MINERVA 社会福祉叢書 65
自殺で遺された家族が求める支援
偏見による苦しみへの対応
著:大倉 高志
内容紹介
わが国ではいまだ自殺者は年2万人を前後している。2006年、自殺対策基本法では、自殺者の遺族に支援が必要であることが明記されたが、遺族支援は進まず、またその研究も少ししかない。本書は、自らも自殺者遺族である著者が、遺族の置かれる情報不足感(知りたいことが知らされない)に着目し、ソーシャルワーカーである立場からどのように各専門職と連携し、支援してその不足感を補っていけるのかについて、調査を基にまとめた。
目次
まえがき
序 章 なぜ自殺で遺された家族への支援が必要か
1 これまでの自殺観を問い直す
2 本書の構成
3 自殺と自死という言葉への違和感が私の原点
4 「自」という文字を外して普通の「死」にする
5 自殺の定義を新たに作る
6 懸命に生き抜こうとした故人と遺族の人生をいたわり、共感する
7 自死遺族から普通の「遺族」へ
8 遺族の皆さまの想いを結集して挑んだ月日
第1章 故人との続柄を考慮した支援は提供されているのか
1 故人との続柄を考慮した支援を提供するために
2 座談会形式の調査を目指して
3 3つの続柄ごとの結果を比較して見えてきたもの
4 初めての調査を未来に繋げるために
第2章 自殺によって遺された配偶者が望む支援
1 遺された配偶者に焦点をあてる
2 続柄を1つに限定した調査をどう設計するか
3 続柄を遺された配偶者に限定して見えてきたもの
4 既遂自殺後の警察による対応がその後を左右する
5 自殺で遺された配偶者に対する支援上の心得とは
第3章 子どもの自殺で遺された親が望む支援
1 遺された親に焦点をあてる
2 着目したのは亡くなった子どもの年代
3 続柄を遺された親に限定して見えてきたもの
4 死別直後から気を張り続ける父親にも癒しの場を
5 子どもを自殺で亡くした親に対する支援上の心得とは
第4章 親の自殺で遺された子どもが望む支援
1 遺された子どもに焦点をあてる
2 遺された子どもは、20歳以上? それとも、20歳未満?
3 続柄を遺された子どもに限定して見えてきたもの
4 亡くなった家族との対面の機会を奪ってはならない
5 親を自殺で亡くした子どもに対する支援上の心得とは
第5章 3つの続柄における結果の共通点と相違点を探る
1 続柄を問わず実施することが求められた支援とは
2 際立って特徴的だった点──遺された子どもへの支援
3 3つの続柄を考慮した支援上の心得とは
第6章 警察、死体検案医、解剖担当者による自殺発生直後の遺族支援
1 死別直後に最も早く駆け付ける隣人である警察への期待と苦情
2 遺族からはどのような訴えが出されているのか
3 警察による遺族支援の現状を探る
4 検案・解剖機関による遺族支援の現状を探る
5 警察による遺族支援の可能性
6 検案医・解剖担当者による遺族支援の可能性
7 地域ぐるみの死別後家族支援のさらなる進展に向けて
第7章 望まれる情報提供者とは
1 全てのグループで望まれた情報提供者とは
2 新しく提案された職種を担う主体とは
3 遺族が置かれた状況を丁寧に把握し、的確な助言と同行により支えてくれる人
第8章 親が自殺で亡くなった事実を子どもにどう伝えるか
1 遺された子どもに適切な方法で伝えるために
2 自殺で亡くなったことを一体どのように説明すればよいのか
3 自殺によって遺された子どもについて知っておくべき3つの特徴
4 子どもの年齢ごとの死の理解の実態を知った上で説明する
5 子どもへの自殺の事実の伝え方に関する従来からの通説がある
6 従来からの通説への疑問──伝えることが有害な場合がある
7 死別後にありのままに事実を伝える
終 章 家族を自殺で亡くした遺族を地域ぐるみで支援するために
1 本書の前半部分の総括
2 全ての調査結果を横断的に見て浮かび上がった共通点とは
3 全ての調査結果を横断的に見て特徴的だった点とは
4 警察、死体検案医、解剖担当者は、死別後家族支援の専門家でもある
5 求められた理想の支援者を誰がどのような組織で担うのか
6 遺された子どもにはたとえ苦しくても、今知っていることをそのまま話す
7 本研究の語りから見えた想定される介入時期
8 今後の現実的な方向性
9 本研究の本質的限界──千差万別の個人に向き合う
参考文献
あとがき
索 引
ISBN:9784623086634
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:442ページ
。定価:7000円(本体)
。発行年月日:2020年03月
。発売日:2020年04月15日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF。