シリーズ出版『渋沢栄一と「フィランソロピー」』(全八巻)刊行にあたって
はしがき
凡 例
序 章 渋沢栄一ならではの福祉実践とは何か(兼田麗子)
一 本書の問題意識
二 渋沢の福祉実践の源・糧となったもの
三 渋沢の福祉実践を考察する意義
第Ⅰ部 渋沢栄一に影響を与えた英仏の社会福祉・慈善活動
第一章 渋沢栄一はいかに慈善思想の特徴を形成したか――イギリス人ラウントリーの多様な救済事業を通じて(岡村東洋光)
一 渋沢にとっての慈善の出発点
二 穂積陳重「欧羅巴慈善情報」がもたらした大規模慈善活動への驚き
三 一九〇二年の欧米訪問――文明国の慈善と有料方式の発見
四 田中太郎「泰西社会事業視察一斑」が伝えたイギリスの多様な救済事業
五 同時代の企業家ジョーゼフ・ラウントリーの三トラスト ――社会の様相を変える民間の自発的公益活動
六 実費診療所にみる渋沢の到達点――慈善から社会事業へ
第二章 ウェッブ夫妻の眼差しの奥に潜む「歴史」――近代イギリスのフィランソロピーの一断面(坂下 史 )
一 東京養育院とロンドンの捨て子養育院
二 渋沢とウェッブ夫妻の出会い――一致しなかった意図と関心
三 イギリス近代史のなかの福祉――ボランタリズムと国家
四 イギリスのフィランソロピストたちの活動と困難――ロンドンの捨て子養育院をめぐって
五 渋沢とウェッブ夫妻のいくばくかの重なり
第三章 渋沢栄一と第二帝政期のパリにおける社会福祉(岡部造史)
一 若き渋沢がパリで体験した「異文化」
二 第二帝政期のパリの姿
三 集権的で多種多様な社会福祉事業
四 「公」と「民」の境界を越えた担い手と寄付の増加
コラム1 養育院の黎明期における大久保一翁と渋沢栄一(稲松孝思)
コラム2 『航西日記』にみる社会福祉・慈善事業(関 根 仁)
第Ⅱ部 渋沢栄一がみたアメリカのフィランソロピーとフィランソロピスト
第四章 アメリカにおけるフィランソロピーの歴史と渋沢栄一(キャサリン・バダチャー/ドゥワイト・バーリンゲイム[翻訳・兼田麗子])
一 本章における問題意識
二 フィランソロピーの萌芽――「市民の熱意と宗教的情熱の高まり」(南北戦争以前)
三 変質するフィランソロピー――科学として、ビジネスとして(一九世紀半ばから二〇世紀初頭)
四 アメリカを代表する三人のフィランソロピスト
五 『論語』の「忠恕」を欧米の「愛」になぞらえた渋沢
第五章 社会事業家としての渋沢栄一――四度にわたる訪米とフィランソロピストとの交流(渋沢田鶴子/渋沢雅英)
一 「民による民のための社会事業」への開眼
二 初めての訪米で受けた感銘
三 プログレッシブ(革新主義)時代のアメリカ――フィランソロピーが果たした重要な役割
四 渋沢とフィランソロピストの親交
第Ⅲ部 近代日本における先駆的な福祉実践――前近代からの継承と模索
第六章 渋沢栄一と慈善・社会事業――真の公益とは(山本浩史)
一 慈善・社会事業における背景と道徳観
二 中央慈善協会設立に対する渋沢の思い
三 恩賜財団済生会と「忠恕一貫」の思想
四 全日本方面委員連盟設立に向けて
五 慈善・社会事業との出会いの意味
第七章 大原孫三郎との比較にみる渋沢栄一の福祉実践――「鳥の目」と「虫の目」(兼田麗子)
一 福祉実践の先駆者・渋沢栄一と大原孫三郎
二 渋沢と大原の共通点――共存共栄のより善い社会をめざして
三 渋沢と大原の相違点――「鳥の目」と「虫の目」
四 両者の福祉実践が現代に投げかけるもの
コラム3 感恩講――民間福祉事業の先駆的存在(木村昌人)
コラム4 備前・閑谷学校をめぐる人々と福祉事業(町 泉寿郎)
人名・事項索引