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心理療法の実践

著:カール・グスタフ・ユング
監:横山 博
訳:大塚 紳一郎

紙版

内容紹介

〈人間の欲求や人間が必要とするものはさまざまだ。ある人にとっての救済は、ある人にとっては監獄である。正常性や適応に関しても同じことが言える。現代の心理に、普遍妥当の処方や規範などというものは絶望的なまでに存在しない。存在するのは多種多様な要求を持つ個々の事例だけである〉

フロイトの精神分析、アードラーの個人心理学、のちの認知行動療法の萌芽となる行動主義心理学。ユングが生きた時代、今日まで受け継がれているいくつもの心理学理論と、それに基づく心理療法が生まれた。
さまざまな学派が心のモデルを作ろうと競い合う混沌のなかでも、ユングは治療の個別性を徹底的に重視し、決して他学派の存在を否定することはなかった。心というものが複数の側面、複数のリアリティを持つということを、そして心には複数の接近法が必要であることを、ユングは知っていたのである。
心理療法とは何か。他者の心に近づきたいと切実に願い、それを叶えたとき、〈近づいた者〉の心には何が起きるのか。「現代の心理療法の問題」「心理療法実践の現実」ほか、希少な臨床論9編から追体験する、心理療法家・ユングが見た世界。

目次

心理療法とは何か
現代の心理療法の諸側面
現代の心理療法の問題
医学と心理療法
現代における心理療法
心理療法の根本問題
除反応の治療的価値
心理療法実践の現実
超越機能

解題
訳者あとがき

初出一覧

著者略歴

著:カール・グスタフ・ユング
1875-1961。1875年7月26日、スイス北部のケスヴィルにて生まれる。バーゼル大学卒業後、ブルクヘルツリ病院のブロイラーのもとで言語連想実験の研究に従事。その後、フロイトの精神分析運動に参加し、フロイトの後継者と目されるほど、その中心人物として精力的に活動した。1913年にフロイトと決別。その後は独自の心理学の構築に専心し、「コンプレクス」「元型」「集合的無意識」「無意識の補償機能」「内向/外向」「個性化」などの独創的な理論を提唱していった。1961年6月6日、死去。20世紀最大の心理学者の一人。
監:横山 博
1945年、石川県に生まれる。精神科医、臨床心理士。1970年京都大学医学部卒業。1970年代から大阪で精神医療改革運動に取り組み、当時劣悪だった日本の精神医療の環境の改善に努めた。1984-5年、1988-9年、二度に分けてチューリッヒのユング研究所に留学、ユング派分析家の資格を取得。甲南大学名誉教授(在職は1995-2011年)。日本ユング派分析家協会会長(2001年-)。著書『神話のなかの女たち 日本社会と女性性』(人文書院、1995)『心理療法とこころの深層 無意識の物語との対話』(新曜社、2006)『心理臨床の治療関係』(共著、金子書房、1998)『心理療法 言葉/イメージ/宗教性』(編著、新曜社、2003)『心理療法と超越性 神話的時間と宗教性をめぐって』(編著、人文書院、2008)『物語の語るこころ』(創元社、2017)。訳書 サールズ『逆転移 分裂病精神療法論集 3』(1996)ユング『ユング 夢分析論』(監訳、2016)『心理療法の実践』(監訳、2018、以上みすず書房)ローゼン『うつ病を生き抜くために 夢と描画でたどる魂の癒し』(人文書院、2000)。
訳:大塚 紳一郎
1980年、東京都に生まれる。臨床心理士。2002年慶應義塾大学文学部卒。2009年甲南大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、ISAP(チューリッヒ)在学。訳書 ランク『出生外傷』(2013)メツル/カークランド編『不健康は悪なのか』(2015)ユング『ユング 夢分析論』(2016)同『心理療法の実践』(2018、いずれも共訳、みすず書房)フェレンツィ『精神分析への最後の貢献』(共訳、岩崎学術出版社、2007)。

ISBN:9784622087045
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:248ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2018年08月
発売日:2018年08月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP