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検閲官のお仕事

原案:ロバート・ダーントン
他訳:上村敏郎
他訳:八谷舞

紙版

内容紹介

「そもそも検閲とは何か?」 この問いに答えるのは簡単ではない。その理由の一つは、ある国家での検閲のありようが、別の国家のそれとは大きく異なるためだ。
この難問に向き合い、「検閲という現象」がもつ特徴を抽象すべく、ブルボン朝フランス、英領インド、東ドイツという三つの政治体制の検閲を題材に、おびただしい量の史料を渉猟してまとめあげ、優れた比較史研究として結実させたのが本書である。

「その物語はヴェルサイユの宮廷のゴシップをほのめかしているのではないか?」、「このサンスクリット語は、民衆を扇動しているのではないか?」、「あの小説には「社会主義的な党派性」が欠如していないだろうか?」――。本書の主役は、こうした解釈の問題に取り組んだ言論統制のエージェント一人ひとりである。
違法な書籍商を従えて禁書の取引をした警官、「現地語文学」の動向を仔細に読み込み監視する図書館員、現代の編集者や学術論文の査読者さながら著者と議論し、軽微な異端を見逃しつつ書物のクオリティに心を砕いた者たち……。史料に登場するこうした人物たちは、きわめて人間くさい関係性のなかで「お仕事」に従事していた。
書物を生み出す力の一つとして、検閲がその生産から流通に至るまで深く浸透していたことを示す、野心的歴史叙述。

目次

図版一覧

序論

第一部 ブルボン朝フランス――特認と抑圧
活版印刷術と合法性/検閲官の視点/日常業務/問題事例/スキャンダルと啓蒙/図書警察/使用人宿舎に潜むある作家/流通システム――毛細血管と動脈

第二部 英領インド――自由主義と帝国主義
アマチュア民族誌/メロドラマ/監視/扇動?/抑圧/法廷解釈学/さまよえる吟遊詩人たち/基本的な矛盾

第三部 共産主義東ドイツ――計画と迫害
現地の情報提供者/文書館の内側へ/著者との関係/著者と編集者との交渉/過酷な実例/ある演劇――あの芝居を止めろ!/ある小説――出版と溶解処分/検閲の終わり方

結論
謝辞
訳者解説

人名索引/事項索引/原注/図版の出典

著者略歴

原案:ロバート・ダーントン
(Robert Darnton)
1939年ニューヨーク生まれ。専門は、書物の歴史、近代フランス史。ハーバード大学卒業後、オックスフォード大学でフランス史を専攻し、Ph.D(歴史学)取得。1968年から2007年まで、プリンストン大学で歴史学の教鞭を執る。2007年から2015年まで、ハーバード大学教授、ハーバード大学図書館長を務め、現・名誉教授。著書に『猫の大虐殺』(海保眞夫・鷲見洋一訳、1990)、『革命前夜の地下出版』(関根素子・二宮宏之訳、1994、ともに岩波書店)、『禁じられたベストセラー――革命前のフランス人は何を読んでいたか』(近藤朱蔵訳、2005、新曜社。全米批評家協会賞受賞)などがある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
他訳:上村敏郎
(うえむら・としろう)
獨協大学外国語学部教授。ウィーン大学博士課程修了。Dr. Phil. 筑波大学特任研究員を経て現職。専門は啓蒙期ハプスブルク史。著書に『ハプスブルク史研究入門』(分担執筆、昭和堂、2013)、訳書にラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』(共訳、三和書籍、2016)がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
他訳:八谷舞
(やたに・まい)
亜細亜大学法学部講師。トリニティ・カレッジ・ダブリン博士課程修了(Ph.D.)。日本学術振興会特別研究員(PD)、東京大学助教を経て現職。専門は近現代アイルランド史、ジェンダー史、読書史、図書館史。著書にIrish Women's Writing 1878-1922: Advancing the Cause of Liberty(共著、Manchester University Press, 2016)、Happiness in Nineteenth-century Ireland(共著、Liverpool University Press, 2021)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

ISBN:9784622096634
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:368ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2023年12月
発売日:2023年12月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNTP