ゲシュタルトクライス
新装版
知覚と運動の人間学
著:ヴィクトール・フォン・ヴァイツゼッカー
訳:木村 敏
訳:濱中 淑彦
内容紹介
「生命あるものを研究するには、生命と関りあわねばならぬ。……生命は生命あるものとしてわれわれの眼の前にある。……学問というものは、問うということの目覚めと共に、生命のまっただなかで始まったものなのである。したがって学問が生命から跳び出すありさまは、眠りからの目覚めに似ている。……生命それ自身は決して死なない。死ぬのはただ、個々の生きものだけである。個体の死は、生命を区分し、更新する。死ぬということは転化を可能にするという意味をもっている。死は生の反対ではなくて、生殖および出生に対立するものである。出生と死とはあたかも生命の表裏両面といった関係にあるのであって、論理的に互いに排除しあう反対命題ではない。生命とは出生と死である。このような生命が、われわれの真のテーマである。」(本書序より)
本書の仏訳(フーコー、ロシェによる)の序文においてアンリ・エーは、「ここに力説しようとしているのは、主体の存在の構造的発展のうちに、つまり我と我身に自己を反映させることによってはじめて世界に開かれる主体の峻烈な実存の弁証法のうちに、主体の自己自身との葛藤の意味を包摂、把握しようとする方向」なのだ、と述べている。ゲシュタルトクライス、生物学的行為の自己創造の円環性、円環形態の構造(ゲシュタルトクライス)、それは実験室、臨床、理論的思索のいずれから先に生れたとも言いえない、燃えるような生命の思想なのである。
目次
序
I 緒論
1 運動
自己運動/障碍/作業原理
2 知覚
自己運動に際しての運動の知覚――自己知覚
3 生物学的行為
相即/からみ合い/数学的統合と生物学的統合/ゲシュタルト心理学について/感覚運動性空間表象/機能の特殊化/特殊量/知覚は感官機能の産物ではない/対象と現在/同一対象、モノガミー/構成的錯誤/ネガティヴな作業/相互隠蔽性、回転扉の原理/主体性/創造――創造主/体系的手法と生物学的手法
II 神経系の病的障碍
末梢
1 機能変動
圧感覚の感覚生理学的分析/圧感覚の病理学について/いわゆる力覚と固有感覚/病的な事態投影/材質の知覚について
2 運動作業の解体
中枢性運動障碍の局在と作業原理/錐体路系/錐体外路性の運動障碍/特殊化と形式性/解剖学的観点/局在一般について/伝導路
3 時間的障碍としての機能変動
時間概念について/触覚における時間的機能変動/空間時間的障碍
4 感覚質と専門感官の病理学について
色彩視/自己制約
5 失調症
6 失認症の諸障碍
III 知覚の諸条件
1 解剖学的構造の諸条件
知覚の述語形成と実在性格について
2 生理学的(類生理学的)諸機構
刺戟、機能、対象/人為界/機能と機能構造
3 空間、時間および量
a 体験された秩序は客観的秩序ではない/b 客観的秩序が体験の秩序を制約する/c 知覚はいくつかの可能な客観的秩序を示す/d 知覚における量の反論理/e 空間と時間は世界の中にある
4 自我と対象の出会い(相即)
IV 運動の諸条件
1 運動の解剖学的諸条件
2 運動の生理学的諸条件
3 形式の発生
形式転換/有機体と環界との相対性としての形式/形式の発生はゲシュタルトクライスである
4 空間、時間、形式
意図と結果の逆説的関係/不意打ちと予期/生物学的時間の構造/生物学的空間の構造
V ゲシュタルトクライス
自然哲学から生理学へ/現実性の条件としての不確定性
1 異元機能から相即原理へ
a 学問は生命過程を精神物理的‐異元的なものとして扱う/b ゲシュタルトクライスの力動的形式。等価原理/c 符合並行論
2 主体の導入と行為の相補的一元性
a 転機と非恒常性の自己経験/b 主体‐客体‐関係としてのゲシュタルトクライスの詳細な特徴づけ
3 パトス的範疇、根拠関係、性の円環
若干の概念の解説
「ゲシュタルトクライス」について(アンリ・エー)
訳注
解説
訳者あとがき
新装版あとがき
論文目録
ISBN:9784622086178
。出版社:みすず書房
。判型:A5
。ページ数:408ページ
。定価:5600円(本体)
。発行年月日:2017年05月
。発売日:2017年05月18日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JM。