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否定された施設

精神科病棟開放化レポート

編:フランコ・バザーリア
訳:梶原徹

紙版

内容紹介

18世紀末、フランスの精神科医フィリップ・ピネルが精神障害者を拘束する鎖を解いたことが、近代精神医学のはじまりとされている。しかし、本書で語られる20世紀のイタリアの精神科病棟には鉄格子付きの窓があり、患者たちは朝から晩までベッドに縛りつけられ、たとえ中庭に出ることがあっても、今度は木に縛りつけられた。
1960年代、イタリア精神保健改革の父フランコ・バザーリアと仲間たちは、ゴリツィア精神病院の閉鎖病棟を次々と開放していった。本書で報告されるのは、ゴリツィア最後の2つの閉鎖病棟の開放化が進められた時期である。
〈私たちは、状況が危機にあることを肯定する時期に到達している。実践的・科学的意味のすべてで収容所の現実は乗り越えられたが、それが継続的歩みに成りうるかどうかはまだわからない〉
病棟を開放するとはどういうことか、そのとき一体何が起こるのか――患者をはじめ、医師、看護師ほか、病棟に携わるすべての者たちの証言により明らかになる、閉鎖病棟開放のドキュメント。

目次

序文  フランコ・バザーリア

ドキュメンタリー的序文  ニーノ・ヴァスコン編
第1章 暴力の施設  フランコ・バザーリア
第2章 治療共同体のイデオロギー  ルチオ・スキタール
第3章 自治の神話と現実  アントニオ・スラヴィッチ
第4章 伝統的精神科病院の否定  アゴスティーノ・ピレッラ
第5章 女子C病棟――最後の閉鎖病棟  レティツィア・ジェルヴィス・コンバ
第6章 一つの施設矛盾――アルコール病棟  ドメニコ・カーサグランデ
第7章 精神医学の危機と施設矛盾  ジョヴァンニ・ジェルヴィス
第8章 施設の転覆と共通目的  フランカ・オンガロ・バザーリア
第9章 あるインタビュー――社会学的否定  ジアン・アントニオ・ジーリ

ゴリツィア精神病院治療者グループによる施設精神医学に関する文献目録(1963-67年)
訳者あとがき

著者略歴

編:フランコ・バザーリア
1924-1980。ヴェネツィアに生まれる。1948年、パドヴァ大学卒業。ゴリツィア県立精神病院、パルマ県立コロルノ精神病院、トリエステ県立精神病院の院長を歴任した。公立精神病院の廃止を定めた1978年のイタリア精神保健法改正(「バザーリア法」とも呼ばれる)の立役者となった、20世紀におけるイタリア精神医学を代表する人物である。編著書にL’istituzione negata (Einaudi 1968/Baldini e Castoldi 1998), Morire di classe (Einaudi 1969), La maggioranza deviante (Einaudi 1971), Crimini di pace (Einaudi 1975) などがある。彼の死後、全集Basaglia Scritti I・II (Einaudi 1981-82), 講演集Conferenze brasiliane (Raffaello Cortina Editore 2000)などが、フランカ・オンガロ・バザーリアなどの編集・監修によって刊行されている。
訳:梶原徹
(かじわら・とおる)
1948年、東京都墨田区に生まれる。1974年、東京大学医学部医学科卒業。東京大学附属病院精神科病棟(赤レンガ病棟)、長野県立阿南病院精神科、南埼玉病院、陽和病院を経て、2007年1月より浜田クリニック院長。訳書にマイヤーソンほか『精神の障害——臨床、法制度、その実際』(監修 三輪書店 1994)『バザーリア講演録 自由こそ治療だ!——イタリア精神保健ことはじめ』(共訳 岩波書店 2017)F・O・バザーリア編『現実のユートピア――フランコ・バザーリア著作集』(みすず書房 2019)がある。

ISBN:9784622090724
出版社:みすず書房
判型:A5
ページ数:360ページ
定価:7500円(本体)
発行年月日:2022年03月
発売日:2022年03月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:MJ