世界経済論[第2版]
変容するグローバリゼーション
編:山本 和人
編:鳥谷 一生
内容紹介
2008-09年世界金融経済危機から15年、米中対立の激化、コロナ禍そしてウクライナ侵攻と矢継ぎ早に起こる一連の衝撃を受け、新自由主義的グローバリゼーションは、変容を余儀なくされている。本書(第2版)では、1980年代以降アメリカ主導のグローバリゼーション自身が産み出した国家内部そして国家間の双方における「社会経済的な分断」の構造的諸相に注目しつつ、現代世界経済の現実に迫る。
目次
はしがき――『世界経済論』第2版の刊行に寄せて
欧文略語一覧
第Ⅰ部 グローバル経済システムの歴史・構造・現状
第1章 資本主義世界経済の歩み――私たちの250年史
1 資本主義の誕生とイギリス中心の世界経済の盛衰――パクス・ブリタニカの世界経済システム
2 第2次世界大戦後の世界経済――パクス・アメリカーナの世界
第2章 国際貿易と国際通貨の基礎理論――国際経済を読み解くツール
1 貿易をめぐる利害対立と論争の深化
2 自由貿易の利益をめぐる議論
3 国際収支と「貯蓄―投資」論
4 外国為替取引と国際通貨・国際金融
第3章 第2次世界大戦後の国際通貨システム――旧IMF体制から変動相場制への移行,そして「ドル本位制」へ
1 ブレトン・ウッズ体制の成立と展開
2 ブレトン・ウッズ体制の崩壊と変動相場制への移行
3 変動相場制の現実と課題
4 金融のグローバル化の進展と「ドル本位制」の変容
補論1 通貨・金融システムについて
補論2 中央銀行デジタル通貨と暗号資産について
補論3 「ドル本位制」について
第4章 第2次世界大戦後の国際貿易システム――GATT・WTO体制からRTAs(地域貿易協定)へ
1 戦後貿易システムの誕生と多国間貿易交渉
2 WTOの成立とその後
3 RTAs(地域貿易協定)の急増と多国間貿易体制の行方
第5章 途上国における開発戦略と開発経済学の変遷――途上国における開発の歴史と開発理論
1 脱植民地化と「開発の時代」の到来
2 NIEOの盛衰と政府主導的な開発戦略
3 新自由主義的開発戦略への転回
4 現代開発経済学(開発のあり方)の批判的検討
第6章 対外投資と生産のグローバル化――何がグローバル化を突き動かしているのか
1 対外投資とは何か
2 なぜ直接投資は拡大し,企業は多国籍化するのか
3 直接投資と発展途上国の急速な工業化
4 生産のグローバル化と国際貿易の変容
第Ⅱ部 現代世界経済の諸相――各国・地域
第7章 第2次世界大戦後のアメリカ経済の展開――グローバル化と金融化の帰結
1 戦後アメリカ経済小史
2 アメリカ金融革命と世界金融経済危機――「経済の金融化」の末路
3 世界金融経済危機後のアメリカ経済
4 コロナ禍のアメリカ経済とその行方――急膨張した財政赤字と引き締め策に転じたFRB
第8章 EU経済・通貨統合の現実――統合の進展と経済・政治的危機
1 EUとは何か
2 単一市場の拡大・発展と共通政策
3 EMU(経済通貨同盟)の発展とECB(欧州中央銀行)の始動
4 欧州金融危機の発生と経済動向
5 イギリスのEU離脱(Brexit)
6 新型コロナウイルス危機とウクライナ危機への対応
第9章 現代中国経済と人民元「国際化」・「一帯一路」戦略――「改革開放」政策の経緯と行く末
1 現代中国略史――1949年革命から「改革・開放」まで
2 「改革開放」政策と社会主義市場経済への移行
3 WTO加盟,高度経済成長へ
4 中国経済と世界経済――人民元「国際化」と「一帯一路」戦略
5 内憂外患の中国経済
第10章 アジアNIESとASEANの経済――アジアはいかにして成長したのか
1 『東アジアの奇跡』とアジアの経済発展
2 アジアNIESの経済発展
3 ASEANの経済発展
4 東アジア通貨危機とアジアNIES・ASEAN
5 グローバリゼーションの進展と地域経済協力
補論4 韓国の経済と社会
第11章 グローバリゼーション下の新興国経済――新自由主義的グローバリゼーションの影響と帰結
1 ラテンアメリカ新興国――グローバリゼーション下の産業構造
2 ロシア――ショック療法による困難と資源の呪い,ウクライナ侵攻
3 インド――経済自由化の「二つの顔」
4 新興国・途上国にとってのグローバリゼーション
第12章 日本経済の現状と行方――アベノミクスと負の遺産
1 戦後日本経済の歩み――復興から高度経済成長へ
2 日本経済の「金融化」と「国際化」――バブル崩壊と日米経済摩擦
3 日本の金融危機と「失われた30年」
4 アベノミクス下の財政金融の現実
5 日本経済の行方
終 章 地殻変動と分断のすすむ世界経済――貧困・格差と武力紛争,そして気候変動危機に瀕する人類社会
1 各種経済統計でみた世界経済の地殻変動
2 世界経済秩序の動揺と混迷
3 グローバル化の進展と「不平等危機」
4 結 語
巻末資料
1 日本の国際収支
2 アメリカの国際収支
3 中国の国際収支
4 世界各国の経済指標(2020年)
5 第2次世界大戦後の世界経済の見取図
あとがき――第2版の執筆を終えて
人名索引
事項索引
コラム
1 ケインズ主義と新自由主義
2 グローバリゼーション時代の所得格差の推移:エレファントカーブが示す世界経済
3 金利平価説と購買力平価説
4 影の銀行(シャドーバンキング)
5 WTOの紛争解決制度
6 グローバルな公正を求める運動(オルター・グローバリゼーション運動)
7 タックス・ヘイブン
8 アメリカ通商法301条の過去と現在
9 EMUの制度改革
10 香港のカレンシー・ボード制
11 一国の国民通貨の「国際化」と「国際通貨」化
12 「国際金融のトリレンマ」命題
13 LDC,そしてハイパーインフレと経済破綻
14 1980年代日米貿易・経済摩擦を歴史の中に位置づける
15 日本の新自由主義に関する欧米での評価:政治学的な視角から
16 SDGs:先進国と新興国・途上国間の見解の相違
ISBN:9784623095407
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:392ページ
。定価:3000円(本体)
。発行年月日:2023年03月
。発売日:2023年05月01日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCL。