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MINERVA 人文・社会科学叢書

「自殺対策」の政策学 235

個人の問題から政策課題へ

著:小牧 奈津子

紙版

内容紹介

これまで個人の問題とされてきた自殺は、なぜ社会の問題と捉えられ、政策上の課題となるに至ったのか。また自殺対策基本法や自殺総合対策大綱をはじめとした近年の一連の対策は、どのような過程を経て展開してきたのか。本書では、自殺対策という公共政策について一次資料や対策関係者へのインタビュー等の分析を基に検討を行い、その政策過程を描き出すとともに、対策の課題や限界性を論じる。

目次

はしがき

序 章 「自殺対策」という政策課題
 1 自殺という問題の背景
 2 自殺問題はどのように研究されてきたのか
 3 自殺対策の政策過程を検討するにあたって
 4 本書の目的
 5 検討にあたっての手法
 6 本書の新規性と意義
 7 本書の構成

第1章 自殺対策の夜明け前──精神医療従事者たちの自殺に対する問題意識と対応
 1 基本法制定以前の自殺問題
 2 自殺の捉え方の変遷
 3 自殺予防に向けての障壁
 4 自殺予防の進展と新たな課題の誕生
 5 「自殺予防」から「自殺対策」の時代へ

第2章 社会問題としての自殺の誕生──自死遺児による語りが果たした役割
 1 自殺対策成立の背景
 2 政策転換のメカニズム
 3 声を上げた市民たち
 4 政策課題化を目指した国会議員
 5 自殺対策基本法の制定へ
 6 市民が変えた自殺対策のかたち

第3章 自殺対策基本法制定後の政策過程──ライフリンクによる政策提言が与えた影響とその源泉
 1 基本法制定後の自殺対策
 2 政策過程にNPOが与える影響
 3 政策提言に向けた取り組み
 4 ライフリンクによる影響力の拡大
 5 ライフリンクの影響力の源泉

第4章 地方自治体における自殺対策の成果と課題──東京都足立区を事例に
 1 地方自治体の直面する課題
 2 自殺対策に着手した背景
 3 自殺対策の始動
 4 職員の意識と態度の変化に向けて
 5 地域における自殺対策の成果と課題

第5章 自殺予防の意味と実践の変容──社会福祉法人 いのちの電話(東京)を事例に
 1 自殺対策と民間団体
 2 いのちの電話の成り立ち
 3 いのちの電話における自殺問題の位置づけ
 4 自殺をめぐる社会状況の変化
 5 自殺予防機関というイメージの定着
 6 民間団体として果たすべき役割とは

第6章 自殺対策基本法の改正過程に見る言説の役割──ナショナル・ミニマムとしての自殺対策へ
 1 法改正の背景
 2 法改正過程を検討するにあたって
 3 自殺対策基本法はなぜ改正されたのか
 4 地域の対策を推進するために
 5 自殺対策基本法の改正に伴う成果と課題

第7章 自殺対策の限界性──行政による取組から,一人ひとりの主体的な関与へ
 1 自殺対策の政策過程を先導してきたもの
 2 自殺対策に潜む3つの課題
 3 自殺対策の限界性
 4 行政による対策を超えて

補 章 イスラーム教徒の自殺抑制要因──シリア・アレッポ大学生へのアンケート調査から
 1 自殺をしない人々
 2 イスラーム教徒の自殺抑制要因を明らかにするには
 3 イスラーム教徒は自殺をどのように考えているのか

注  
参考文献  
あとがき  
人名索引  
事項索引  

著者略歴

著:小牧 奈津子
2019年11月現在
慶應義塾大学SFC研究所上席所員

ISBN:9784623086948
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:272ページ
定価:6000円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF