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琉球写本『人中畫』四巻 付『白姓』

京都大学文学研究科蔵

著:木津 祐子

紙版

内容紹介

琉球写本『人中畫』『白姓』を影印・翻刻、付解説。
本書では、琉球の久米村通事が用いた通事書・琉球写本『人中畫』四巻付『白姓』(京都大学文学研究科蔵)を影印・翻刻し、解説を付して刊行する。現在では失われた原刊本の面目を伝える大きな資料的価値を有するとともに、近世の琉球における官話学習のシステムと特徴を探るうえで重要な資料である。

■『人中画』とは
明末清初に成立したと考えられる短篇の白話話本小説集で、「風流配」「自作孽」「狭路逢」「終有報」「寒徹骨」の五篇から成る。繁本と簡本の二系統があり、繁本は、現存が確認できるのは嘯花軒刊本(現中華書局資料室蔵)一本のみという稀覯本である。

■琉球写本『人中畫』とは
琉球の久米村通事が、官話(明清期中国の口頭語としての共通言語)を学習する際の教材として、中国刊本の白話文体を官話文体に翻訳したもので、清末まで長く用いられた。現存する繁本では失われている「寒徹骨」の結末を、原刊本により近い形で伝えるテキストとして、大きな資料的価値を有する。

■■『人中畫』あらすじ
内容は中国の典型的な才子佳人小説で、いずれも最後はハッピーエンドで終わる。
『風流配』では、理想の女性を追い求める男が、二人の素晴らしい女性と出会い、それぞれと結婚をする。妻同士はもともと友人だが、互いの夫が同一人物だとは知らない。やがて事実が判明し、「あなたがもう一人の妻だったのね。それなら仲良くやっていけそうね」というところで大団円となる話。主導権は女性二人にあり、男性の影は薄い。
『自作孽』は“身から出たさび”、『終有報』は“苦労は報われる”という話。
『寒徹骨』は、辛い時期を乗り越えればのちに花が咲くという話で、辛い境遇を耐えた男が将来出世し、ずっと自分を信じてくれていた家族と幸せになる。

■■『白姓』あらすじ
『白姓』は、琉球で難船漂着事件が起こった際の難民と久米村通事とのやりとりをもとに作成された官話教材。久米村の鄭通事が、難民に何らかの書物に点を打つこと(もしくは点検)を依頼したことなどが会話からうかがえる。

著者略歴

著:木津 祐子
京都大学大学院文学研究科教授

ISBN:9784653040279
出版社:臨川書店
判型:A5
ページ数:800ページ
定価:9800円(本体)
発行年月日:2013年04月
発売日:2013年04月16日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB