近代青島の都市空間の変容
日本的要素の連続と断絶
著:単 荷君
内容紹介
本書は、ドイツの膠州湾租借期(1898年から1914年)、第一次日本占領期(1914年から1922年)、中華民国統治期(1922年から1937年)という時間軸に沿って、異なる政治権力の支配に置かれた青島の空間的変容及びそこに見られる日本的要素に注目し、日本が関与した青島の都市発展の過程を政策面、社会面などから多角的に解明しようとするものである。具体的には統治者の更迭にともなう社会構造・統治政策・都市計画の転換がいかに都市の商工、居住、生活空間の変容に反映されていたかを考察し、青島の都市形成の過程における従来の研究では看過されてきた日本的要素の断絶とその連続性を検討した。
目次
序 章 近代都市青島と日本
第Ⅰ部 「模範的」植民地――ドイツ租借期青島における近代的な都市空間の誕生と日本的要素の登場
第1章 「模範的」植民地――ドイツ統治下青島における近代的な都市空間の誕生
1 後発の植民地帝国と軍事・商業・文化の拠点としての膠州湾租借地
2 ドイツ膠州湾総督府の都市開発――「模範的」植民地の二面性
3 青島における近代的な商工業の誕生
第2章 膠州湾に対する日本の調査活動及び日本の勢力拡張
1 日本からの眼差し――膠州湾に対する日本側の調査と評価
2 弱者からの挑戦――青島における日本人社会及びその経済・情報収集活動
第Ⅱ部 逆転する帝国――第一次日本占領期青島における都市空間の変容と日本的要素の移植
第3章 第一次日本占領期における青島軍政署の統治政策と現地社会構造の変容
1 青島軍政署の統治政策――青島守備軍司令官大谷喜久蔵の統治構想を中心に
2 青島軍政署の土地政策及び土地の利用状況
3 現地社会構造の変容――被支配者から支配者への逆転
第4章 青島軍政署の都市改造計画と都市空間の変容
1 日本新市街の建設――三業指定地新町の形成を中心に
2 青島における都市空間の変容と多民族雑居の構図
3 都市発展の担い手――青島における日中不動産業者と建設業者の活躍
第Ⅲ部 都市の光と影――一九二〇、三〇年代青島における都市空間の拡張と日本勢力の存続
第5章 山東還付後青島における社会構造の変容と日本側の権益保有…
1 山東還付と現地社会構造の変容
2 山東還付後における日本側の権益保有
3 国武農場懸案をめぐる日中間の交渉と解決
第6章 中国政府による青島の都市改造と国際都市の現出
1 山東還付後の中国政府による青島の都市開発と都市計画
2 国際都市青島と受け継がれた日本的要素
終 章 帝国拡張のフロンティアとその地位の喪失
1 本書の内容と意義
2 第二次日本占領期における「大青島」への道とその崩壊
あとがき
参考文献
付 録
1 一九一四年青島における重要な商業施設
2 青島軍政署による官有土地貸下げの詳細(一九一五~一九一七年)
3 一九二〇年一〇月現在青島守備軍管内工場一覧表
4 第一次日本占領直後青島における道路の改称
5 青島における日本人の人口(一九〇一~一九四五年)
6 「山東懸案細目協定」における日本保留の公有財産
7 『青島特別市地方計画要綱』及『青島特別市母市計画要綱』
人名索引・事項索引