出版社を探す

パレスチナ問題

著:エドワード・W・サイード
訳:杉田 英明

紙版

内容紹介

〈私たちはパレスチナと呼ばれる土地にいた。たとえナチズムを生き抜いたヨーロッパのユダヤ人残存者を救うためであっても、ほとんど何百万もの同胞にパレスチナからの離散を余儀なくさせ、私たちの社会を雲散霧消させてしまったあの土地奪取と私たちの存在抹消とは、いったい正当化される行為だったであろうか。いかなる道徳的・政治的基準によって、私たちは自らの民族的存在や土地や人権に対する主張を捨て去るよう期待されているのだろうか。一民族全体が法律上存在しないと告げられ、それに対して軍隊が差し向けられ、その名前すら抹消するために運動が繰り広げられ、その「非存在」を証明すべく歴史が歪曲される。そんなとき、何の議論も沸き起こらない世界とは何なのだろうか〉

西洋のオリエンタリズム的・植民地主義的な視点が、いかにイスラエルの視点にすりかえられ、そこから「アラブ」に対する歪んだ表象が生み出されてきたか。問題の起源からシオニズム、バルフォア宣言、イスラエル建国、四次にわたる中東戦争、キャンプ・デーヴィッド会談をへて1990年代へ。本書は、現代世界の矛盾の象徴であるパレスチナ問題への最も信頼に足る基本文献であるとともに、サイードが渾身をこめて書き上げたもう一つの主著である。

目次

凡例
地図



第1章パレスチナ問題
1 パレスチナとパレスチナ人
2 パレスチナとリベラルな西洋
3 表象の問題
4 パレスチナ人の権利

第2章犠牲者の視点から見たシオニズム
1 シオニズムとヨーロッパ植民地主義の姿勢
2 シオニストの住民化とパレスチナ人の非住民化

第3章パレスチナ人の民族自決に向けて
1 残留者、流亡者、そして占領下の人々
2 パレスチナ人意識の発生
3 PLOの台頭
4 審議未了のパレスチナ人

第4章キャンプ・デーヴィッド以降のパレスチナ問題
1 委託された権限――修辞と権力
2 エジプト、イスラエル、合衆国――それ以外に条約が含意したもの
3 パレスチナ人および地域の現実
4 不確定な未来

1992年版への序文

訳者あとがき
訳註に利用した参考文献
アラビア語・ヘブライ語のローマ字転写と仮名表記
主要な術語・概念の訳語一覧
書誌
原注
索引

著者略歴

著:エドワード・W・サイード
1935年11月1日、イギリス委任統治下のエルサレムに生まれる。カイロのヴィクトリア・カレッジ等で教育を受けたあと合衆国に渡り、プリンストン大学卒業、ハーヴァード大学で学位を取得。コロンビア大学英文学・比較文学教授を長年つとめた。2003年9月歿。邦訳されている著書に『オリエンタリズム』(平凡社、1986、ライブラリー版1993)『イスラム報道』(みすず書房、1986、増補版2003)『始まりの現象』(法政大学出版局、1992)『音楽のエラボレーション』(みすず書房、1995、新装版2004)『知識人とは何か』(平凡社、1995、ライブラリー版1998)『パレスチナとは何か』(岩波書店、1995、現代文庫版2005)『ペンと剣』(クレイン、1998、ちくま学芸文庫版2005)『文化と帝国主義』(全2巻、みすず書房、1998、2001)『遠い場所の記憶 自伝』(みすず書房、2001)『フロイトと非ヨーロッパ人』(平凡社、2003)『バレンボイム/サイード 音楽と社会』(みすず書房、2004)『オスロからイラクヘ』(みすず書房、2005)などがある。
訳:杉田 英明
(すぎた・ひであき)
1956年生まれ。東京大学名誉教授。比較文学比較文化・中東地域文化研究専攻。著書『葡萄樹の見える回廊』(岩波書店、2002)『アラビアン・ナイトと日本人』(岩波書店、2012)。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

ISBN:9784622070849
出版社:みすず書房
判型:A5
ページ数:440ページ
定価:6300円(本体)
発行年月日:2004年02月
発売日:2004年02月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FB