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ミミズの農業改革

著:金子信博

紙版

内容紹介

地面の下で、無数の土壌生物が蠢いている。土は、彼らの活動の痕跡が幾重にも刻み込まれることで維持されている複雑な構造物だ。もし土壌生態系が失われれば、土もただの砂に戻っていき、やがて失われてしまうだろう。
なかでもミミズは、土壌生態系において「生態系改変者」に位置付けられ、その生態系にいるかいないかで風景を一変させてしまうほどの影響力を持つ。落ち葉と土を旺盛に食べ、糞は団粒に、トンネルは排水路になる。その痕跡は長く土に残り、土壌生物や植物に恩恵をもたらしている。
土壌生態系は長い間土を維持してきた。しかし、人が農耕によって土に介入し始めると土壌劣化が始まった。20世紀以降は特に急速に劣化が進んでいる。著者曰く、その原因は農薬だけでなく、農業の基本とされる耕耘にもあるという。土壌生態系を維持するには、耕してはいけないのだ。
では、耕さない農業は可能なのだろうか。著者は、自身の実験農場で「不耕起・草生」の農業を実践している。その農地では、耕していないのに土が柔らかくなり、化学肥料を与えていないのに土壌の栄養塩の循環が増える。これらの変化は、土を生態学の視点で捉えることで説明できるという。
ミミズをはじめとする土壌生態系と作物を共存させる、これからの再生型農業を提案する書。

目次

はじめに
第一部 土とは何か――人のいない世界について
第1章 土、身近なる未知
第2章 落ち葉のバランス
第3章 足元に潜む生物群X
第4章 ミミズは不可視の要石である

第二部 人の介入で何が起きるか――現在の主流農業の問題点
第5章 沈黙するミミズたち
第6章 なぜ農業に生物多様性が必要なのか
第7章 数百万年の土壌劣化、百年の土壌劣化
第8章 無肥料栽培でどこまで育つ?
第9章 暗中模索する人びと

第三部 農業をどう転換させるか
第10章 ミミズの農業改革
第11章 無理のない転換のために
おわりに 土を守ることは、自分を守ること

参考文献
索引

著者略歴

著:金子信博
(かねこ・のぶひろ)
1959年生まれ。京都大学大学院農学研究科林学専攻修士課程修了。島根大学生物資源科学部助教授、横浜国立大学大学院環境情報研究院教授を経て、2019年から福島大学食農学類教授。農学博士。専門は土壌生態学、森林生態学。2023年4月に大学院としては日本初のアグロエコロジープログラムを福島大学大学院食農科学研究科に開設。著書『土壌生態学入門』(東海大学出版会、2007)、編著Sustainable Living with Environmental Risks (Springer、2014)、編著『土壌生態学』(朝倉書店、2018)、分担執筆『有機農業大全』(コモンズ、2019)などがある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

ISBN:9784622096405
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:224ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2023年12月
発売日:2023年12月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KN
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:TVB