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PCRの誕生(新装版)

バイオテクノロジーのエスノグラフィー

著:ポール・ラビノウ
訳:渡辺 政隆

紙版

内容紹介

「PCR法の発明は、1993年のノーベル化学賞に輝いた。受賞したのは、製薬ベンチャー企業シータス社の社員だったキャリー・B・マリスである。そのマリスは、2019年8月に74歳で亡くなった。
今や、PCR法の技術や装置は格段の進歩を遂げている。とはいえ、PCRの原理が発明されて実用化した場所とそれにまつわる人間模様を描いた本書の価値が失われたわけではない。むしろ、PCR法の原点を知るための必読文献というべきだろう。なにしろ、PCR法は、遺伝子研究全般のみならず、ウイルス感染の診断検査にまで広く活用されているのだから。」
(「新装版のための訳者あとがき」)

PCRは、誰が「発明」したのか。マリス、同僚研究者、実験助手、管理者… 文化人類学者が、1980年代のベンチャー企業の実像を、エスノグラフィー(民族誌)の手法により、科学社会学の研究対象として描く。シータス社の設立から買収されるまで、関係者への豊富なインタヴューにより、ノーベル賞の受賞対象となった研究・開発の生まれた環境が浮かび上がる。

目次

はじめに
1 バイオテクノロジーの方へ
2 シータス社――信頼に足る勢力
3 PCR――実験環境と概念の産物
4 概念から道具へ
5 実用性のチェック
6 結論――ちょっとした道具

写真
インタヴューに関する覚書
謝辞
原注
文献
訳者あとがき
新装版のための訳者あとがき

著者略歴

著:ポール・ラビノウ
1944年生まれ。シカゴ大学大学院修了。専門は文化人類学、民族誌。ミシェル・フーコー研究でも知られている。1978年よりカリフォルニア大学バークリー校にて教鞭をとり、現在も教授職にある。分子生物学に代表される生命科学の発展が人間性の理解に与えた影響にも注目している。邦訳のある著書に『ミシェル・フーコー――構造主義と解釈学を超えて』(共著、山形頼洋他訳、筑摩書房、1996)、『異文化の理解――モロッコのフィールドワークから』(井上順孝訳、岩波現代選書、1980)。
訳:渡辺 政隆
サイエンスライター、東北大学特任教授。1955年生まれ。東京大学農学系大学院修了。専門はサイエンスコミュニケーション、科学史、進化生物学。著書『DNAの謎に挑む――遺伝子探求の一世紀』(朝日選書、1998)、『一粒の柿の種――科学と文化を語る』(岩波現代文庫、2020)、『ダーウィンの遺産』(岩波現代全書、2015)ほか。訳書 フィリップス『ダーウィンのミミズ、フロイトの悪夢』(みすず書房、2006)、ダーウィン『種の起源』(上下、光文社古典新訳文庫、2009)、レジス『ウイルス・ハンター』(ハヤカワ文庫NF、2020)ほか。

ISBN:9784622089728
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:296ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2020年12月
発売日:2020年12月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TDC