権の視点からみた日本の言語政策
4.近年の日本の言語政策の動向
5.あるべき言語教育政策の姿とは
6.おわりに――日本で言語権を保障するために
第5章 学校教育における「共生社会のためのことばの教育」の可能性[森篤嗣]
1.「共生」の受容過程
2.二重の単一言語主義に阻まれる「共生社会のためのことばの教育」
3.国内言語の教育と日本語を母語としない児童生徒
4.国際言語の教育と外国語活動・外国語科
5.国語科教材による「共生社会のためのことばの教育」の可能性
6.教員養成課程に見る「共生社会のためのことばの教育」の可能性
7.まとめ
第6章 共生社会で活かされる「複言語・複文化主義」的発想――現象学の視点から持続可能な対話のことばを探す[山川智子]
1.はじめに
2.一人ひとりの実感が社会を動かす原動力となる
3.「複言語・複文化主義」を現象学的に認識する
4.個人の尊厳を守る持続可能な対話の教育
5.おわりに
第7章 民主的シティズンシップ教育のローカライズを考える――「対話」を積み上げるための「異論」「複数性」「政治性」[名嶋義直]
1.本章で述べたいこと
2.シティズンシップ教育について
3.民主的シティズンシップ教育について
4.ローカライズで目指す教育の形
5.ローカライズを考える(その1)――「異論」に着目する
6.ローカライズを考える(その2)――「複数性」に着目する
7.ローカライズを考える(その3)――「日常の政治性」または「政治の日常性」に着目する
8.「対話」を積み上げる民主的シティズンシップ教育の必要性
9.民主的シティズンシップ教育の実践に向けて
第8章 人・ことば・社会のつながりを考える大学英語教育[オーリ・リチャ]
1.はじめに
2.専門教養としての大学英語教育は何を目指すのか
3.大学英語教育に求められるパラダイムシフト
4.人・ことば・社会のつながりを考える専門教養
5.日本語教育の論点とそこから得られる示唆
6.おわりに
第9章 評価が育てる学生、教師、日本語教育――デザイン力育成を目指した留学生と日本人学生の協働学習を通して[岡本能里子]
1.はじめに
2.なぜ評価の捉え直しが必要か
3.評価をめぐる議論の問題点と求められる視座
4.メディアリテラシー育成を目指したメディア制作協働学習
5.対話を通した多様な評価活動の試み
6.新たな意味や価値を創造するデザイン力育成のための評価枠組みとは
7.「自律した」学習者と教師を育てる評価への視点
8.今後の課題――多様な他者との対話を通した動的な評価を考え続けるために
座談会[稲垣みどり・細川英雄・金泰明・杉本篤史]
日本における言語教育の何が問題で何をめざすべきか
Well-beingという主題を基にした変奏曲
〈外なる共生〉と〈内なる共生〉
何を教えるかの「何を」の部分を変えていく可能性
現実の日本語教育のあり方と共生社会とのギャップ
母語とアイデンティティ――母語は複数あっていい
言語に線を引く境界や枠組みから自由になる方向をめざす「ことばの教育」
日本の中にある単一言語主義とは何か、その背景と理由
対話とおしゃべり――本質観取の活動へ
実践研究の意味
経験とトレーニング
「生きた思想」としての人権
共に生きる社会をつくるためのことばの教育へ――あとがきにかえて[細川英雄]
編著者紹介