新自由主義の呪縛と深層暴力
グローバルな市民社会の構想に向けて
編:松下 冽
編:山根 健至
内容紹介
本書では、新自由主義に埋め込まれた暴力の実相を探り、その暴力が生み出す諸問題への「無自覚化」「常識化」「不可視化」、さらにそのための同意と合意の調達のメカニズムを解明する。新自由主義の呪縛を乗り越える様々な運動の現状を考察し、21世紀のグローバルな市民社会の連帯の可能性を展望する。
目次
序 章 新自由主義の暴力的表層と深層――民主主義と市民社会を内破する越境型暴力(松下 冽)
1 新自由主義と暴力の現在
2 新自由主義観念の呪縛と破綻
第Ⅰ部 新自由主義型グローバル化と「グローバル内戦」
第1章 資本主義における死と余剰のコムニタスの哲学――アルゴリズム,サイコパス,イミュニティ(松井信之)
1 デジタル資本主義と生/死の政治的問題
2 「グローバル警察国家」の出現とアルゴリズム・サイコパシー
3 絶望,死の欲動,消尽
4 「死政治」から余剰のコムニタスへ
第2章 新自由主義型グローバル化と「放逐」される人々(井出文紀)
1 資本主義の再定義?
2 グローバルな格差の拡大
3 グローバル化と「放逐」
4 TPP交渉再考
5 多国籍企業のガバナンスをめぐって
6 資本主義と民主主義のゆくえ
第3章 「対テロ戦争」に赴く太平洋諸島出身者――グローバル労働者階級兵士にとっての戦場と楽園(長島怜央)
1 米軍兵士
2 太平洋諸島出身の米軍兵士
3 戦地の兵士
4 戦場と兵士への想像力
コラム① ロシアのウクライナ侵攻を東欧の視点からみる(田中 宏)
第Ⅱ部 新自由主義型グローバル化における暴力の諸相
第4章 イスラエルの新自由主義政策と刑務所システム――パレスチナ人支配の強化とグローバルな連帯(金城美幸)
1 イスラエル経済とパレスチナ問題
2 イスラエルの新自由主義政策の特徴
3 イスラエルの投獄システム
4 グローバルなパレスチナ連帯
コラム② アフガニスタンでの越境暴力――タリバンの統治が目指すべき方向とは(円城由美子)
第5章 グローバル化する新自由主義の経済回廊(福島浩治)
1 新自由主義の「見えざる攻撃」
2 新自由主義の編成原理
3 フィリピンの経済回廊
4 「ゲートウェイ」としての新自由主義
第6章 フィリピンにおける超法規的殺害と新自由主義の暴力(山根健至)
1 フィリピンにおける超法規的殺害
2 反乱鎮圧作戦の広範化と弾圧の正当化
3 新自由主義の暴力――鉱業と先住民族
4 正当化・制度化される新自由主義の暴力
第7章 女性の身体をめぐる排除と統合――「ラブ・ジハード」陰謀論を事例に(中根智子)
1 「舞台化」される女性の身体
2 「ラブ・ジハード」陰謀論と「保護」という名の暴力
3 「ラブ・ジハード」陰謀論を支える3つの柱――家父長制的価値,ヒンドゥー・ナショナリズム,新自由主義グローバリゼーション
4 秩序維持の装置としての結婚
5 「結婚」という器に投げ込まれるアンビバレントな情念
6 女性に対する周縁化暴力の伸張
第8章 ロヒンギャ危機以降のポピュリズム――ミャンマー「民主化」を問い直す(山口健介)
1 ロヒンギャ危機
2 「ミャンマー人」の再想像
3 人民の統治
4 アウンサンスーチーのポピュリズム化
5 ポピュリズムの政治的帰結
第9章 国家建設の努力を崩壊させた「構造調整」(戸田真紀子)
1 アフリカはどうして貧しいのか――指導者の責任か,先進国の失敗か
2 タンザニア概略
3 構造調整計画とタンザニア
4 新自由主義に抗する人びと
第10章 ラテンアメリカのコカイン産業と越境する暴力(福海さやか)
1 コカインと世界の再定義
2 コカイン産業の「国際化」
第11章 新自由主義と中国環境問題――不可視化する環境危機の構造(知足章宏)
1 新自由主義と環境問題・暴力
2 中国環境問題の重層的構造と暴力
3 一帯一路及び強権的環境規制への危惧
4 求められる多様なアクターの変革
コラム③ グローバル秩序の正当性(太田和宏)
終 章 グローバル暴力に対抗する試み――グローバル・サウスの実践から学ぶグローバルな構想(松下 冽)
1 新たな人類史的危機に対峙して
2 ポスト新自由主義への模索
3 グローバル市民社会の構想
あとがき
索 引
ISBN:9784623094530
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:264ページ
。定価:4000円(本体)
。発行年月日:2023年03月
。発売日:2023年04月07日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCA。