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「働くこと」の哲学

ディーセント・ワークとは何か

著:稲垣 久和

紙版

内容紹介

労働は苦役か喜びか。生きている時間の大半を労働に費やしている現代の日本人にとって「働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)」とは何であるのかを、文明および情報通信技術の発展とそれにともなう労働観・倫理観の歴史的変遷から考察する。

目次

 まえがき

第1章 労働の公共哲学――今日の働き方改革
 1 人間はなぜ働くのか
 2 西欧の「経済人間」(ホモ・エコノミクス)のもつ歴史
 3 日本が生き延びるための哲学
 4 長時間労働を是とする理由
 5 「働く意味」と二元論の回避
 6 「倫理人間」(ホモ・エティクス)の歴史的展開

第2章 身体性と精神性――唯物論か実在論か
 1 人間の身体・理性・感情・霊性
 2 人間中心主義(ヒューマニズム)という名の宗教
 3 AIから心脳問題へ
 4 ポスト複雑系としての脳と心
 5 「友愛」の哲学へ

第3章 「労働の二重性」をめぐって――人間主体の二重性
 1 労働は苦役か喜びか
 2 マルクスの『資本論』
 3 宇野経済学の「経済法則」
 4 滝沢克己の「経済原則」と「主体の二重性」
 5 唯物論即唯心論としての批判的実在論
 6 批判的実在論とポスト啓蒙主義の宗教哲学

第4章 熟議民主主義に向けて――政治哲学の転換
 1 民主主義と社会主義との対話
 2 ギルド社会主義とは何か
 3 創発民主主義ということ
 4 「自由主義」対「民主主義」
 5 ハーバーマスの宗教哲学
 6 近代日本の実践家――賀川豊彦
 7 「働きがいのある人間らしい仕事」(ディーセント・ワーク)

第5章 都市と農村――持続可能な日本へ
 1 新しい幸福のモノサシ
 2 相互扶助からのイノベーション
 3 コミュニティ経済、コミュニティ企業、コミュニティ協同組合
 4 コーポラティズムとディーセント・ワーク
 5 コミュニティ経済と協同組合の公共哲学
 6 農業と福祉から見えるディーセント・ワーク
 7 結語

[付録]主権、領域主権、補完性
 1 アルトゥジウスの政治哲学
 2 市民社会論
 3 倫理と社会連合体
 4 領域主権と補完性原理

 あとがきにかえて

著者略歴

著:稲垣 久和
東京基督教大学特別教授
1947年東京都生まれ。東京都立大学大学院物理学研究科博士課程修了。理学博士。
トリエステの国際理論物理学研究所、ジュネーブの欧州共同原子核研究所理論部門研究員、国際基督教大学講師を経て、哲学に転向。アムステルダム自由大学哲学部・神学部の客員研究員として宗教哲学を学ぶ。帰国後、東京基督教大学助教授、慶應義塾大学講師を経て東京基督教大学教授(2019年3月まで)。専門は公共哲学、キリスト教哲学。
主な著書に、『キリスト教と近代の迷宮』(大澤真幸との共著、春秋社、2018年)、『実践の公共哲学――福祉・科学・宗教』(春秋社、2013年)、『公共福祉という試み――福祉国家から福祉社会へ』(中央法規出版、2010年)、『国家・個人・宗教――近現代日本の精神』(講談社、2007年)、『靖国神社「解放」論――本当の追悼とはなにか?』(光文社、2006年)、『宗教と公共哲学――生活世界のスピリチュアリティ』(東京大学出版会、2004年)など。「賀川豊彦シンポジウム」「みんなの品川をつくる会」などの市民活動にも取り組んでいる。

ISBN:9784750349251
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:384ページ
価格:2800円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月07日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF