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ゲノム裁判

ヒト遺伝子は誰のものか

原案:ジョージ・L・コントレラス
訳:上原直子

紙版

内容紹介

科学技術の発展は、人類にとって歓迎すべきことだが、その利用が重大な人権問題につながる場合もある。嘘発見器による冤罪事件や、警察の捜査に利用されるDNA鑑定技術がはらむ諸問題、遺伝子情報を根拠にした差別的扱いなどが代表的だ。
アメリカ自由人権協会(ACLU)科学顧問のターニャ・シモンチェリは、協会が管轄する、科学と人権が交わるこうした問題に、科学的助言を行う立場にあった。そんな彼女は2005年のある日、同僚にこんな相談をする。「<遺伝子特許>には問題がある」。この小さな相談が、世界中の注目を集める歴史的裁判のはじまりだった――。
「ヒト遺伝子に特許は認められるのか?」
このシンプルな問いに、合衆国最高裁が審判を下したのは2013年。足かけ8年の舞台裏には、がん患者や疾患の遺伝的保因者、研究の自由を求める科学研究者、特許で利益を得るバイオ業界、そして原告・被告双方の訴訟弁護士や特許を承認してきた政府の人間、事件を裁く判事たちのさまざまな思いが交錯するドラマがあった。
一私企業がヒト遺伝子利用を独占する。長く定着していたこの慣行に初めて異を唱えた裁判の、手に汗握るドキュメンタリー。
巻末に事件の法的意義の著者解説を収録。

目次

序文

I 訴訟を起こす
第1章 誰を訴える?
第2章 らせんの中の世界
第3章 遺伝子の女王
第4章 リンカーン氏の船
第5章 ACLUの流儀
第6章 自然の産物
第7章 連邦議会
第8章 特許と言論の自由
第9章 パワー・オブ・ピンク
第10章 あなたは保険で守られています
第11章 BART
第12章 特許と原告
第13章 引き金を引く

II 法廷へ
第14章 有力者
第15章 SDNY
第16章 ニワトリと卵
第17章 政府の人間
第18章 ソロモンの裁き——赤ん坊を引き裂く
第19章 特許裁判所
第20章 マジックマイクロスコープ——魔法の顕微鏡
第21章 最後のひとり

III アメリカ最高位の裁判所
第22章 デジャヴ
第23章 エアフォース1
第24章 友の証
第25章 Oyez, Oyez, Oyez!
第26章 9対0
第27章 その後

解説――ミリアド社事件の(法的)意義

情報源について/謝辞/主な登場人物
人名索引/事項索引/原注/写真提供者

著者略歴

原案:ジョージ・L・コントレラス
(Jorge L. Contreras)
ユタ大学法学教授およびヒト遺伝学兼任教授。知的財産法と科学政策に加え、遺伝学とゲノム科学に関する法律について、研究・教育を行っている。科学、法律、政策の一流誌に学術論文が掲載されており、『ニューヨーク・タイムズ』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『エコノミスト』『ブルームバーグ』『ワシントン・ポスト』『コリア・タイムス』など世界中のメディアに引用されている。アメリカ政府諮問委員会の委員として、連邦議会で特許法に関する証言を行った経験がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
訳:上原直子
(うえはら・なおこ)
翻訳家。桐朋学園芸術短期大学演劇専攻を卒業。主な訳書にブルーター/ハリソン『投票の政治心理学』(みすず書房、2023)、シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』(2019)、ボガード『本当の夜をさがして』(2016)、フィンレイソン『そして最後にヒトが残った』(2013、以上、白揚社)、ウェルズ『旅する遺伝子』(英治出版、2008)、クレイソンほか『オノ・ヨーコという生き方』(ブルースインターアクションズ、2006)、セッチフィールド『世界一恐ろしい食べ物』(エクスナレッジ、2013)がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

ISBN:9784622096795
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:544ページ
定価:4500円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PSAK