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EU共同体のゆくえ 21

贈与・価値・先行統合

著:山本 直

紙版

内容紹介

欧州諸国からなるEUは、「諸国家からなる共同体」として独特の形態の政治を展開している。それは、連邦国家としての欧州合衆国でもなければ、欧州諸国の単なる集団でもない。加盟諸国間には「贈与」があり、民主主義や法治といった価値観の共有も図られている。本書では、共同体としてのEUがいかなる歴史的条件や各国指導者の政治判断に従って形成されたのか、それが近年どのように緩み、再編が模索されているのかを解明する。

目次

序 章 “共同体”EUの探究


 第Ⅰ部 贈与の共同体としてのEU

第1章 多数決制の起源と成立——“譲りあう”欧州政治の展開
 1 理事会の多数決制——概容と運用
 2 石炭鉄鋼共同体の多数決制——無粋な出発
 3 経済共同体の多数決制——簡明な制度へ
 4 「ルクセンブルクの妥協」とその後
 5 EUのアイデンティティとしての多数決

第2章 贈与の共同体としてのEU——組織原理の一面
 1 国家間の贈与——モースからの展開
 2 EUにおける贈与の実践
 3 贈与論と国際政治学
 4 共同体の解体
 5 ウィン・ウィンと贈与の共同体

第3章 東方拡大の胎動とフランス——国家間取引とギャップの生成
 1 歴史的制度論の視座
 2 欧州国家連合と東方拡大
 3 東方拡大過程における取引の蓄積
 4 東方拡大という経路への依存


 第Ⅱ部 価値の共同体の現段階

第4章 人権外交の展開——発現・源泉・制約
 1 国際連合における人権外交
 2 コンディショナリティを通じた人権規範の推進
 3 人権外交の源泉
 4 制約される人権外交
 5 外交経験と実践のゆくえ

第5章 基本権庁の設置と人権統治——制度と権限
 1 基本権庁設置の経緯
 2 基本権庁の概観
 3 設置に向けた争点
 4 設置後の基本権庁
 5 基本権庁の設置の帰結

第6章 テロへの対応と人権規範——2015年シャルリ・エブド事件の前後
 1 安全をめぐる言説の変化——欧州委員会の戦略文書から
 2 EUのテロ対応と個人のプライバシー——航空旅客情報をめぐって
 3 出入国審査とEU市民の自由移動
 4 風刺画問題とEU
 5 価値と理念のゆらぎ

第7章 「共通の価値」と加盟国の法治体制——ハンガリー問題のポリティクス
 1 共通の価値と加盟国——二つの手続きのはざま
 2 ハンガリーの法治体制とEU
 3 欧州委員会の法治対策——枠組みの概容と評価
 4 コペンハーゲンのジレンマ?
 5 “プーチン化”するハンガリー

第8章 ポーランド憲法裁判所問題とEU——再び法治をめぐって
 1 憲法裁判所と法治
 2 憲法裁判所問題への初動
 3 欧州委員会による法治枠組みの運用
 4 抵抗と躊躇——第三段階へ
 5 弛緩する価値共同体


 第Ⅲ部 先行統合の制度と実行

第9章 先行統合の制度整備——「より緊密な協力」の導入
 1 「より緊密な協力」の概容
 2 アムステルダム条約における「より緊密な協力」の導入
 3 ニース条約における「より緊密な協力」の制度整備
 4 欧州憲法条約およびリスボン条約と「より緊密な協力」
 5 有用な選択肢へ

第10章 越境協力・家族法・特許保護——「より緊密な協力」の実行へ
 1 プリュム越境協力と「より緊密な協力」
 2 家族法の共通ルールと「より緊密な協力」
 3 統一特許の創設と「より緊密な協力」
 4 差異ある欧州への助走?


終 章 “開き直る”EUの地平

註 
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引

著者略歴

著:山本 直
2018年3月現在
北九州市立大学外国語学部准教授

ISBN:9784623082186
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:314ページ
定価:6000円(本体)
発行年月日:2018年03月
発売日:2018年03月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCL