まえがき
序 章 不人気改革はなぜ実現したのか――本書の問い
第1章 不人気改革の分析枠組み――ワーストケースシナリオと政策上の言説・政策アイディア
1 年金制度における不人気改革分析の理論
2 プロスペクト理論と不人気改革戦略
3 言説的制度論と不人気改革の成否
4 修正歴史的制度論と制度改革のパターン
5 不人気改革のリサーチデザインと原因条件の分析
6 不人気改革分析の射程
第2章 厚生年金・共済年金の支給開始年齢の引き上げ――1980年改革で生じた明暗
1 1980年改革における不人気改革のロジック――世代間の不公平論の嚆矢と負担の抑制
2 審議会――審議会答申は厚生年金では割れ,共済年金では合意
3 マスコミと世論――改革への反発
4 1980年改革のプロセスと結果――支給開始年齢の引き上げは,共済年金では成功,厚生年金では失敗
5 アイディアの欠如と自民党による拒否権の発動
第3章 基礎年金導入による「一元化」と給付の削減――1985年改革と「官民格差」
1 1985年改革における不人気改革のロジック――「一元化」と「官民格差」の是正による世代間公平の確保
2 審議会――年金制度基本構想懇談会と社会保険審議会(厚生年金部会)による政策形成
3 マスコミと世論―「官民格差」の是正への支持
4 1985年改革のプロセスと結果――共有された「一元化」「官民格差」「女性の年金権」と基礎年金制度という新しい政策手段
5 「官民格差」の是正と制度の「一元化」に対する支持
第4章 報酬比例年金の支給開始年齢引き上げの再挑戦――1989年改革の失敗
1 1989年改革における不人気改革のロジック――新しい政策手段と補償政策なき改革
2 審議会―労働側委員の反発
3 マスコミと世論――改革に対して割れた評価
4 1989年改革のプロセスと結果――「避けて通れない」課題の先送り
5 自民党内での拒否権の発動と超党派による改革の先送り
第5章 「部分就労・部分年金」による支給開始年齢引き上げ――1994年改革がもたらした「3度目の正直」
1 1994年改革における不人気改革のロジック――「部分就労・部分年金」を前面に押し出した改革戦略
2 審議会―与党と厚生省が一体になった政策形成
3 マスコミと世論―改革に対する肯定的な評価
4 1994年改革のプロセスと結果――不人気改革から制度の再調整改革へ
5 「部分就労・部分年金」と「65歳現役社会」への支持
第6章 「5つの選択肢」と基礎年金国庫負担――2000年改革で生じた手柄争い
1 2000年改革における不人気改革のロジック――「5つの選択肢」による改革戦略
2 審議会―労働側委員の強い反発と多数派による改革案の是認
3 マスコミと世論―年金制度に対する不信と改革への否定的態度
4 2000年改革のプロセスと結果――不人気改革から制度再調整改革をめぐる手柄争いへ
5 制度の再調整をめぐる連立政権内の手柄争い
第7章 保険料固定方式という新しい政策手段――2004年改革で実現した給付抑制
1 2004年改革における不人気改革のロジック――保険料(水準)固定方式による給付の抑制
2 審議会――政策ネットワークと多数派による改革案の是認
3 マスコミと世論―改革案に対して肯定から否定へ
4 2004年改革のプロセスと結果――公明党・自民党の社労族・厚労省の三者連合の勝利
5 負担サイドの不人気政策の総仕上げ
第8章 課題の克服と民主党による新年金構想の挫折――2009・2012年改革で実現した補償政策
1 2009年改革―2004年改革で残された課題への取り組み
2 2012年改革――新年金構想の挫折と2004年改革で残された課題への対応
3 新年金制度の高いハードルと現行制度の改善
第9章 「将来の年金水準確保」に向けた年金給付削減――2016年改革での補償政策のさらなる提示
1 2016年改革における不人気改革のロジック――2004年改革で予期しなかった経済情勢への対処
2 審議会―オプション試算を通じた改革の打ち出し
3 マスコミと世論―将来世代に向けた必要な改革との認識
4 2016年改革のプロセスと結果――経済財政諮問会議・自民党・厚労省による改革の推進
5 給付サイドの不人気改革の始まり
終 章 不人気改革はどのように行われたのか――制度維持・再調整と制度の範囲・対象の拡大
1 不人気改革のロジックのプロセストレーシング――補償政策の実施・政権の内部分裂・世論の変化
2 不人気改革の類型―拒否権の発動と様々な改革の実施
3 望ましい改革プロセスに向けて
あとがき
参考文献
索 引