躍動する「国体」 筧克彦の思想と活動
著:西田 彰一
内容紹介
筧克彦は、戦前の日本において、国体の秩序を重んじる立場から、法学と神道を組み合わせた「古神道」「神ながらの道」という独自の思想を提唱した。しかし、〈やまとばたらき〉をはじめ一見奇矯な活動を展開していたため、従来「神がかり」と言われ、まともに扱われてこなかった。本書はその位置づけを見直すために、筧の思想形成過程や活動の実態に光を当て、筧が何を成し遂げたかったのかを明らかにし、その国体論を批判的に検討するものである。
目次
はしがき
序 章 戦前における国体論の展開と筧克彦
1 国体論研究の現状と課題
2 筧克彦の略歴と生前の評価
3 筧克彦に関する先行研究
4 筧克彦を論じることの意味
第Ⅰ部 国体思想にいたる道程
第一章 心理、生命、そして宗教
1 初期の思想を論じる理由
2 筧克彦の思想の古層
3 心理主義への関心
4 心理主義と宗教
5 教え子たちへの影響の広がり
6 心のつながりによる国家統治の試み
第二章 「古神道」の形成と天皇機関説論争
1 「古神道」「神ながらの道」と天皇機関説論争
2 仏教から「古神道」へ
3 「古神道」論
4 天皇機関説論争と筧克彦
5 宗教的修養による国家の統治
第Ⅱ部 国民教化の試み
第三章 『神ながらの道』頒布と皇学会
1 貞明皇后との関わりと皇学の展開
2 「神ながらの道」御進講
3 貞明皇后との信頼関係の構築
4 『皇学会雑誌 神ながら』
5 世界旅行
6 『神ながらの道』から国民の教化へ
第四章 神社行政へのはたらきかけ
1 神社行政への関心
2 筧克彦の神社行政論
3 神社制度調査会における筧克彦
4 教学刷新評議会と神祇府構想
5 「国教」確立への意志
第Ⅲ部 国体思想の実践と展開
第五章 〈やまとばたらき〉の実践と普及
1 国体の体験と身体技法
2 筧克彦と身体技法の関係
3 〈やまとばたらき〉
4 〈やまとばたらき〉とその広まり
5 一体感の高揚と集団農場——加藤完治と〈やまとばたらき〉
6 精神体操としての〈やまとばたらき〉
第六章 「誓の御柱」の建設とその広がり
1 「誓の御柱」建設運動
2 「誓の御柱」建設の思想的背景
3 滋賀県多景島の「誓の御柱」建設運動
4 大日本弥栄会の活動と「誓の御柱」建設の広がり
5 国民精神の象徴としての「誓の御柱」
第七章 植民地における取り組み
1 植民地と筧克彦
2 植民地に対する基本的な立場
3 満洲における筧克彦の活動
4 満洲国皇帝溥儀への御進講と『惟神大道』
5 植民地への教化の試み——挫折と果たした役割
終 章 筧克彦の思想の帰結と独自の国体論
1 国体論内部での影響力の減少
2 苦難の晩年とその後継者たち
3 本書のまとめ
4 躍動する「国体」——国体論者としての筧克彦の特徴
あとがき
注
主要参考文献
筧克彦年譜
巻末資料(『皇学会雑誌 神ながら』目次、『いやさか』目次)
索 引