出版社を探す

経営史学の方法

ポスト・チャンドラー・モデルを求めて

著:安部 悦生

紙版

内容紹介

経営史学とは何か、どのような特質を持っているのか、そしてどのような有用性を持っているのか。これらの課題をアルフレッド・チャンドラーの歴史理論を軸に論じる。隣接諸科学との方法論的な異同、英米と日本の経営発展への適用について解説し、企業の進化に適応したポスト・チャンドラー・モデルを模索する。

目次

まえがき

序 章 経営史とは何か
 1 経営史とは、企業進化学である
 2 学問体系における経営史
 3 隣接科学との対話(歴史学、経済史と経営史、社会史、あるいは経済学と経営学、社会学、人類学)
 4 言語論的転回・文化論的転回──遅塚忠躬の所説をベースに

第1章 チャンドラー・モデルの理論的背景と概要
 1 市場と組織の分析枠組み──取引コストの経済学
 2 生産コストと取引コストの関係
 3 中間組織の経済学
 4 ライベンシュタインとハーシュマン
 5 内部化理論
 6 チャンドラー・モデルの概要

第2章 組織は戦略に従わないのか──チャンドラーの真意を探求する
 1 チャンドラー・テーゼ
 2 オールフォードの批判
 3 改めて戦略と組織を考える
 4 進化論とチャンドラー・モデルの整合性
 5 チャンドラーの四ケースをどのように考えるか
 6 経営史と進化学

第3章 グローバリゼーションとチャンドラー・モデル
 1 チャンドラー・モデルと近年の理論フレームワークにおける変化
 2 国際競争と国際競争力の分析視角
 3 国際競争の進展に関するチャンドラーの理解
 4 1980年代および1990年代における「転換」の歴史的意義と国際競争
 5 1990年代以降のアメリカ企業復活の歴史的意味

第4章 革新の概念と経営史
 1 シュンペーターの革新概念とその限界
 2 発明・革新・投資──シュンペーターvs.チャンドラー
 3 均衡の破壊か、均衡の創造か
 4 根本的革新と漸進的革新、または製品革新と製法革新
 5 革新のための組織
 6 コピーキャット(ものまね上手)は悪か?
 7 革新の歴史的トレンドと戦後の日米比較
 8 今後の展望
 9 革新の意義

第5章 進化の概念と経営史
 1 生物進化学の成り立ち
 2 社会進化論あるいは経営進化論について
 3 企業遺伝子の側面

第6章 イギリスの経営発展とチャンドラー・モデル
 1 19世紀イギリスの市場経済
 2 イギリスにおける近代企業発展の特徴
 3 時代別の特徴
 4 特殊イギリス的企業組織の生成
 5 チャンドラーのイギリス資本主義論
 6 イギリス資本主義の諸特徴

第7章 日本型企業システムとチャンドラー・モデル
 1 チャンドラー・モデルとは何か
 2 チャンドラー・モデルにおける国際比較
 3 日本型企業システムとチャンドラー・モデル
 4 残された日本型企業システムの特徴
 5 チャンドラー・モデルにおける日本の位置

第8章 チャンドラー・モデルの意義と限界──チャンドラー・モデルは時代遅れか
 1 経営戦略・管理論史としてのチャンドラー・モデル
 2 企業家の消失
 3 不沈戦艦としての大企業体制の動揺
 4 大企業体制の次の体制は何か──チャンドラー・モデルとポスト・チャンドラー・モデル
 5 マス・プロダクションとスペシャルティ・プロダクション

第9章 チャンドラー・モデルの行く末──批判者たち
 1 チャンドラー・モデルは「進化」する
 2 セイブル&ザイトリンによる批判
 3 チャンドラー・モデルの限界

第10章 企業の境界とは何か──ポスト・チャンドラー・モデルの探求
 1 チャンドラー・モデルへの批判
 2 市場と組織の連関
 3 「消え行く手」について
 4 統合と脱統合の現段階

第11章 QCDからQCFDへ──マーケティング力と国際競争優位について
 1 日本企業の優位──QCD
 2 パラダイム・シフト──デザイン重視への転換
 3 機能とは何か──品質、機能、性能、使いやすさ、感性
 4 イタリアの経験
 5 今後の方向性

第12章 日本経営史学の思想史的性格──リベラリズムと普遍主義と解釈論的研究
 1 労農派対講座派
 2 宇野派
 3 アメリカ近代化論とチャンドラー
 4 解釈論的研究と政策論的研究

終 章 経営史の意義

付 論 『経営史の再構想』を読む

あとがき
参考文献

索  引

著者略歴

著:安部 悦生
*2019年6月現在 明治大学経営学部教授

ISBN:9784623086757
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:378ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2019年06月
発売日:2019年07月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KJ