刊行に寄せて 占領期から今日まで八〇年間の教育の歩みを学力論・評価論から吟味検討する(梶田叡一)
序 章 学力とゆとりの狭間で揺れた戦後教育を検証する
第Ⅰ部 戦後教育における私の学びと教え
第1章 児童生徒時代と教師時代
1 少年期と学校生活の記憶
2 教職への入職と教師としてのあゆみ
第2章 学力問題と評価問題の背景となる戦後教育の展開
1 コース・オブ・スタディとしての戦後学習指導要領と学力観の変遷
2 二〇〇〇年以降の学習指導要領と学力観
第Ⅱ部 戦後の学力と学力論争
第3章 学力論争の戦後史
1 「学力」概念と学力問題
2 戦後新教育と学力低下批判
3 学力テストの混乱と学力モデル提案の時代
第4章 一九七〇年代「落ちこぼれ」問題と学力論争
1 「落ちこぼれ・落ちこぼし」問題の生起
2 「落ちこぼれ・落ちこぼし」問題の原因の分析と解決方法
3 坂元と鈴木・藤岡の学力論争(「七五論争」)
4 学力問題解決を目指した民間教育研究団体の誕生
第5章 「新学力観」をめぐる論争
1 「新学力観」誕生の経過
2 「新学力観」への批判
3 「海面に浮かぶ氷山としての学力」モデル
第6章 一九九〇年代末期の高等教育からの学力低下論
1 多様な立場からの学力低下論
2 一九九八年の学習指導要領の改訂と「学力低下」批判の背景
3 多様な立場からの学力低下論
4 「良好」から「学びのすすめ」へ方針変更した文部省
5 一九九〇年代末期からの学力低下論争のまとめ
第7章 PISAショックと全国学力調査の再開
1 PISAショックとPISA型学力論争
2 PISAショックの影響を受けた全国学力・学習状況調査の開始
3 全国学力・学習状況調査は悉皆か抽出かという議論
4 学力と家庭との関係から学力格差の問題を分析する
5 近代の学力の二項対立からの脱皮を
第Ⅲ部 戦後の評価改革と評価論争
第8章 戦後教育評価論のあゆみ
1 教育評価の歴史は指導要録の歴史
2 学習指導の効果を上げるための考査へ
3 「考査」にこだわった文部省の青木誠四郎の評価論
4 「評価」へ転換した小見山栄一による一九五一年版学習指導要領
5 学籍簿は指導の原簿としての指導要録へ改訂
第9章 相対評価を定着させた橋本重治の評価論
1 「指導のための評価」を出発点にした初期の評価論
2 相対評価の根拠となる正規分布曲線
第10章 相対評価の矛盾と到達度評価論の誕生
1 「落ちこぼれ」、通知表等評価問題の噴出
2 相対評価に対する教育心理学者たちの姿勢
3 相対評価批判と到達度評価の実践提言
4 矛盾を到達度評価と相対評価の折衷案で解決しようとした橋本
第11章 目標に準拠した評価への原動力になったブルームと梶田の評価論
1 ブルームと梶田に関する著作
2 日本におけるブルーム理論の受容
3 アメリカ教育学会の研究から開発されたタキソノミーとブルームの理論
4 梶田の評価論の発展過程
第12章 内申書・指導要録開示請求論争
1 「オール3」の通知表の出現と通知表論争
2 内申書・指導要録の情報開示請求問題
3 学校現場に広がる到達度評価
4 個人情報は開示すべしと変化した内申書・指導要録問題
5 内申書も目標に準拠した評価へ
6 京都府教育委員会の到達度評価の取り組み
第13章 一九八〇年指導要録改善協力者会議における評価論争
1 梶田対金井の激論が毎回続く指導要録改善協力者会議
2 新聞各紙は到達度評価導入を画期的と報道
3 到達度評価導入の社会的背景と歴史的意義
第14章 文部省の新学力観の提言と学力論と評価論の一体的論争
1 中教審答申の「自己教育力」の育成
2 文部省の「自己教育力」と梶田の「自己学習の構えと力」論
3 「海面に浮かぶ氷山としての学力」モデル
4 氷山型学力モデルをめぐる態度主義論争
第15章 二〇〇〇年代の学習指導要領の改訂と教育評価の改善
1 一九九八年版学習指導要領と総合的な学習の評価
2 ポートフォリオ評価の紹介から真正の評価へ
3 二〇一〇年版指導要録の改訂と教育科学研究会からの批判
4 新学習指導要領における評価と二〇一九年版指導要録の改訂
5 二〇一九年版指導要録の論点の整理
6 教育評価論争のおわりに
あとがき
引用・参考文献
戦後教育年譜
人名・事項索引