出版社を探す

右翼ポピュリズムのディスコース

恐怖をあおる政治はどのようにつくられるのか

著:ルート・ヴォダック
他編:石部 尚登
他編:野呂 香代子

紙版

内容紹介

「他者」を否定し、排除する修辞を暴く! 排外主義、外国人嫌悪、人種主義、反ユダヤ主義……。欧米における右翼ポピュリスト政党の台頭とその常態化について、批判的談話研究の手法をもちいて詳細かつ精緻に分析する。

目次

 最近の欧米の右翼ポピュリズムのうねり――日本の読者のみなさまへ
 凡例
 序文
 謝辞

第1章 ポピュリズムと政治――規範とタブーを侵す
 1.1 右翼ポピュリズムのミクロ政治を分析する
  右翼ポピュリズム――形式と内容
  右翼ポピュリズム――スケープゴートを生み出す
 1.2 恐怖を生み出す――排除の政治を正統化する
  右翼ポピュリズム――危機と失業の増大
 1.3 ポピュリズムという概念
  右翼ポピュリズム――最初の定義
  19世紀から20世紀のポピュリズム――歴史的発展と国家間の相違
  ポピュリズムとファシズム
 1.4 「なんでもありだ!」――いかに挑発とスキャンダル化がアジェンダを決定するか
  右翼ポピュリズム――メディアを巧みに利用する
 エピソード1 否定の政治――「ダビデの星はない」
 1.5 右翼ポピュリスト政党の永久運動
 1.6 「恐怖をあおる政治」を構築する

第2章 理論と定義――アイデンティティの政治
 2.1 分類と定義
  需要側・供給側モデル
  権威主義か、それとも民主主義の再政治化か?
 2.2 右翼ポピュリズムの台頭
  1990年代からの選挙結果
 2.3 選挙における成功を概観する
 2.4 アイデンティティの政治――排除の政治
 エピソード2 全体主義の経験―― 過去の扱い
 エピソード3 欧州懐疑論と欧州アイデンティティ
 2.5 まとめ――アイデンティティの政治の常態化?

第3章 境界と国民を守る――排除の政治
 3.1 ディスコース、ジャンル、右翼ポピュリズムのアジェンダ
  「二重思考」――左翼と右翼のポピュリズム
 3.2 ディスコース・ストラテジーと排除の論証
  ディスコースの歴史的アプローチ
  論証スキーマ、トポス、誤謬
 3.3 安全保障に訴える――排除を正当化する
  欧州懐疑主義と9.11
 エピソード4 ヒェールト・ウィルデルスとヨーロッパにおける
  「ユダヤ・キリスト教の遺産」
 3.4 人種主義の否定――免責、否定、正当化のストラテジー
 エピソード5 イェルク・ハイダーと過去の政治――計算された両義性
 3.5 両義的な謝罪
 エピソード6 ハンガリーにおける反ユダヤ主義――被害者と加害者の逆転
 3.6 まとめ――恐怖をあおるミクロ政治

第4章 言語とアイデンティティ――ナショナリズムの政治
 4.1 ナショナリズムの(再)創生
  言語政策――「本当の」ハンガリー人を定義する
  身体と境界の政治
  ナショナリズムと帰属
 4.2 境界、家族/身体、国家を守る
 エピソード7 スイスの境界の政治――排除の視覚的修辞の再コンテクスト化
 エピソード8 英国の主流派ディスコース――「彼らは私たちに属さない」
 エピソード9 排除の常態化――「不法移民は出て行く」ことを求める
 4.3 「母語」と市民権
 エピソード10 「母語」と「ドイツ語オンリー政策」

第5章 反ユダヤ主義――否定の政治
 5.1 永遠のスケープゴートとしてのユダヤ人
  例のフェイスブック事件に戻る
  警戒それとも否定?――二次的反ユダヤ主義現象
 5.2 反ユダヤ主義的修辞を定義する――「困ったときのユダヤ人」ストラテジー
  混合反ユダヤ主義
  反ユダヤ主義ステレオタイプのいくつか
  非難と否定のストラテジー
 5.3 ホロコーストの否定
  憎悪の煽動と言論の自由
  ホロコーストの否定を定義する
 5.4 オーストリアの事例
  「禁止法」
 エピソード11 「ローゼンクランツ事件」
 5.5 英国の事例
  BBCテレビ番組「クエスチョン・タイム」
 エピソード12 ニック・グリフィンと「クエスチョン・タイム」
 5.6 まとめ――挑発のストラテジー

第6章 パフォーマンスとメディア――カリスマの政治
 6.1 政治における「ニューフェイス」――新しい瓶に古い酒か?
  用語を定義する――表舞台と舞台裏、ハビトゥス
  神経言語学的プログラミング、プロパガンダ、繰り返し
  右翼ポピュリストのアジェンダを演じる――真正性とカリスマ性
 6.2 メディア、商品化、ブランド化
 エピソード13 右翼ポピュリストの政治を演じる――HCシュトラーヒェ
  オーストリア自由党のアジェンダを演じる――排除の修辞

第7章 ジェンダーに基づく身体の政治――家父長制の政治
 7.1 矛盾する現象、傾向といくつかの知見
  プラスティックの女性と段ボールの男性
  交差性と「権威主義的パーソナリティ」
  右翼ポピュリストを支持する有権者におけるジェンダー・ギャップ
 エピソード14 ヘッドスカーフとブルカ――身体の政治
  「スカーフ」をめぐるオーストリアでの議論
 7.2 妊娠中絶をめぐるアメリカの議論 ――ロー対ウェイド裁判に対する
  プロチョイス派のキャンペーンとその結末
  「無知の傲慢」――グリズリー・ママ
 エピソード15 女性の権利について男性が論争する――妊娠中絶の場合
 7.3 補遺

第8章 主流化――排除の常態化
 8.1 ヨーロッパのハイダー化
  オーストリアの「ファウスト」同盟――戦後タブーを破る
  ハイダー現象
 8.2 主流化と常態化
 8.3 生得的排外主義の身体の政治――東と西
 8.4 恐怖をあおる政治
 8.5 罠に陥るか、陥らないか
  問題を一挙に解決する――別の選択肢となる枠組みを設定する
 8.6 おわりに

付録 右翼ポピュリスト政党一覧
 1 オーストリア オーストリア自由党(FPÖ)
 2 ベルギー フラームス・ベラング(VB)(フラーンデレンの利益)
 3 ブルガリア アタカ(攻撃党)(ATAKA)
 4 キプロス 国家人民戦線(ELAM)
 5 デンマーク デンマーク国民党(DPP)
 6 フィンランド 真のフィンランド人党

著者略歴

著:ルート・ヴォダック
英国ランカスター大学名誉博士、ディスコース研究科Emeritus Distinguished Professor(名誉抜群教授)および学科長、英国社会科学アカデミーフェロー、ウィーン大学教授、人文科学研究所(ウィーン)客員フェロー(2018年9月~2019年6月)、雑誌Discourse & Society、Critical Discourse Studies、Language and Politics の共同編集者。
http://www.lancaster.ac.uk/linguistics/about-us/people/ruth-wodak
http://lancaster.academia.edu/RuthWodak
http://www.iwm.at/the-institute/visiting-fellows/ruth-wodak/
研究分野:ディスコース研究における、民族誌・議論学・修辞学・テクスト言語学を組み合わせた理論的アプローチの展開、組織的コミュニケーション、アイデンティティの政治学、政治と言語、政治における言語…
他編:石部 尚登
現職:日本大学理工学部・准教授。
専門:言語文化学、社会言語学。
主要著書:『ベルギーの言語政策――方言と公用語』(大阪大学出版会、2011年)、『「ベルギー」とは何か?――アイデンティティの多層性』(共編著、松籟社、2013年)、『ことばの「やさしさ」とは何か――批判的社会言語学からのアプローチ』(共著、三元社、2015年)。
主要翻訳書:『言語帝国主義――英語支配と英語教育』(共訳、ロバート・フィリプソン著、三元社、2013年)。
他編:野呂 香代子
現職:ベルリン自由大学言語センター専任講師。
専門:社会言語学、批判的談話研究、日本語教育。
主要著書:野呂香代子・山下仁共著『「正しさ」への問い――批判的社会言語学の試み』(三元社、2009年)、「難民・移民をめぐるコミュニケーション」高田博之・山下仁編『断絶のコミュニケーション』(ひつじ書房、2019年)。
主要翻訳書:ルート・ヴォダック(Ruth Wodak)/ミヒャエル・マイヤー(Michael Meyer)編著、野呂香代子監訳『批判的談話分析入門――クリティカル・ディスコース・アナリシスの方法(Methods of Critical Discourse Analysis)』(三元社、2010年)。

ISBN:9784750349053
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:436ページ
価格:3500円(本体)
発行年月日:2019年10月
発売日:2019年10月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JP
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:NH