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子どもの心理-社会学

ソルボンヌ講義 2

原案:モーリス・メルロ=ポンティ
他訳:松葉祥一
他訳:澤田哲生

紙版

内容紹介

〈われわれがあらためて採り上げるべきなのは、超克をめぐるヘーゲルの考え方に似た考え方です。すなわち、変形しつつ保存するという考え方です。あらゆる段階が、大人の生に寄与するのです。口唇的要素は未来に向かうエネルギーを提供します。肛門的要素は、粘り強さにおける別の寄与を、深く継続的な何かをもたらします。サディズムですら、闘争の精神を提供することによって、肯定的な寄与をもたらします。実際にあるのは、相対的な超克だけです。したがって、精神分析家たちは、過去がいわば破棄されるとは考えもしません。標準的なノルマル性格には前性器的な要素が備わっています。各段階はそれに先行する段階からの寄与を取りまとめ、錬り上げます。乳児であった以上、人間にはその痕跡が残るのです〉(「幼児の対人関係」)

著者のソルボンヌ講義1949-1952より、「子どもの意識の構造と葛藤」「子どもの心理‐社会学」「幼児の対人関係」「児童心理学の方法」「他者経験」の5編を収録。発達心理学や児童心理学の領域に大きな影響を与えてきた本書の現象学的研究方法は、今日では社会学・教育学・医学・看護学でも注目されている。メルロ=ポンティの前期思想から後期思想への発展を解明するうえでも重要な位置を占める書である。

目次

子どもの意識の構造と葛藤
子どもの心理‐社会学
幼児の対人関係
児童心理学の方法
他者経験


訳者あとがき
索引

著者略歴

原案:モーリス・メルロ=ポンティ
1908年、フランスに生まれる。1926年、エコール・ノルマル・シュペリュール入学、在学中サルトル、ボーヴォワール、レヴィ=ストロースらと知りあう。1930年、哲学教授資格試験に合格。その前年にフッサールのソルボンヌ講演を、1935-1939年には高等研究院におけるコジェーヴのヘーゲル講義を聴講。ルーヴァンのフッサール文庫に赴き、遺稿を閲覧したのは1939年。第2次大戦中は従軍・レジスタンス活動を経験した。1945年、学位論文として同年刊の『知覚の現象学』および『行動の構造』(1942)を提出。1946年、サルトルらとともに『レ・タン・モデルヌ』創刊。1948年、リヨン大学教授、1949年、パリ大学文学部教授を経て1952年、コレージュ・ド・フランス教授に就任。1961年没。著書『ヒューマニズムとテロル』(1947)『意味と無意味』(1948)『弁証法の冒険』(1955)『シーニュ』(1960)ほか。没後『見えるものと見えないもの』(1964)『世界の散文』(1969)、ソルボンヌ講義録、コレージュ・ド・フランス講義録などが刊行されている。
他訳:松葉祥一
(まつば・しょういち)
1955年生まれ。同志社大学文学研究科哲学・倫理学専攻博士課程満期退学。パリ第8大学博士課程中退。前神戸市看護大学教授。現在 同志社大学非常勤講師。哲学・倫理学専攻。主な業績:『哲学的なものと政治的なもの』(青土社、2010)『メルロ=ポンティ読本』(編著、法政大学出版局、2018)、メルロ=ポンティ『自然』(共訳、みすず書房、2020)、同『コレージュ・ド・フランス講義草稿』(共訳、みすず書房、2019)、トビ・ナタン『他者の狂気──臨床民族精神医学試論』(共訳、みすず書房、2005)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
他訳:澤田哲生
(さわだ・てつお)
1979年生まれ。パリ東大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了。富山大学人文学部准教授を経て現在 東北大学教育学研究科・教育学部准教授。哲学・現象学専攻。主な業績:『メルロ=ポンティと病理の現象学』(人文書院、2012)、Aux marges de la phénoménologie : Lectures de Marc Richir(共著、Hermann、2019)、ジャック・ランシエール『哲学者とその貧者たち』(共訳、航思社、2019)、マルク・リシール『マルク・リシール現象学入門──サシャ・カールソンとの対話から』(監訳、ナカニシヤ出版、2020)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

ISBN:9784622096153
出版社:みすず書房
判型:A5
ページ数:512ページ
定価:8000円(本体)
発行年月日:2023年06月
発売日:2023年06月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNA