検証・防災と復興 1
大震災復興過程の政策比較分析
関東、阪神・淡路、東日本の三大震災の検証
監:五百旗頭 真
編著:御厨 貴
内容紹介
大災害に際し、重大な役割を担う政治や行政はどのような備えを行うべきか。本書は、関東、阪神・淡路、東日本の三大災害を、?復旧・復興の政治過程、?政府と官僚の危機管理、?震災をめぐる社会認識について、政治学的な分析視角から比較検証。これらの知見を基に、2016年に発生した熊本地震も含めた今後の災害対策、復旧・復興体制を考察し、災害時の強固な統治体制や日本社会のあり方への認識を深める。
目次
巻頭言(五百旗頭 真)
はしがき
序 章 「災後」をつくる(御厨 貴)
――「さかのぼり災後史」の試み
1 熊本地震:戦後から災後の時代に
2 東日本大震災:「戦後」が終わり「災後」が始まる
3 阪神・淡路大震災:下河辺淳のデザインとリーダーシップ
4 関東大震災:「赤い日」と「社会革命」と「バラック賛歌」
5 「さかのぼり災後史」からの展望
第Ⅰ部 三大震災の復旧・復興過程
第1章 関東大震災後の政治過程(筒井清忠)
1 はじめに:関東大震災と政治
2 第二次山本権兵衛内閣の成立
3 山本内閣と新聞世論
4 山本内閣と政党
5 後藤・犬養と新党運動
6 新党計画の挫折
7 小括:震災復興政治への提言
第2章 三大震災における記憶の記録(牧原 出)
1 はじめに:震災とアーカイブ
2 関東大震災と記録保存
3 阪神・淡路大震災と「記録保存」の記録
4 東日本大震災と「アーカイブ」を見渡す視線
5 おわりに:震災の記録保存の意義
第3章 復興権力の三大震災比較(村井良太)
――近代日本における「災後」の統治と政権交代
1 大規模地震災害と復興権力:創造的復興を担う政権基盤、制度装置、体制原理
2 関東大震災(1923年)と復興権力:第一次世界大戦後の民主化過程と震災対応
3 阪神・淡路大震災(1995年)と復興権力:冷戦後ポスト55年 体制下での震災対応
4 東日本大震災(2011年)と復興権力:21世紀初頭の政治的模索下での震災対応
5 大規模地震災害と日本における民主政治:政治体制における防災の主流化
第Ⅱ部 政府と官僚の危機管理
第4章 災害復興と都市・住宅政策(砂原庸介)
1 災害後の復興重視から災害前の備えの重視へ
2 震災復興と住宅再建
3 平時の都市・住宅政策との連続性
4 公共政策への含意:住宅から見た災害復興
第5章 被災者への現金支給をめぐる制度と政治(手塚洋輔)
1 問題の構図:なぜ現金支給が拡大したのか?
2 近代日本における義援金体制
3 住宅再建の公的領域化:1990年代の社会変動
4 義援金から税金へ:2000年代の公費拡充
5 東日本大震災と薄氷の上の現金支給:2010年代の実像
6 偶然と必然、そして展望
第6章 被災港湾の復旧・復興をめぐる政府間関係(林 昌宏)
――関東と阪神・淡路の両大震災を中心に
1 はじめに:被災港湾の復旧・復興を分析する意義
2 分析視角とその方法:港湾整備をめぐる制度と行政体制の変容を踏まえて
3 関東大震災により被災した横浜港の復旧・復興
4 阪神・淡路大震災により被災した神戸港の復旧・復興
5 おわりに:被災港湾の復旧・復興の特徴と課題
第7章 災害廃棄物処理の行政(森 道哉)
――阪神・淡路大震災、東日本大震災における教訓とその行方
1 災害廃棄物処理における都道府県への着目
2 災害廃棄物処理の概況と世相
3 研究の動向:基礎自治体及び国への着目
4 分析の視座と行政の報告書を検討する意義
5 兵庫県、岩手県、宮城県の報告書を読む:主な被災県における教訓の継承の試みと国への提言
6 環境省が関わる報告書を読む:国の「制度」の改変への環境整備
7 災害廃棄物処理の行政への再訪に向けて
第Ⅲ部 震災をめぐる社会認識
第8章 女性たちの支援活動と復興への回復力(辻* 由希)
1 女性の政治的・社会的地位と震災復興
2 関東大震災後の救護活動を担った女性団体
3 阪神・淡路大震災と活発化する女性の市民活動
4 東日本大震災の被災者支援に活かされた女性の経験
5 「公共」領域における女性の役割拡大は回復力に貢献するか
第9章 震災記憶の風化(善教将大)
――阪神・淡路大震災と東日本大震災に関する新聞記事の比較分析
1 問題の所在:震災への関心はどのように失われていくのか
2 「前提」としての風化現象
3 資料の収集法と分析手法
4 記事件数の推移から見る風化現象
5 報道内容から見る風化
6 風化のプロセスとその含意
第10章 人命救助部隊の応援派遣と組織間連携(奥薗淳二)
1 序論:復興過程としての教訓の活用
2 応援派遣の意義と制度
3 応援派遣の比較分析
4 おわりに:応援・受援システムの標準化
第11章 三大震災時の受援をめぐる比較考察(渡邉公太)
――「災害外交」の視点から
1 はじめに:三大震災と日本の受援
2 関東大震災:戦前日本の「災害外交」
3 阪神・淡路大震災:「災害外交」の始点
4 東日本大震災:「災害外交」の展開
5 おわりに:「災害外交」の可能性
人名索引/事項索引
ISBN:9784623077823
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:280ページ
。定価:4500円(本体)
。発行年月日:2016年09月
。発売日:2016年09月08日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS。