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協同的探究学習で育む「わかる学力」

豊かな学びと育ちを支えるために

編:藤村 宣之
編:橘 春菜
編:名古屋大学教育学部附属中・高等学校

紙版

内容紹介

PISA等の国際比較調査では、解決方法がひとつに定まらない問題に対して、自分のもっている多様な知識を結びつけて考え、深く理解して解決を導く力(「わかる学力」)が、日本の生徒は相対的に低いことが示されている。近年、この「わかる学力」を高めるためには、個人での取り組みと他者との協同を組み合わせた「協同的探究学習」が効果的であることがわかってきた。そこで本書では、協同的探究学習の理論を紹介するとともに、実際に長年授業に取り入れてきた名古屋大学教育学部附属中・高等学校でのさまざまな教科の実践を紹介し、その授業の展開と効果についてわかりやすく解説する。

目次

序 章 世界におけるこれからの教育──日本はどこに向かうのか
 1 これからの社会において一人ひとりに必要な力とは
 2 学校教育における質の向上と平等性の追求
 3 教育の質の向上としての「深い学習」の重視
 4 日本の子どものリテラシーや学力の全般的傾向
 5 本書の構成


 第Ⅰ部 理念編──子どもの学びの質を高めるために

第1章 「わかる学力」と「できる学力」
 1 認知心理学の視点からの学力モデル──「できる学力」と「わかる学力」
 2 認知心理学の視点からみた日本の子どもの学力──「できる学力」と「わかる学力」の様相
 3 日本の子どもの「わかる学力」が高まらない原因はどこにあるのか

第2章 「協同的探究学習」とは
 1 「わかる学力」が高まるメカニズムⅠ──「探究」を通じた個人の理解の深まり
 2 「わかる学力」が高まるメカニズムⅡ──「協同」を通じた個人の理解の深まり
 3 「協同的探究学習」の理念──探究と協同を重視した授業デザイン
 4 「協同的探究学習」──学習方法としての4つの特質
 5 「主体的・対話的で深い学び」としての「協同的探究学習」
 6 「協同的探究学習」の実践事例──小学校算数の授業から
 7 これからの時代の学習としての意義

第3章 探究の学びの意義
 1 学びが深まるきっかけとは
 2 学びが深まるメカニズム
 3 概念的理解の深化メカニズム

第4章 協同の学びの意義
 1 協同での学び
 2 協同的問題解決を通じた学びの効果
 3 他者が個人の問題解決の促進に果たす役割
 4 知識の相互構築過程を通じた個人の概念的理解の深まり


 第Ⅱ部 実践編──協同的探究学習の授業の実際

第5章 中学校国語「少年の日の思い出」──人物の心情について理解を深める
 1 中学校国語でめざす「わかる学力」
 2 協同的探究学習の導入場面と授業過程
 3 協同的探究学習としての工夫
 4 子どもの探究と協同はどのように進んだか──中学校国語科授業の心理学的分析
 5 子どもの「わかる学力」は高まったか
 コラム 「書く」領域につながる協同的探究学習

第6章 高等学校国語「せきをしてもひとり」──感情をどう表現するか
 1 高等学校国語でめざす「わかる学力」
 2 協同的探究学習の導入場面と授業過程
 3 協同的探究学習としての工夫
 4 子どもの探究と協同はどのように進んだか──高等学校国語科授業の心理学的分析
 5 子どもの「わかる学力」は高まったか
 コラム 「評論文」における協同的探究学習

第7章 中学校数学「文字と式」──カレンダーの秘密を探る
 1 中学校数学でめざす「わかる学力」
 2 協同的探究学習の導入場面と授業過程
 3 協同的探究学習としての工夫
 4 子どもの探究と協同はどのように進んだか──中学校数学科授業の心理学的分析
 5 子どもの「わかる学力」は高まったか
 コラム 統計や幾何における協同的探究学習

第8章 高等学校数学「数列」──和から広がる世界
 1 高等学校数学でめざす「わかる学力」
 2 協同的探究学習の導入場面と授業過程
 3 協同的探究学習としての工夫
 4 子どもの探究と協同はどのように進んだか──高等学校数学科授業の心理学的分析
 5 子どもの「わかる学力」は高まったか
 コラム 数列以外の単元における協同的探究学習

第9章 中学校理科「細胞分裂」──瞬間から時の流れを予想する
 1 中学校理科でめざす「わかる学力」
 2 協同的探究学習の導入場面と授業過程
 3 協同的探究学習としての工夫
 4 子どもの探究と協同はどのように進んだか──中学校理科授業の心理学的分析
 5 子どもの「わかる学力」は高まったか
 コラム 「凸レンズ」で作図の意味を体感する

第10章 高等学校理科「酸化還元反応」──多面的にみる金属の性質
 1 高等学校理科(化学基礎)でめざす「わかる学力」
 2 協同的探究学習の導入場面と授業過程
 3 協同的探究学習としての工夫
 4 子どもの探究と協同はどのように進んだか──高等学校理科授業の心理学的分析
 5 子どもの「わかる学力」は高まったか
 コラム 化学基礎でのその他の取り組み

第11章 学びの質を高めるには──協同的探究学習の広がりと深まり
 1 一人ひとりの学びの質を高めるには──「協同的探究学習」の理念と実践
 2 時間としての広がり──協同的探究学習の長期的取り組みとその評価
 3 空間としての広がり──各教科における協同的探究学習の展開
 4 「協同的探究学習」の深まり──さらなる「わかる学力」向上に向けての工夫


終 章 一人ひとりの学びと育ちを支えるために
 1 「協同的探究学習」のもうひとつの目的とは
 2 自己肯定感の育成や他者理解の深まりは実現されているか
 3 学習と発達の関係を考える──協同的探究学習の2つの目的はどのように関わるか
 4 協同的探究学習が開くこれからの世界

おわりに
索 引

著者略歴

編:藤村 宣之
*2018年12月現在
東京大学大学院教育学研究科 教授
編:橘 春菜
2018年2月現在
名古屋大学教育基盤連携本部アドミッション部門特任准教授

ISBN:9784623082735
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:240ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2018年03月
発売日:2018年03月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNT
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JNU
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:JNW