はしがき(根川幸男)
序 章 近現代日本人の海外体験と日系移植民史の時期区分──「連動史」を描くために(根川幸男)
1 本書の目的──最遠隔地からみた日本列島、日本人、そして四重構造の帝国
2 歴史観と方法的課題──越境史、連鎖視点、跨境史、そして連動史観
3 近現代日本人の海外移植民史の時期区分
4 本書の内容
第Ⅰ部 近代日本人の越境教育と教科書
第1章 「帝国臣民」と「日系市民」の狭間で ──『米國加州教育局検定 日本語讀本』の編纂と内容分析(森本豊富)
1 『加州日本語讀本』の復刻
2 『加州日本語讀本』の編纂方針
3 『尋常小學讀本』の教授禁止項目
4 『加州日本語讀本』の編纂
5 『加州日本語読本』の内容分析
6 「日系市民」育成のために
第2章 ブラジル『日本語読本 教授参考書』の児童用歌曲(伊志嶺安博)
1 背景と問題提起
2 日伯における児童用日本語教育と唱歌教育
3 ブラジルの日本語教育における児童用歌曲の特徴
4 ブラジルの日本語教育における「唱歌」の到達目標
5 結論と課題
第3章 「渡航案内」にみる英語学習・異文化学習──移住者のための水先案内書(東 悦子)
1 一世の英語学習・異文化学習
2 「渡米案内」について
3 筋師千代市編著『英語獨案内 附西洋料理法』について
4 片山潜著『渡米案内』について
5 英語学習の書として
6 異文化学習の書として
7 渡米者の教科書として
第4章 国定教科書にみる移植民表象──北南米と満洲の連動に着目して(石川 肇)
1 国定教科書と日本の海外移植民
2 地理教科書の移植民記述
3 国定歴史教科書の移植民記述
4 国定国語教科書の移植民記述
5 国定教科書における帝国の勢力圏のウチ・ソトの相関性・連動性
第5章 戦前期南カリフォルニア地域の「二世教育」──南加中央日本人会と南カリフォルニア大学東洋科を中心に(松盛美紀子)
1 南加中央日本人会教育部と「二世教育」
2 南加中央日本人会青年部と「二世教育」
3 南カリフォルニア大学東洋科と日本人講師
4 戦略としての「二世教育」と越境性
第6章 北米日本人移民キリスト教会の越境教育活動と満洲(吉田 亮)
1 北米・満洲間の越境教育史研究に向けて
2 越境キリスト者による満洲伝道─1930年代
3 1930年代の北米日系キリスト教会と満洲伝道
第7章 多文化カナダの「架け橋」たち──カナダにおける日本語学習者の変遷(野呂博子)
1 「架け橋」再考の試み
2 新渡戸稲造とカナダ日系社会
3 「架け橋」育成機関としての日本語学校──継承語から国際語へ
4 大学レベルでの日本語学習者──「インターカルチュラル」な日本語学習
5 「架け橋」の意味──変化と不変
第Ⅱ部 移民・越境者の文化・芸術・身体
第8章 文化使節と同胞慰問──ブラジルの藤原義江一人二役(細川周平)
1 「我等のテナー」の誇り
2 第一回旅行─1937年
3 移住地の歓迎
4 第二回旅行──1939年
5 我等のテナー、彼等のテナー
第9章 二世歌手の音楽歴──ハワイ松竹楽団のチヨコ・イダを中心に(中原ゆかり)
1 ハワイのカラオケと日系二世
2 子どもの頃の音楽経験──日本の歌を好きになる
3 ハワイ松竹楽団の青春時代──大戦後の二世楽団
4 カラオケの時代の懐メロ・ブーム─歴史に刻まれる二世楽団の時代
第10章 沖縄・日本本土・ブラジルを越境・還流する沖縄音楽レコード(高橋美樹)
1 日本における沖縄音楽レコードの制作──レーベルの設立
2 ブラジルの沖縄系移民制作の海賊盤レコード
3 海賊盤レコード制作の背景
4 〈越境〉する沖縄音楽レコード
5 〈還流〉する沖縄音楽レコード
第11章 衣と身体技法からみるブラジル移民──下着としゃがむことを中心に(西村大志)
1 衣と身体技法から歴史を読み直す
2 『伯剌西爾時報』にみる初期の洋装
3 しゃがむことと下着と立小便
4 風俗改良への志向
5 移民への風俗教育としての移民収容所と『ブラジル』の質疑応答
6 身体技法と経済変動
第12章 戦前期ブラジルにおける武道と教育(小林ルイス)
1 武道の意味とブラジルへの導入
2 ブラジルにおける第二次世界大戦前の武道の概要
3 武道関連の史資料の種類
4 武道の教育的役割
5 教育界における武道の普及
第13章 越境するスポーツと移民子弟教育──太平洋戦争直前期ブラジルにおける日系少年野球を事例に(根川幸男)
1 越境資源としてのスポーツ
2 ブラジルへの野球の越境と日系エスニックスポーツへの跳躍
3 ブラジルにおける日本語教育制限・禁止と野球の役割
4 二世、そして各種スポーツへのまなざし
第Ⅲ部 越境する人的資源の活用と政治経済的連動
第14章 ブラジル外国移民二分制限法前後の日系子弟教育──「日主伯従」に傾いた経緯について(飯窪秀樹)
1 移住史の叙述をたどりなおす
2 小学校に対する補助金交付の経過概略
3 ブラジル渡航情勢の変化と子弟教育
4 排日的傾向に直面してからの展開
5 子弟教育の維持と「日主伯従」化──1938、39年
6 移民生活史と「おかみ」の視線を対照することの意義
第15章 戦間期ブラジルの独裁政権とナショナリズムの高揚(住田育法)
1 「排日的」ではない関係
2 新指導者ヴァルガスの誕生
3 ヴァルガス独裁の展開
4 ナショナリズム高揚と国民統合の政策
5 自殺が高めた独裁者没後の評価
第16章 旧南洋群島民間人収容所における教育と軍政初期の沖縄教育──主にテニアン島チューロ収容所の事例を手がかりに(小林茂子)
1 収容所内の教育実態解明に向けて
2 テニアン島チューロ収容所の生活実態
3 テニアン島チューロ収容所の教育状況
4 軍政初期の沖縄での教育──英語教育の導入
5 旧南洋群島収容所と沖縄との教育的連関
第17章 移民的徳の誕生──1950〜60年代の海外移民政策と政治的主体としてのブラジル日系人の形成(佐々木剛二)
1 ブラジル日本移民の「徳」
2 ブラジル日本移民をめぐる三つの主体像の形成
3 「エスニシティ」や「同化」の物語を超えて
第18章 移住・引揚・国内定住地としての福島と原子力発電所──地元エリート・県人会移民ネットワークを中心に(浅野豊美)
1 原子力発電所導入の背景としての人口流動
2 引揚者定住と国内開拓地としての福島
3 地元の指導者と県人移民ネットワーク
4 移民・植民の根幹にあるもの──郷土の意味
第19章 1930年代の福島県に在留した日系二世(坂口満宏)
1 移民卓越県における日系二世の存在状況を把握する取り組み
2 1930年代の福島県に在留した日系二世
資 料 移民関係事務担当局課の変遷──戦前期外務省機構図(柳下宙子)
あとがき──身体と建築(井上章一)
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