序 章 記憶と慣行の歴史的展開(中井義明・堀井 優)
1 問題の枠組み
2 本書の構成と内容
第Ⅰ部 エジプト――慣行の展開
第1章 アマルナ文書にみる専門的技能者と東地中海世界(齊藤麻里江)
1 紀元前14世紀における専門的技能者
2 アマルナ文書と専門的技能者
3 アマルナ文書に記された専門的技能者――占い師・医者
4 アマルナ文書に記されていない専門的技能者――書記
5 専門的技能者の移動が東地中海世界へ与えた影響
6 専門的技能者と東地中海世界
第2章 後期王朝時代における国王祭祀(藤井信之)
1 古代エジプトの国王祭祀
2 国王祭祀に関わる神官称号所持者たち
3 国王祭祀の背景
4 慣行となった国王祭祀
第Ⅱ部 ギリシア――記憶と慣行
第3章 民主政復興期におけるアテナイ外交――民主派ネットワークと帝国の遺産(中井義明)
1 帝国の遺産と記憶
2 外交環境に関する先行研究
3 寡頭派政権時代のアテナイ外交
4 リュサンドロスの帝国
5 アテナイと民主派ネットワーク
6 戦後世界へのアテナイ再登場
第4章 古典期アテナイにおける顕彰と業績の「記憶」――「冠の授与」の慣行に注目して(篠原道法)
1 アテナイ社会における顕彰と名誉
2 古代ギリシア人にとっての冠
3 アテナイ社会における顕彰と「冠の授与」の慣行
4 顕彰における「冠の授与」の慣行と個人の思い
5 「冠の授与」の慣行から見る名誉をめぐる社会規範
第5章 アッティカ史叙述におけるディオニュソス到来の記憶(竹内一博)
1 アッティカ史叙述と記憶
2 セマキダイとディオニュソスの歓待
3 イカリオンとディオニュソスの到来
4 ファノデモスとディオニュソスの神域
5 フィロコロスとディオニュソスの祭壇
6 ディオニュソスの「場」と記憶
第Ⅲ部 ヘレニズム――記憶の編集
第6章 使節の演説における過去の語り――ポリュビオス『歴史』を手がかりに(岸本廣大)
1 研究動向と問題の所在
2 ポリュビオス『歴史』における演説
3 外交演説における過去の語り
4 ヘレニズム時代における記憶と振る舞いの相互作用
第7章 ペルガモン王国「独立」の記憶の編集――前3~前2世紀の政治動向を手がかりに(柴田広志)
1 「大祭壇」とペルガモンの記憶
2 「大祭壇」とアッタロス朝の宣伝活動
3 アッタロス朝王国の確立とセレウコス朝との関係
4 ローマ対アンティオコス三世の戦争とその後のペルガモン
5 「大祭壇」が伝えること
第8章 ヘレニズム詩におけるアレクサンドロス――名声(kleos)を伝える詩(シルヴィア・バルバンターニ[岸本廣大訳])
1 アレクサンドロスの記念碑と語り継がれる栄光のホメロス的条件
2 プトレマイオス朝の詩におけるアレクサンドロス
3 セレウコス朝とアッタロス朝の詩におけるアレクサンドロス
4 その後のエピグラム詩におけるアレクサンドロス
5 散文および言い伝えにおける伝説的英雄としてのアレクサンドロス
第Ⅳ部 ローマ――記憶と歴史
第9章 ポンペイ城壁に刻まれた二つの歴史の記憶――CIL I2. 1629 を手がかりにして(坂井 聰)
1 城壁に残る歴史の記憶
2 第Ⅸ塔の建築的特徴と再建の可能性
3 CIL I2. 1629 碑文の検討
4 Plumaの語義
5 スパルタクスとポンペイ
6 「大歴史」と「小歴史」の交点
第10章 前44年の偽マリウス事件とユリウス・カエサルの記憶化(米本雅一)
1 カエサル暗殺と「マリウス」
2 前45年の「マリウス」
3 帰ってきた「マリウス」
4 ユリウス・カエサルの死をめぐるコンセンサス
第11章 「若者殺し」の系譜――ヘレニズム君主の記憶をめぐる帝政期の歴史記述(波部雄一郎)
1 カラカラとプトレマイオス八世
2 カラカラの「若者殺し」の真相をめぐって
3 プトレマイオス八世によるギュムナシオンの大虐殺
4 「記憶の場」としてのアレクサンドリアとギュムナシオン
5 「若者殺し」の記憶の形成
あとがき
人名・事項索引