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北朝鮮帰国事業の政治学

在日朝鮮人大量帰国の要因を探る

著:松浦 正伸

紙版

内容紹介

戦後日本で大々的に行われた在日朝鮮人たちの北朝鮮への帰国事業を中心に、韓国と北朝鮮の南北分断の問題や日本、米国、中国、ソ連などが関係する冷戦構造の時代にどのような利害が錯綜して帰国事業が進んだのかを政治的・歴史的観点から読み解く画期的な著作。

目次

まえがき

序章

第一部 問題への視角

第1章 北朝鮮帰国事業研究の系譜
 1.在日朝鮮人社会における「内在的要因論」
 2.北朝鮮の「社会主義建設と対南戦略への壮大な動員論」
 3.「日本政府・日本赤十字社の役割論」
 4.北朝鮮政府による「対日人民外交の政治的過剰推進論」

第2章 北朝鮮帰国事業研究のリサーチ・デザイン
 1.分析対象と考察の目的
 2.分析水準
 3.理論検証の方法論的な必要性
 4.歴史事例検証①:組織化の過程(構造分析)
 5.歴史事例検証②:大規模化の過程(機能分析)
 6.歴史事例検証③:縮小期の変容過程(変容分析)
 7.分析の総括と概念的含意
 8.資料

第二部 概念的検討

第3章 大衆動員の構造
 1.「大衆」の本質とは何か
 2.大衆動員の理論化と政治体制による区分

第4章 「被管理大衆団体」としての朝鮮総連
 1.権威主義体制における大衆動員の特徴
 2.「被管理大衆団体」の定義

第5章 エスニック・ロビーとしての「北朝鮮ロビー」
 1.民主主義体制と利益団体
 2.冷戦期のエスニック・ロビー研究
 3.脱冷戦期のエスニック・ロビー研究
 4.「北朝鮮ロビー」の定義
 5.利益団体の優位性の検証

第三部 事例分析

第6章 帰国運動・帰国協力運動の構造分析(1954-1958)
 1.戦後の左派系在日朝鮮人団体
 2.朝鮮総連の被管理大衆団体化
 3.朝鮮総連傘下機関の被管理大衆団体化
 4.北朝鮮ロビーの道程
 5.北朝鮮ロビーとしての日朝協会
 6.北朝鮮ロビーと日本社会党の連携

第7章 北朝鮮帰国事業の大規模化をめぐる機能分析(1958-1960)
 1.集産主義的価値観の措定と浸透
 2.政治的反対勢力の無力化と異質的団体の否認
 3.「帰国者集団」の情報伝達機能
 4.1つめの「疑似環境」:愛国主義
 5.2つめの「疑似環境」:実利的観点
 6.3つめの「疑似環境」:道義的責任論と歴史認識の共有
 7.疑似環境のデータ・マイニング
 8.政策形成の誘導

第8章 縮小期におけるエスニック・マイノリティの運動の再編(1960-1962)
 1.帰国事業の政治化と帰国船
 2.被管理大衆団体化のための帰国事業
 3.大規模化の終焉
 4.在日韓国人社会における反李承晩勢力の形成
 5.在日韓国人社会と張勉政権の関与政策
 6.朴正煕政権の在日韓国人社会への統制

第四部 総括

第9章 帰国事業規模変容問題の政治学
 1.事例分析の総括
 2.概念的含意

 参考文献
 あとがき
 索引

著者略歴

著:松浦 正伸
福山市立大学都市経営学部准教授。専門は、朝鮮半島をめぐる政治外交、東アジア国際政治。筑波大学大学院地域研究研究科東アジアコース専攻修士課程、延世大学校韓国語学堂を経て、2015年ソウル大学校社会科学大学政治外交学部外交学科より外交学博士号を取得。
IPUSソウル大学校統一平和研究院『統一と平和』編集委員会編集委員、韓日軍事文化学会『韓日軍事文化研究』編集委員、RIPS平和安全保障研究所第5期日米パートナーシッププログラム奨学生(通算18期)、第5期島根県竹島問題研究会研究委員等を歴任。
受賞歴に、東アジア学会「徳島賞」、東アジア研究論文「鶴峰奨学賞」最優秀論文賞がある。主な著作に、共著書として『韓日関係の軌跡と歴史認識(韓国語)』(東北アジア歴史財団研究叢書、2020年)、論文に「『疑似環境』と政治」日本国際政治学会編『国際政治』(第187号、2017年)がある。

ISBN:9784750353340
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:308ページ
価格:4200円(本体)
発行年月日:2022年02月
発売日:2022年02月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS