Minerva西洋史ライブラリー 107
コミュニケーションから読む中近世ヨーロッパ史
紛争と秩序のタペストリー
編著:服部 良久
内容紹介
中近世の社会を新たな視点から読み解く
目次
序 章 コミュニケーションから歴史を読み解くこと(服部良久)
1 「コミュニケーション」と歴史学
2 中近世ヨーロッパ史と「コミュニケーション」
3 コミュニケーションと紛争・秩序
4 本書の構成
第Ⅰ部 移動する君主と宮廷、あるいは首都の伝統
第1章 宮廷集会の内と外
——フリードリヒ・バルバロッサ即位初年の事例より(服部良久)
1 宮廷集会とコミュニケーション・メディア
2 政治的コミュニケーションと儀礼——メアゼブルク宮廷集会
3 紛争のなかの宮廷集会——コルファイ修道院長ヴィーバルトの書簡簿より
第2章 ウィリアム征服王と息子たち
——宮廷集会と証書発給にうかぶ家族の秩序(中村敦子)
1 コミュニケーションの場としての宮廷集会と証書発給
2 征服王の支配とその家族
3 証書への登場
第3章 巡る王、集う人々
——スクーン宮廷からみた中世盛期スコットランド王国(西岡健司)
1 移動する国王宮廷と証書の発給
2 選ばれたスクーン
3 スコットランド王即位の地
4 スクーン宮廷の変化
第4章 あの世に向かって
——二人のブルゴーニュ公フィリップの葬送と後継者たちの思惑(中堀博司)
1 初代公フィリップ・ル・アルディの葬送
2 第三代公亡骸の移送に先立つ新公シャルルの動き
3 第三代公フィリップ・ル・ボンおよび公妃イザベルの亡骸の移送
第5章 首都を離れるビザンツ皇帝
——コンスタンス二世とアルメニア(小林 功)
1 古代末期のアルメニア
2 アルメニアの「君侯」
3 コンスタンス二世のアルメニア・コーカサス遠征
第6章 都を血で穢すのは誰か
——ビザンツ中期における権力闘争の作法(根津由喜夫)
1 テオドシウス城壁の内と外
2 市街戦は是か非か
3 血で穢れた勝利者の赦し方
第Ⅱ部 地域の紛争解決と政治的統合
第7章 王子エドワードの対ボルドー政策、1254〜61年
——領有者プランタジネット家と都市コミューンのコミュニケーション(朝治啓三)
1 エドワードはヘンリのガスコーニュ・ボルドー領有策を変えようとした
2 ボルドー市制における市長選挙の史的過程
3 1259年パリ条約とエドワードの立場
4 1254〜61年のボルドー市民とヘンリ、およびエドワードとの交渉
5 スタテュによるボルドー市制は市民に平和をもたらしたか
第8章 ロプト・ヘルガソンの「反逆」
——13世紀後半アイスランド社会とノルウェー王権(松本 涼)
1 中世アイスランドと王権
2 アイスランドの誠実宣誓——1277〜78年の紛争
3 法と王権——1281年全島集会
4 行政官アースグリームとの不和——1281〜83年の展開
5 ノルウェー宮廷と教会紛争
第9章 党派と〈複合領域〉
——14世紀ノヴァーラのグェルフィとギベッリーニ(佐藤公美)
1 複合領域ノヴァーラへのヴィスコンティ国家の進展
2 ノヴァーラのグェルフィとギベッリーニ
3 オッソラ渓谷のグェルフィとギベッリーニ
4 党派と同盟——地域と国家を超えた結合
第10章 裁く農民、抗う領主
——1460年代バーゼル農村部の農民裁判より(田中俊之)
1 粉屋の名誉
2 領主の言い分
3 噂の真相
4 紛争の本質
第11章 市長門閥から上訴市民を救う
——18世紀帝国司法と複数諸地域間の連携(渋谷 聡)
1 裁判の概要
2 裁判の経過
3 最終判決と帝国最高法院判事ズンマーマンの所見
第12章 イタリアが外国に支配されるとき
——近世の「帝国イタリア」とその変容(皆川 卓)
1 「帝国イタリア」(イタリア帝国封)とは何か
2 近世帝国イタリアの紛争解決システム
3 双方向的コミュニケーションが失われるとき
——カスティリオーネ・デッレ・スティヴィエーレ侯国の君主臣民間紛争
第Ⅲ部 都市のアイデンティティと都市間コミュニケーション
第13章 都市景観が映す支配の歴史
——ボローニャの場合(山辺規子)
1 15世紀——ボローニャとベンティヴォーリオ家
2 16世紀——ボローニャ都市貴族と教皇との協力体制
第14章 交易にはポー川を通るべし
——ヴェネツィアと内陸近隣諸都市の争い・秩序(高田京比子)
1 中世の北イタリアとヴェネツィア
2 ヴェネツィアと内陸近隣諸都市の協約——ボローニャを例に
3 ヴェネト地方とポー川の河川通行
4 フェッラーラ戦争
5 経済活動と紛争、秩序、政治的コミュニケーション
第15章 なぜバポームの通過税を負わねばならないのか
——13・14世紀北フランスの都市と王権の係争(山田雅彦)
1 地域的合意としての「慣習」の文書化
2 初期パリ高等法院判決の厳正と慣習指向——1260〜80年代まで
3 王権による制度改変と地域社会の動揺——1280・90年代より
4 都市アミアンの遅まきながらの参戦と成果——1310〜40年代
第Ⅳ部 教会のあるべき秩序をめぐって
第16章 彷徨える異端者たちの足跡を辿る
——中世南フランスにおける異端審問と「カタリ派」迫害(図師宣忠)
1 史料としての異端審問記録
2 異端審問の創設と地域住民の反応
3 逃亡する異端者のネットワーク
4 追跡する審問官と「カタリ派」の行方
第17章 悪評を通じて魂を統治する
——13世紀のルーアン大司教ウード・リゴーによる巡察(轟木広太郎)
1 なぜ13世紀か
2 修道院への巡察
3 司祭たちに対する巡察
4 俗人に対する公の贖罪
第18章 聖なる権威の在り処をもとめて
——15世紀後半のリエージュ紛争とブルゴーニュ公(青谷秀紀)
1 リエージュ紛争の事件史
2 聖務停止をめぐるコミュニケーション
3 仲裁者としての教皇使節
4 聖なる加護の行方
第19章 信仰か平和か
——パッサウの交渉とアウクスブルク宗教和議(渡邊 伸)
1 諸侯の反乱とパッサウ協約
2 アウクスブルク帝国議会の交渉
3 アウクスブルク宗教平和の残した課題
第Ⅴ部 他者とのコミュニケーションと秩序形成
第20章 外国人には官職を与えるな
——中世後期チェコにおける貴族共同体のアイデンティティ(藤井真生)
1 チェコ貴族共同体の成長と「民族」意識の形成
2 ルクセンブルク朝ヤン治世の帝国出身者の動向
3 14世紀後半の「外国人」定義
第21章 アレクシオスは平和の仲介者か
——1299年前後のクレタにおけるヴェネツィア支配とギリシア人(高田良太)
1 中世後期のクレタと分離的共生
2 連環する反乱
3 アレクシオス・カレルギスの反乱と和平
4 1299年以後のアレクシオス
第22章 家の内にいる敵
——十字軍国家におけるフランク人の農村支配(櫻井康人)
1 フランク人支配領域に残留する農民たち
2 「下級役人」に関する研究動向
3 フランク人と農村をつなぐ媒介者たち
4 フランク人による農村支配の変容
あとがき
索 引
ISBN:9784623072781
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:562ページ
。定価:6500円(本体)
。発行年月日:2015年10月
。発売日:2015年10月30日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHD。