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フィレンツェの朝

原案:ジョン・ラスキン
訳:井上義夫

紙版

内容紹介

「身廊と翼廊に埋め込まれたたくさんの墓碑板のなかで、本当に美しい石板、ラスキン氏があんなにも褒め讃えた石板はどこにあるのかを彼女に教えてくれる人は誰もいなかった」(E・M・フォースター『眺めのいい部屋』より)
ベデカーやマレーのガイドブック頼りの教会見学に終始するイギリス人観光客を、ヴィクトリア朝の美術評論家ラスキンが引率し、中世キリスト教美術について語って聴かせる――そんな設定のもとに本書が書かれてから30余年後、『眺めのいい部屋』が世に出た1908年には、この本はフィレンツェを訪れる旅行者必携の「ガイドブック」となっていたようだ。
もちろん一般的な意味での「ガイドブック」ではない。チマブーエ、ジョットをはじめ、「神の家」に捧げられた至高の芸術を生み、信仰と祈りが息づいていた中世フィレンツェの時代精神を、ラスキンは教皇、皇帝、王や諸侯、修道士、人文学者、芸術家たちが織り成す絵巻として展げてみせ、その文化と精神を映し出すフレスコ画や浮彫彫刻へと読者を誘ってゆく。
朧ろげにしか目に映っていなかった中世の美が、朝の光のなかに姿を現わす。7日間の旅。

目次

一日目の朝――サンタ・クローチェ聖堂
二日目の朝――黄金の門
三日目の朝――ソルダンの前で
四日目の朝――穹窿天井という名の書物(ヴォールテッド・ブック)
五日目の朝――狭き門
六日目の朝――羊飼いの塔
七日目の朝――目に見える教会

欽定訳聖書抜粋
ジョットの鐘楼 浮彫
訳者あとがき

著者略歴

原案:ジョン・ラスキン
(John Ruskin)
1819-1900。英国ヴィクトリア朝の代表的な批評家。ロンドンに生まれる。1837年、オクスフォード大学クライスト・チャーチ校入学。卒業後の1843年、画家ターナーを擁護する目的で着手した『近代画家論』第1巻を刊行(全5巻、1860年完結)、美術批評家としての地歩を固める。1869-78年、オクスフォード大学スレイド記念美術講座担当教授(1883-85年再任)。『ヴェネツィアの石』(全3巻、1851-53)をはじめとする芸術批評=社会批評の著作群は後続のウィリアム・モリスやアーツ・アンド・クラフツ運動に大きな影響を与えた。他の著書に『建築の七灯』(1849)『芸術経済論』(1857)『この最後の者にも』(1862)『胡麻と百合』(1865)『塵の倫理』(1866)『プラエテリタ』(1885-89)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
訳:井上義夫
(いのうえ・よしお)
1946年、徳島県に生まれる。1974年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程退学。一橋大学名誉教授。著書『ロレンス 存在の闇』(小沢書店 1983)『評伝 D. H. ロレンス』(全3巻、小沢書店 1992-94/第8回和辻哲郎文化賞・一般部門)『村上春樹と日本の「記憶」』(新潮社 1999)『ロレンス游歴』(みすず書房 2013)、訳書 ラスキン『ヴェネツィアの石』(編訳、みすず書房 2019)『コンラッド短編集』(ちくま文庫 2010)『ロレンス短編集』(ちくま文庫 2010)『E・M・フォースター短編集』(ちくま文庫 2022)。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

ISBN:9784622096375
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:320ページ
定価:5400円(本体)
発行年月日:2023年09月
発売日:2023年09月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AGA