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MINERVA世界史叢書

人々がつなぐ世界史 4

著:永原 陽子

紙版

内容紹介

200万年前、アフリカ大陸で生まれた現生人類が世界各地へ広がった「出アフリカ」以降、あらゆる「人の移動」が世界史を左右してきた。本書は、紀元前後から現代までの世界で、交易・商業、信仰、学び等の目的のために移動した人々、さらに国民国家の成立・成熟とともに増加する「移民」、そしてユダヤ人、性的搾取のために移動を余儀なくされた女性たち等の「強いられた移動」の歴史にも光を当て、移動する人々によってつながれる世界を多角的に考察する。

目次

序 章 人々がつなぐ世界史(永原陽子)


 第Ⅰ部 交易・商業のための移動

第1章 シルクロードの交易と商人(荒川正晴)
 1 本章の時空設定とシルクロードをめぐる議論
 2 シルクロードのキャラヴァン交易
 3 遊牧国家のシルクロード支配とキャラヴァン交易
 4 唐帝国の中央アジア支配によるキャラヴァン交易
 5 シルクロード交易の基本構図とその時代的変化

第2章 倭寇と偽使——東アジア海域の媒介者たち(橋本 雄)
 1 交流の担い手を探し求めて
 2 倭寇とは何か
 3 前期倭寇の活動
 4 符験・勘合と偽使通交
 5 後期倭寇の活動
 6 倭寇と偽使の世界史的意義

コラム1 東地中海(レヴァント)とヴェネツィア(堀井 優)
コラム2 カリブ海の密貿易を支える人間関係(伏見岳志)
コラム3 商業民ソニンケがつくる経済ネットワーク(三島禎子)


 第Ⅱ部 信仰のための移動

第3章 メッカ巡礼にまつわる思想——イスラーム圏の東西の端で(苅谷康太)
 1 メッカ巡礼
 2 巡礼が伝える思想——東南アジアの事例
 3 巡礼をめぐる思想——西アフリカの事例

第4章 キリスト教宣教がつなぐ世界(大澤広晃)
 1 宣教師の役割
 2 信徒たちの世界
 3 キリスト教宣教と植民地主義

コラム4 移動する僧侶と唐帝国(中田美絵)
コラム5 17世紀フランスのカトリック刷新運動と東南アジア宣教——パリ外国宣教会の事例から(坂野正則)


 第Ⅲ部 学びのための移動

第5章 中世日本僧の中国留学——12〜13世紀を中心に(榎本 渉)
 1 鎌倉・南北朝期の留学ブーム
 2 留学環境の変遷
 3 南宋仏教の導入過程
 4 宋風仏教教団と入宋僧

第6章 近代化の中の留学——比較史的考察(長谷部圭彦)
 1 留学の類型化
 2 派遣と阻止——オスマン帝国の場合
 3 受入と排除——日本の場合
 4 留学から見た世界史

コラム6 津田梅子(高橋裕子)
コラム7 ホー・チ・ミン(栗原浩英)
コラム8 管理される移動——イラン=イラク国境の町ハーナキーンの19世紀(守川知子)


 第Ⅳ部 移 民

第7章 近現代の華人の移動にみる制度・国家・越境性(園田節子)
 1 移動者を中心にした歴史
 2 近代グローバリズムのローカルな回路形成
 3 国民国家への排除と包摂——19世紀後半から20世紀前半
 4 華人と国家の関係
 5 21世紀の華人世界

第8章 レバノン・シリア移民の拡散とネットワーク(黒木英充)
 1 顕在化するレバノン・シリア移民
 2 移民の時期と移住先
 3 初期移民の特徴

コラム9 ハドラミー——アラビア半島から東南アジアへ(新井和広)
コラム10 国際結婚(嘉本伊都子)
コラム11 ベトナム難民(古屋博子)


 第Ⅴ部 強いられた移動

第9章 帝国の性管理政策と人身売買——からゆきさんから日本軍「慰安婦」まで(宋 連玉)
 1 ある「慰安婦」の「からゆきさん」へのまなざし
 2 西洋列強のアジア侵略、アジア女性への性収奪
 3 帝国日本のアジア侵略と北方からゆきさん
 4 帝国の資本と戦争が生んだ性奴隷  ——からゆきさんと慰安婦をつなぐ視点

第10章 ポグロムとユダヤ人のアメリカ移住(黒川知文)
 1 ロシアにおけるユダヤ人問題
 2 帝政ロシアのユダヤ人政策
 3 1881年ポグロムと第二次ポグロム
 4 内戦期のポグロム
 5 東欧ユダヤ人の米国移住
 6 移民援助団体
 7 ニューヨークにおける東欧ユダヤ共同体

コラム12 セファルディム(宮武志郎)
コラム13 ナチス・ドイツの強制的移住・強制労働と戦後の労働移民(矢野 久)
コラム14 女性人身売買のグローバルネットワーク——「白人奴隷」を越えて(永原陽子)

人名・事項索引

著者略歴

著:永原 陽子
2019年8月現在
京都大学大学院文学研究科教授

ISBN:9784623086368
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:384ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2019年08月
発売日:2019年08月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHB