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心理老年学と臨床死生学

心理学の視点から考える老いと死

編:佐藤 眞一

紙版

内容紹介

誰もが経験する老いと死。人生の終焉へと向かう中に,人は何を見出せるのか。極めて実際的な問題でありつつも,学術的な研究に触れる機会は少ないだろう。本書では,老年学と死生学の分野を牽引してきた編者と,第一線の研究者である著者たちが,心理学的視座からの研究成果を提示していく。団塊の世代が70代になり超高齢化社会に突入している日本において,未来に活かせる知見を提供する書といえるだろう。

目次

推薦の言葉(柏木哲夫)
はじめに──心理老年学と臨床死生学


 第Ⅰ部 高齢者の孤独と幸福——心理老年学Ⅰ:社会的側面
 
第1章 老年期の社会的側面に関する心理学の成果とは?──社会的側面:総論(中原 純)
 1 老年期の社会関係とサクセスフル・エイジング
 2 老年期の幸福感──その概念および加齢変化
 3 老年期の社会的側面──その概念および幸福感との関連
 4 老年期の社会的側面に対する心理学の貢献とは?──社会情動的選択性理論を中心に
 
第2章 高齢者の孤立・孤独はどのような問題につながるのか?──高齢期の孤独感(豊島 彩)
 1 高齢者の社会的孤立と孤独感
 2 孤独感のエイジング・パラドックスと対処方略
 3 孤独感を抑制する方略
 4 高齢期の孤独の問題
 
第3章 次世代を助けようとする高齢者の心理的背景には何があるのか?──世代性と次世代への利他的行動(田渕 恵)
 1 なぜ高齢者は次世代を助けようとするのか
 2 世代性とはなにか
 3 次世代から「受け入れられた」と感じること
 4 おわりに
 
第4章 老いの先にある幸福とは?──高齢期の「生きたい」という心理(中川 威)
 1 はじめに
 2 Valuation of Lifeに関する先行研究
 3 Valuation of Lifeに関する実証研究
 4 おわりに
 
第5章 老いにより培われるものはあるか?──知恵の発達(春日彩花)
 1 はじめに
 2 「知恵」とは何か
 3 エイジングと知恵
 4 おわりに

 第Ⅰ部まとめ──高齢者の孤独,幸福,そして知恵の発達(佐藤眞一)


 第Ⅱ部 高齢者の認知機能と認知症——心理老年学Ⅱ:個人的側面
 
第6章 老年期の個人的側面に関する心理学の成果とは?──個人的側面:総論(権藤恭之)
 1 はじめに
 2 HPAの初期の版の内容
 3 HPAの近年の版の内容
 4 心理老年学研究の中心的課題
 5 今後の心理老年学の課題
 
第7章 職業は人生後半期の個人にどのように影響するのか?──職業経験の複雑性による高齢期の認知機能への影響(石岡良子)
 1 はじめに
 2 認知加齢研究の概説
 3 職業と高齢期の認知機能との関連
 4 仕事の複雑性はどのように高齢期の認知機能に影響するか
 
第8章 若者と高齢者の認知機能にはどのような違いがあるのか?──高齢期の認知機能の特徴(上野大介)
 1 認知機能
 2 高齢期の認知機能
 3 高齢期の認知機能と感情
 
第9章 百歳長寿者は他の高齢者と何が違うのか?──百寿者の認知機能(稲垣宏樹)
 1 はじめに──百寿者の認知機能を評価する意味
 2 百寿者の認知機能の測定方法
 3 百寿者における認知症の有病率
 4 MMSE,CDRによる認知機能評価の概要とMMSEカットオフ値の推定
 5 認知障害のない百寿者における認知機能の特徴
 6 MMSEによる認知障害を有する高齢者との比較
 7 おわりに

第10章 認知症の医療と介護に心理学が必要な理由とは? ──認知症の神経心理学(鈴木則夫)
 1 はじめに
 2 神経心理学的アセスメントの意義
 3 神経心理学にもとづいた簡易認知機能スケールへの課題追加と解釈の工夫
 
第11章 認知症ケアに欠けていること,必要なことは何か?──認知症の福祉心理学(大庭 輝)
 1 認知症ケアを取り巻く社会の現状
 2 認知症ケアに求められる2つの視点
 3 認知症ケアに必要なこと
 4 おわりに

 第Ⅱ部まとめ──高齢者の認知機能の変化と認知症(佐藤眞一)
 

 第Ⅲ部 死と死別——臨床死生学

第12章 死と死別に関する心理学の成果とは?──臨床死生学総論(平井 啓)
 1 はじめに
 2 死に逝く者の心理過程
 3 死別/喪失に伴う心理
 4 死に関する意思決定とコミュニケーション
 5 おわりに
 
第13章 幼い子どもは死を理解しているのであろうか?──幼児期における死の理解(辻本 耐)
 1 子どもが死を理解する時期
 2 クローズド質問によって測定される死の理解
 3 子どもの死に対する理由づけ
 4 クローズド質問と理由づけ質問を用いた死の理解の検討
 5 幼い子どもは死を理解しているのであろうか?
 6 子どもの死の理解の今後の展望
 
第14章 がん患者が求めているものとは?──がん患者への支援(松井智子)
 1 がんに罹患すると
 2 がん患者への心理社会的支援と課題
 3 がん患者へ心理社会的支援サービスを届けるために
 4 がん患者への支援への期待
 
第15章 患者の何が守られなければならないのか?──患者の権利擁護(竹村節子)
 1 患者の権利に関する見解の歴史的変遷
 2 医療における患者の権利
 3 医療における自己決定権の考え方
 4 患者の権利擁護とは
 
第16章 大切な人の死といかに向き合い,そして生きるのか?──遺族の悲嘆とその心理(中里和弘)
 1 喪失と死別
 2 高齢期の死別
 3 遺族はいかに故人との絆を紡ぎ,その後の人生を生きるのか

 第Ⅲ部まとめ──人の生涯における死と死別(佐藤眞一)


あとがき
索  引

著者略歴

編:佐藤 眞一
2022年2月現在
大阪大学大学院人間科学研究科臨床死生学・老年行動学研究分野 教授

ISBN:9784623093212
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:320ページ
定価:4200円(本体)
発行年月日:2022年02月
発売日:2022年02月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JMC