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全体主義の起原 3【新版】

全体主義

著:ハンナ・アーレント
訳:大久保和郎
訳:大島かおり

紙版

内容紹介

〈現在までのところ、すべては可能であるという全体主義の信念は、すべてのものは破壊され得るということだけしか証明してこなかったように見える。けれども、すべてが可能であることを証明しようとするその努力の中で全体主義体制は、人間が罰することも赦すこともできない犯罪が存在するという事実をそれとは知らずにあばき出した。不可能なことが可能にされたとき、それは罰することも赦すこともできない根源的な悪となった。この悪は、利己主義や貪欲や利欲や怨恨(ルサンチマン)や権力欲や怯惰(きょうだ)のような悪い動機をもってしてはもはや理解することも説明することもできまい。それゆえまた怒りをもってこれに報復することも、愛によってこれを忍ぶことも、友情によってこれを赦すことも、法律をもってこれを処罰することもできまい。屍体製造工場に、あるいは忘却の穴に投げこまれた犠牲者たちが、刑吏たちの目にはもはや〈人間的〉と見えなかったのとまったく同様に、この最も新しい種類の犯罪者はわれわれ一人一人が人間の罪業の意識で連帯することを覚悟しなければならぬ枠をすら超えている〉

人類史上それまでにはなかった全体主義という枠組から、ナチス・ドイツとソヴィエト・ロシアの同質性と実態を分析する。

目次

新版にあたって――凡例

まえがき(1968年の英語分冊版より)

第十章 階級社会の崩壊
1 大衆
2 モッブとエリートの一時的同盟

第十一章 全体主義運動
1 全体主義のプロパガンダ
2 全体主義組織

第十二章 全体的支配
1 国家機構
2 秘密警察の役割
3 強制収容所

第十三章 イデオロギーとテロル――新しい国家形式

エピローグ(英語版第13章 イデオロギーとテロル――新しい統治形式)

原註
訳者あとがき  大島通義
新版への解説  矢野久美子

参考文献
事項索引
人名索引

著者略歴

著:ハンナ・アーレント
1906-1975。ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスの愛の概念」によって学位取得。ナチ政権成立後(1933)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得、その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授などを歴任、1967年、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授に任命される。
訳:大久保和郎
1923年東京に生まれる。慶應義塾大学文学部中退。独・仏文学を専攻。1975年歿。訳書 マリアンネ・ウェーバー『マックス・ウェーバー』(1965)ハンナ・アーレント『エルサレムのアイヒマン』(1969、新版2017)同『全体主義の起原』1・3(共訳、1972、74、新版2017)カール・シュミット『政治的ロマン主義』(1970、《始まりの本》2012、以上みすず書房)ほか。
訳:大島かおり
1931年に生まれる。東京女子大学文学部卒業。訳書 エンデ『モモ』(岩波書店、1976)、ホフマン『黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ』(光文社古典新訳文庫、2009))、アーレント『全体主義の起原』2・3(共訳、1972、1974、新版2017)、リンゲルブルム『ワルシャワ・ゲットー――捕囚1940-42のノート』(1982、新版2006)、スレーリ『肉のない日――あるパキスタンの物語』(1992)、アーレント『ラーエル・ファルンハーゲン――ドイツ・ロマン派のあるユダヤ女性の伝記』(1999)、『アーレント=ハイデガー往復書簡 1925-1975』(共訳、2003)、『アーレント=ヤスパース往復書簡 1926-1969』(全3巻、2004)、フィールド『天皇の逝く国で』(1994、増補版2011)、『祖母のくに』(2000)、ルクセンブルク『獄中からの手紙――ゾフィー・リープクネヒトへ』(2011)、アーレント『反ユダヤ主義――ユダヤ論集 1』『アイヒマン論争――ユダヤ論集 2』(共訳、2013、いずれもみすず書房)ほか多数。

ISBN:9784622086277
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:512ページ
定価:4800円(本体)
発行年月日:2017年08月
発売日:2017年08月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:QDTS