コミュニティの創造と国際教育
〈日本国際教育学会創立30周年記念論集〉
編:学会創立30周年記念論集編集委員会
編著:佐藤 千津
内容紹介
様々な教育課題の基礎に「人類愛に根ざした哲学」をとの趣意に基づき教育政策、多言語・多文化教育、環境教育、生涯学習など幅広い分野の研究をおこなってきた日本国際教育学会、創立30周年の記念論集。
本書では、多文化社会における共存・共生の難題や自然災害後に生み出されるつながり・絆など、課題や様態が複雑化し変容する「コミュニティ」を手がかりに先住・少数民族教育、宗教教育、市民性教育、教員環境など多様な観点から国際教育の未来を考察・展望する。
目次
刊行にあたって
第1章 協働知の生成過程におけるコンテクストとしてのコミュニティ――先住民族の言葉と学び[佐藤千津]
1.問題の所在
2.コミュニティの機能と協働知
3.先住民族の学びとポストコロニアルな視点
4.先住民族の言葉と学び
5.教育とコミュニティをつなぐ
6.結びに代えて
第2章 日豪における先住民族コミュニティ諸語の継承と復興のプロローグ――ポストコロニアリズムの射程[前田耕司]
1.序
2.ポストコロニアリズムの規範的枠組みとアイヌ語学習の現状
3.アイヌ語学習の組織化に向けた議論
4.オーストラリアにおける先住民族言語の多様性と言語復興への取り組み
5.NTの北端部(Top End)のオーストラリア諸語の多様性
6.結
第3章 インドネシアにおける共有価値としての「寛容」の醸成――市民性教育と宗教教育の教科書に焦点をあてて[服部美奈]
1.はじめに――問題の所在
2.基礎教育の目的と2013年カリキュラムの構造
3.教科書『パンチャシラ・公民教育』(5年生)にみる「寛容」
4.教科書『宗教教育と道徳』(6年生)にみる「寛容」
5.小括――二つの教科にみる「寛容」の特質と今後の課題
第4章 台湾市民と外国語――高校教育における第二外国語科目の意義[小川佳万]
1.はじめに
2.台湾の外国語教育政策
(1)高校生のグローバル人材像
(2)第二外国語の履修状況
3.台湾政府の意図と限界
(1)多文化化社会の到来とグローバル化戦略
(2)多文化社会と多言語学習の限界
4.おわりに
第5章 多文化社会におけるコンセンサス形成のプロセスの意義[田中潤一]
1.はじめに
2.異文化理解の困難さ
3.多文化社会は可能か?
4.多文化社会における普遍的価値
5.討論という形式的プロセス
6.討議共同体の弱点
7.多文化社会の「基軸」は必要か?
8.多文化社会と法的規則の制定形態
第6章 アラスカの多文化理解教育の施策と学校・地域における共生社会実現のための教育[玉井康之・川前あゆみ]
1.先住民族が多いアラスカの地域の特性と本稿の課題
(1) 先住民族が多いアラスカの地域を取り上げる意義と多文化理解教育
(2) 連邦政府による全米教育改革と地域教育改革の両論と相克を捉える論点
2.アラスカのへき地の歴史的特徴と多文化理解教育の展開条件
(1) アラスカの先住民族の歴史的位置づけと多文化理解教育の基礎条件
(2) アラスカの生活を基盤にした多文化理解教育と州教育規則による推進条件
3.アラスカスタンダード・ガイドラインの教育改革と学校・地域の合意形成
(1) アラスカスタンダード・ガイドラインの遵守義務と多文化理解教育
4.科学的な先住民族教材開発による多文化理解教育と教育専門機関の役割
(1) 地域文化の再生産としての科学的地域教材開発とANKNの設立目的
(2) 先住民族文化と西洋科学の融合による教育内容開発とANKNによる教材集の刊行
(3)先住民族理解教育教材キットの開発と教育委員会の収集・配信の役割
5.多文化理解教育を支えるアラスカ教員資格制度と教員養成教育
(1)アラスカの教員資格制度とアラスカスタディなどの必須条件
(2)多文化理解教育に資する教員養成教育とアラスカ大学フェアバンクス校の役割
6.小括――アラスカの多文化理解教育の施策と共生社会実現のための教育の推進条件
第7章 国際先住民族教育運動に見られるアラスカ・ネイティブの教育的戦略――アラスカ大学発祥の取り組みと内的動機を手がかりに[ジェフリー・ゲーマン]
1.はじめに
2.先行研究
3.先住民族教育の範囲と特徴
(1)言語と文化を通した教育
(2)基盤としての伝統知、家庭、地域社会
4.アラスカにおける先住民族の権利回復運動
5.アラスカ大学フェアバンクス校(UAF)の取り組み
(1)拡大
(2)進化
(3)国際化
(4)「先住民化」
6.おわりに
第8章 仏教における「知恵」の教育――オーストラリアにおける仏教のペダゴジー及びカリキュラム開発のケーススタディ[ゼーン・ダイアモンド/新関ヴァッド郁代 訳]
1.はじめに――知恵を育む
2.鉄の鷲が飛ぶとき――ブッダガヤからデイルズフォードまで
3.理論的・概念的見解
4.研究のアプローチ
5.研究の結果と示唆
第9章 教育活動としての真宗開教の可能性――アメリカ仏教の現状と課題を踏まえて[マイケル・コンウェイ]
1.はじめに
2.アメリカにおける仏教の現状――盛況から停滞、または衰退へ
3.アメリカの仏教教団が直面している課題
4.結びにかえて
第10章 日本における教員の働き方改革の現状と課題――TALIS(2018)など国際比較の視点から[岩㟢正吾]
1.本研究の目的と意義
2.日本における教員の働き方改革の政策動向
(1)政策決定の経過
(2)中教審最終答申の方向性と問題点
3.「国際教員指導環境調査」(TALIS)と「勤務実態調査」から見る働き方の現状
(1)勤務時間の4か国比較
(2)授業時間および課外活動の4か国比較
(3)周辺的業務の4か国比較
4.おわりに――日本の課題
〈公募・研究論文〉
第11章 中国経済未発達地域における社区高齢者生涯学習支援[趙天歌]
1.はじめに
2.先行研究の検討
3.社区高齢者教育(社区高齢者生涯学習支援)の再定義
4.明珠社区の事例と考察
(1)調査の方法
(2)明珠社区高齢者生涯学習支援の全体像
(3)明珠社区高齢者大学
5.まとめ
〈公募・研究ノート〉
第12章 タイの地域コミュニティにおける教育保障と小規模学校の教育課題[植田啓嗣]
1.はじめに
2.タイの小規模学校の現状
3.調査概要
4.考察1――教員アンケートから
(1)望ましい学校規模
(2)小規模学校のメリット
(3)小規模学校のデメリット
(4)小規模学校の存続と統廃合に対する意識
5.考察2――児童アンケートの分析
(1)通学時間と通学手段
(2)小規模学校のメリット
(3)小規模学校のデメリット
6.考察3――校長へのインタビュー調査の分析
7.まとめ
日本国際教育学会30年のあゆみ――創立20周年から30周年までの組織活動を中心に[金塚基・新関ヴァッド郁代]
1.学会創立の理念と活動
2.学会組織活動の経緯(第21期~第30期)
(1)学会の組織
(2)研究大会と研究会
(3)大会のテーマと活動など
3.今後に向けて
編集規程および投稿要領
学会創立30周年記念論集編集委員会
著者紹介
ISBN:9784750352978
。出版社:明石書店
。判型:A5
。ページ数:216ページ
。価格:2600円(本体)
。発行年月日:2021年10月
。発売日:2021年11月18日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNA。