きものとデザイン
つくり手・売り手の150年
編著:島田 昌和
内容紹介
江戸時代から明治、大正、昭和に至るまで時代ごとに素材やデザイン、流通でイノベーションを起こし、消費を活性化してきたきもの業界。その革新の背景を探り、デザインが果たしてきた消費への重要な役割を詳らかにする。
目次
はしがき(島田昌和・鷲田祐一)
序 章 なぜ着物のデザインか――目的・基礎知識・構成(島田昌和)
第Ⅰ部 つくり手とデザイン
第一章 染色デザインの近代化――京都における友禅図案募集をめぐって(加茂瑞穂)
はじめに
1 小袖の装飾技法とメディア
2 明治維新前後の京都と染織産業
3 図案公募の周辺
4 明治期における図案の展開――友禅協会を中心に
おわりに
第二章 縞木綿の脱ストライプとデザイン戦略 (田村 均)
はじめに
1 目新しきものを織られたし――脱ストライプとデザイン変革
2 自分の製品は誰のためのものなのか――機業経営とデザイン変革
3 消費者の嗜好は何処にあるのか――流通局面の不確実性とデザイン戦略
4 先染め模様デザインの誕生
おわりに
第三章 桐生における図案業界の成立――徒弟的紋工から職業的図案家へ(川越仁恵)
はじめに
1 製造工程における下絵の利用方法
2 後藤織物の下絵利用と図案家たち
3 桐生産地の動向、後藤織物の動向
4 図案の重要性の発見、図案家の成立――京都の動き、西陣から桐生への影響
5 桐生における図案業界
6 図案界発達の課題
おわりにかえて
第四章 ウール織物のデザイン――日本におけるウール織物の展開と和洋の融合(杉山里枝)
はじめに
1 日本におけるウール織物業のはじまり
2 大正期におけるウール織物業の展開と産地
おわりに
第五章 機械捺染とデザインに見る越境性(鈴木桂子)
はじめに
1 着尺の機械捺染、各地の取り組み
2 「アフリカン・プリント」――手染めを機械捺染で、海外市場への進出の例として
3 和柄のグローバル戦略――「鷲・虎・龍」を手捺染、機械捺染、織、刺繍で
第Ⅱ部 売り手とデザイン
第六章 消費市場の発達と技術・価格・デザイン(鷲田祐一)
1 明治中期から現在までの日本の生活水準の確認
2 「新興国」日本の中間層の発達
3 中間層にとっての日常おしゃれ着の出現
4 明治中期から大正期の「着物」市場のカテゴリ整理と市場成長
5 治維新の急激な変化の反動としての「簡易生活」
6 市場成長の原動力
第七章 着物の流行と百貨店の役割(藤岡里圭・二宮麻里)
はじめに
1 江戸後期の呉服太物流通
2 百貨店の誕生とマーケティング活動
3 流行創出機関としての三越「流行会」
4 髙島屋の「百選会」
5 略服市場の誕生と百貨店
おわりにかえて
第八章 戦後~現代のものづくりと市場創造に流通事業者が果たした役割(吉田満梨)
1 1960年代までの大衆品としてのきもの市場の成長
2 染呉服ブームときものの非日常化
3 ものづくりにおける「晴れ着」への集中と高付加価値化
4 流通主導によるビジネスモデルの転換:見込み生産から受注生産へ
5 過度な高価格化路線と「きもの離れ」・「呉服店離れ」
6 きもの業界革新の取り組みと新たな市場機会
7 株式会社やまと――小売企業と多様なパートナーによる新市場創造の試み
おわりに
あとがきにかえて――着物市場のイノベーションの歴史とデザイン(鷲田祐一)
索 引
執筆者紹介