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MINERVA世界史叢書 5

ものがつなぐ世界史

著:桃木 至朗
著:中島 秀人

紙版

内容紹介

現代の歴史学において、人・もの・カネ・情報・技術などの動きや交流を切り口として世界史をみるという視点が、もはや主流になりつつあるといっても過言ではない。本書は、「馬」に始まり「ウラニウム」に至るまで、古代から現代にわたって世界史を動かした17の「もの」を取り上げ、それらがいかに世界を結び、どのような影響を及ぼしたかを考察することで、重層的な世界史像を描き出す。

目次

序 章 ものがつなぐ世界史(桃木至朗)
 1 人・もの・カネ・情報・技術の世界史
 2 ものがつなぐ世界史の射程


 第Ⅰ部 工業化以前の世界をつないだ「もの」

第1章 馬──飼育技術のはじまりとその多様化(覚張隆史)
 1 世界史における馬
 2 ウマとヒトの出会い――考古生物学によるヒトとウマの関わりあいの復元
 3 ウマの家畜化――新たな化学分析で得られた知見
 4 馬と道具――馬利用の多様化
 5 馬に残る戦争の痕跡――軍事力としての馬
 6 近代における品種交雑――在来馬とサラブレッド
 7 これからの馬――現代における新たな馬利用

第2章 帆 船──前近代のインド洋を往還した船を中心に(栗山保之)
 1 船の役割
 2 諸海域を行き交うさまざまな船
 3 船の呼び名――ダウに関する諸問題
 4 ポルトガル来航以前のインド洋西海域の木造帆船
 5 船用材・造船方法・船体
 6 アラブのインド洋航海技術研究の必要性

第3章 陶磁器──陶磁貿易からの海上交流史(坂井 隆)
 1 陶磁器から何がわかるのか
 2 意外な発見の数々と記録されない歴史
 3 陶磁貿易とネットワークシステム
 4 各時代の陶磁貿易
 5 これからの課題

第4章 貨 幣──東アジア貨幣史を中心に(大田由紀夫)
 1 銭
 2 鈔
 3 銀

第5章 生 薬──生薬をめぐる文化と現代の創薬への道(内野 花)
 1 生薬から現代薬へ
 2 日本の伝統医学「漢方」
 3 世界で使用されている生薬
 4 現代社会における生薬

第6章 火薬原料──硫黄流通からみた11~16世紀のユーラシア(山内晋次)
 1 火薬原料としての硫黄への注目
 2 国際的硫黄産地としての硫黄島
 3 日宋貿易と硫黄
 4 ユーラシアにおける「硫黄の道」の形成
 5 「硫黄の道」の変容

第7章 ス ズ──コーンウォール半島からみた技術・文化の歴史地平(水井万里子)
 1 冶金とスズ
 2 グレート・ブリテン島のスズ
 3 北西ヨーロッパのスズ合金――中近世
 4 スズと遠距離交易
 5 スズ加工業の拡大

第8章 ジャガイモ──アンデスから世界へ(山本紀夫)
 1 ジャガイモの伝播と役割
 2 アイルランドにおけるジャガイモ
 3 アフリカ・アジア・北米への導入

第9章 毛 皮──北米交易圏をめぐる二つの歴史層(下山 晃)
 1 二つの歴史層
 2 北米毛皮フロンティアの歴史層
 3 陸獣毛皮猟の歴史層――鹿狩りとエリート・マーチャントの台頭
 4 海獣毛皮猟の歴史層――ラッコ皮の商品連鎖
 5 基幹的商品だった毛皮


 第Ⅱ部 近現代世界を動かした「もの」

第10章 石炭と鉄──工業化社会の基礎をつくる(小林 学)
 1 石炭・鉄の物理的特徴および利用の歴史
 2 ヨーロッパにおける高炉法の発展
 3 イギリス製鉄業における木炭不足と石炭の使用
 4 蒸気機関の燃料としての石炭
 5 産業革命と石炭と鉄
 6 石炭と鉄の現状と課題

第11章 硬質繊維──世界史・地域史・国史・地方史のなかのマニラ麻(早瀬晋三)
 1 グローカル産業としての硬質繊維
 2 世界史からみた硬質繊維
 3 東南アジア史からみた硬質繊維
 4 フィリピン史からみた硬質繊維
 5 日本史からみた硬質繊維
 6 グローカルな真田産業
 7 グローカル産業がもたらした社会変容

第12章 大 豆──成長し変容する世界の市場(ディビッド・ウルフ[左近幸村訳])
 1 大豆市場のグローバルな価値
 2 日本の満洲進出
 3 大豆が動かす世界
 4 変動する供給体制

第13章 石 油──近代技術文明を育んだ歴史(西山 孝)
 1 20世紀初めまで
 2 20世紀初めから第二次世界大戦――動力としての石油
 3 第二次世界大戦後から21世紀まで――動力・熱・原料としての石油
 4 21世紀の動き

第14章 天然ゴム──東南アジアのプランテーション近代史(高田洋子)
 1 世界の天然ゴム生産
 2 仏領インドシナにおけるゴム農園生産の発展過程
 3 農園の労働問題

第15章 半導体──現代生活に不可欠な存在(西村吉雄)
 1 21世紀初頭の半導体
 2 トランジスタの開発
 3 トランジスタから集積回路へ
 4 プログラム内蔵方式コンピュータとデジタル化
 5 マイクロプロセッサ
 6 半導体産業の地政学的変遷
 7 交換機そのものが消えていく

第16章 ウラニウム──現代史における「原子力性」(井上雅俊・塚原東吾)
 1 核の時代
 2 マンハッタン・レジーム――ガラス染料から戦略的資源へ
 3 ウラニウムの「凡庸化」――市場の形成
 4 帝国主義・植民地の歴史におけるウラニウム
 5 ウラニウムの多様な姿――ウラニウム利用の「副産物」
 6 越境するウラニウム――「原子力性」の歴史


人名・事項索引

著者略歴

著:桃木 至朗
2021年3月現在
大阪大学大学院文学研究科教授
著:中島 秀人
2021年3月現在
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

ISBN:9784623087778
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:410ページ
定価:5500円(本体)
発行年月日:2021年03月
発売日:2021年03月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHB