出版社を探す

Minerva社会福祉叢書 54

里親であることの葛藤と対処

家族的文脈と福祉的文脈の交錯

著:安藤 藍

紙版

内容紹介

近年、里親制度の社会的要請は高まっている。本書は、委託率問題や支援策検討などの福祉的文脈、「親子」「家族」関係の新しさに着目する家族的文脈のどちらにも偏らず、2つの文脈が交錯する場で、時間的・関係的限定性を持つ里親が抱える葛藤を検証。また、豊富なインタビュー調査から、里親を取り巻く諸機関、長期的養育の困難性、里親委託終了後の関係性などを考察。里親制度の基本概念や先行研究も詳説し、里親の立場とその可能性を探究する。

目次

はしがき
初出一覧

序 章 里親研究の射程――家族であること、社会的養護の担い手であること
 1 問題の所在
 2 本研究の基礎概念
 3 研究目的と本書の構成

第1章 里親養育の概況――歴史と実態
 1 里親養育の歴史
 2 里親制度の規定する里親「家族」像の変遷:関連省令・通知等を素材に
 3 現代の里親養育の実態

第2章 里親経験はいかに捉えられてきたのか――先行研究と本書の位置づけ
 1 里親養育研究の展開:「拡充論」「支援論」の到達点と課題
 2 家族研究の系譜と里親家族
 3 ケア・支援の社会学への展望
 4 理論的視座
 5 本書の立場

第3章 里親たちの語り――調査・分析の方法
 1 インタビュー調査概要
 2 調査協力者の特徴
 3 分析手続き

第4章 共存する「社会的養護としての養育」と「ふつうの子育て」
 1 本章の課題:子どもをあずかれば親子になるのか
 2 多様な里親像
 3 「里子」としての理解:委託以前の非共有時間に向きあって
 4 「実子と同じ」という理解
 5 「社会的養護としての養育」と「ふつうの子育て」との葛藤
 6 本章のまとめ:「養育」と「子育て」の関係

第5章 家庭であること/仕事であることをめぐって――関係機関と比較した里親家庭の意味づけ
 1 本章の課題:里親養育はなぜ「仕事」と距離化されがちなのか
 2 専門性との距離化
 3 施設生活との対比で語られる家庭らしさの価値
 4 仕事としての要保護児童ケアとの異同
 5 養育費、里親手当の解釈:報酬受取・賃労働化の回避
 6 本章のまとめ:顕在化する家族ケアの特性

第6章 親であること/支援者であることをめぐって――実親との比較による里親の意味づけ
 1 本章の課題:里親は実親の代替なのか
 2 実親との交流がない場合
 3 実親との交流がある場合
 4 里親子関係終了後の実親への対応
 5 本章のまとめ:実親の存在感

第7章 措置委託解除後の子どもとのかかわりにおける葛藤と対処――18歳からのはじまり
 1 本章の課題:措置委託が終わると里親里子は「純粋」な家族になるのか
 2 措置委託解除の2つの意味
 3 子どもとの意向の調整:里親の許容範囲内の場合
 4 子どもの意向・里親の理想と里親の許容範囲が一致しない場合
 5 里親子関係の帰着点
 6 本章のまとめ:重なり、すれ違う里親子の期待

終 章 里親たちの葛藤に通底する困難とその生起メカニズム
 1 本研究の主要な知見
 2 本研究の意義と今後の展望

参考文献
巻末資料
おわりに
人名索引
事項索引

著者略歴

著:安藤 藍
2016年12月現在 首都大学東京都市教養学部助教

ISBN:9784623078639
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:332ページ
定価:5500円(本体)
発行年月日:2017年02月
発売日:2017年02月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS