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早稲田大学学術叢書 57

挿絵でよみとくグリム童話

著:西口 拓子

紙版

内容紹介

 1812年に『グリム童話集』の初版が刊行されて今日に至るまで、世界中でグリム童話の絵本が刊行されてきた。本書はそのうち19世紀初頭から1940年代にかけてドイツや日本で刊行された絵本を対象に、そこに掲載された多数の挿絵の分析を通じて、西洋の挿絵と日本の挿絵、グリム童話と森鴎外、「ヘンゼルとグレーテル」とアウシュビッツなどの意外な関係性を明らかにする。
 美しく、資料的価値の高い挿絵をオールカラーでふんだんに紹介。グリム研究の第一人者による第一級のグリム論。

目次

【目次】
はじめに

第1部 明治期の邦訳グリム童話から

第1章 『八ツ山羊』――初めての「狼と7匹の子やぎ」の絵本
 1.1. 『八ツ山羊』について
 1.2. ドイツの挿絵との類似点
 1.3. 『八ツ山羊』の翻訳底本について
 1.4. 挿絵の模倣と翻訳底本について

第2章  上田萬年訳『おほかみ』
 2.1. 狼が溺死する場所
 2.2. 子どもたちは何の周りで踊るのか
 2.3. 子どもたちが隠れる場所
 2.4. はさみを取りに家に戻るのは誰か
 2.5. 粉屋の反応
 2.6. 腹に詰められた石がぶつかるのは……
 2.7. 上田訳の特徴

第3章 澁江保訳『西洋妖怪奇談』
 3.1. 『西洋妖怪奇談』
 3.2. 妖怪奇談?
 3.3. 19世紀の英訳の特徴
 3.4.『西洋妖怪奇談』挿絵の特徴から
 3.5. 英訳との重なり
 3.6. 変更したのは誰か
 3.7.澁江訳の特徴

第4章 和田垣謙三・星野久成訳『グリム原著 家庭お伽噺』
 4.1.翻訳の底本
 4.2. 英訳との重なり
 4.3. 英訳グリム童話「ウェーナート版」のさまざまな版について
 4.4. 和田垣・星野の翻訳テクストの特徴
 4.5. 『家庭お伽噺』の特徴

第5章 『教育雑誌』に連載されたグリム童話
 5.1. 翻訳の底本
 5.2. デイビス訳の「ミステリー」
 5.3. 英訳との比較
 5.4. この翻訳の発見の意義

第6章  森鷗外・森於菟共訳『しあはせなハンス』
 6.1. 森於菟と『しあはせなハンス』に収められたグリム童話
 6.2. 森於菟が訳したグリム童話
 6.3. 簡略化の傾向
 6.4. 結末句と繰り返し
 6.5. 「粉屋」ということば
 6.6. 人名
 6.7. キリスト教
 6.8. 慣習――ハグ,キス
 6.9. 残酷な内容への対応
 6.10. 鷗外の翻訳スタイルとの共通点
 6.11.「マリア姫」と「情の剛い子供」
 6.12. 森於菟訳の意義

第2部 岡本帰一のグリム童話の挿絵

第7章 岡本帰一のグリム童話の挿絵――『グリム御伽噺』
 7.1. ショルツ社の「芸術家による絵本シリーズ」Scholz’Künstler-Bilderbücher
 7.2.『ドイツ童話集』(1911年)Deutsche Märchen ポルスター Dora Polster
 7.3.『子どもの童話集』(1894年) Kinder-Märchen
 7.4.『グリム童話集』(1893年) Kinder- und Hausmärchen
 7.5.『ドイツの子どもの童話集』(1884年) Deutsche Kinder-Märchen
 7.6. 「いばら姫」の挿絵にみる岡本の摸倣の仕方 読者の視線の動き
 7.7. 岡本の『グリム御伽噺』への挿絵について

第8章 『グリム御伽噺』の影響
 8.1. 『グリム御伽噺』の「岡本帰一」の挿絵の受容
 8.2. 岡本帰一のグリム童話の挿絵――『続グリムお伽噺』

第3部 グリム童話の挿絵

第9章 魔女をパン焼き窯に押し込むグレーテル
   ―― アウシュヴィッツとグリム童話「ヘンゼルとグレーテル」
 9.1. グリム童話への批判
 9.2. ドイツ語版【ヘンゼルとグレーテル】
 9.3. 英語版【ヘンゼルとグレーテル】
 9.4. グリム兄弟の注釈から
 9.5. 今日の【ヘンゼルとグレーテル】の挿絵
 9.6. アウシュヴィッツを生き延びて

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 索引

著者略歴

著:西口 拓子
現職:早稲田大学理工学術院教授。立教大学兼任講師(2021年9月~)。
学歴:東京外国語大学大学院博士後期課程学位取得修了。博士(文学)。
職歴:2007年4月~2019年3月 専修大学(専任講師~教授)。
2011年4月~2012年3月 コブレンツ・ランダウ大学(ランダウキャンパス)客員研究員。
2015年10月~2016年3月 カッセル大学ドイツ語学文学科客員教授。

ISBN:9784657227010
出版社:早稲田大学出版部
判型:A5
ページ数:384ページ
定価:4000円(本体)
発行年月日:2022年06月
発売日:2022年06月03日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB