「満洲文学」の発掘
著:西田 勝
内容紹介
日本の近代は東アジア諸地域の侵略と不可分だった。しかし「満洲国」をはじめ植民地で刊行された書籍や雑誌は歴史のなかで散逸し、研究文献資料はいまだ不完全なものに留まっている。2021年に逝去した著者は、その忘却を埋めるべく植民地文化学会を創設、国内外の作家・研究者との協働のもと、知られざる「満洲文学」の実態を明らかにしてきた。本書は、30年以上をかけたその畢生の仕事である。
目次
はじめに
I 「満洲国」成立以前
「満洲国」に夢を紡ぐ 藤山一雄の『群像らをこをん』
海を渡ったプロレタリア文学
「満洲文話会」とは何であったか
プロレタリア詩誌『燕人街』の登場
Ⅱ 「満洲国」成立後
ある転向文学者の軌跡 島田和夫から上野市三郎へ
「満洲国」における芸術的抵抗の一例
加納三郎の「戦略」
北尾陽三の場合
詩人野川隆の到達点
逮捕寸前の野川隆
内在的批判者としての秋原勝二
朝鮮人作家今村栄治の内心の世界 「満洲文学」の傑作 「同行者」と「新胎」
内地文学者の訪「満」
佐多稲子のハルピン訪問
小林秀雄 文化工作者として
「満洲国」文学第二世代作家としての加藤秀造
「満洲国」における「米英撃滅詩」
ファシストと文学 甘粕正彦の「樋口一葉の日記」
Ⅲ 中国人作家の回想録
「郷土文学」論争から大東亜文学者大会まで(梁山丁)
二人の女性作家─蕭紅と呉瑛(梁山丁)
雑誌『明明』の回想(疑遅)
私と文学(陳隄)
逮捕入獄から解放まで(関沫南)
Ⅳ 「満洲国」のメディア断面
大内隆雄と『新京日日新聞』
『満洲行政』文芸欄を読む
『満洲経済』文化系記事を読む
地方文学雑誌としての『大吉林』
「満洲国」におけるフェミニズム 『大新京日報』の連続コラム「婦人の立場から」
初出一覧
あとがきにかえて(谷本澄子)