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尊厳と生存

編:加藤 泰史
編:後藤 玲子

紙版

内容紹介

「生命の尊厳」の語で、「生命」を値踏みする誘惑を決然と退けたはずの「尊厳」が、「尊厳ある生命」の語によって「生命」の選別を招き入れかねない。戦争の比喩でも語られるコロナ・パンデミックは、特にそれを顕在化させた。限られた医療資源とトリアージ、ワクチンの分配と格差、先端医療、ゲノム編集、自己決定、出生前・着床前診断、終末期医療・ケア、文学、政治など多様な領域の喫緊の問題として「尊厳」を論じる。

目次

編者前書き コロナ・パンデミック下で「生存」/「生命」が「尊厳」概念を問い直す(加藤泰史)

第Ⅰ部 コロナ・パンデミックと尊厳の問題

第一章 人間の尊厳と生命権──コロナ・トリアージと「人間の尊厳」(加藤泰史)

第二章 新型コロナウイルス感染症と医療資源配分(美馬達哉)

第三章 グローバルなワクチン分配のための倫理的枠組み──公正な優先モデルはワクチンの公正かつ衡平な分配という誓約を実現するための実践的方法を提供する(エゼキエル・J・エマニュエルほか/栗林寛幸゠訳)

第四章 感染症文学・生命・尊厳(ギブソン松井佳子)

第五章 韓国のCOVID-19対処における「戦い」のメタファー(諸昭喜)

◎コラム1 死者の尊厳とコロナ・パンデミック(隠岐–須賀麻衣)

第Ⅱ部 現代思想と尊厳の対話

第一章 リベラリズムと尊厳──魂の質素な生い立ちと傷つきやすさ(後藤玲子)

第二章 人間存在のアンチノミー──ソフィー・ノールマンにおける超越の現象学と尊厳(馬場智一)

第三章 生と超越──生命論の生命疎外に抗して(品川哲彦)

第四章 人間の尊厳と生命倫理──批判的哲学からのアプローチ(ジルベール・オトワ/岩佐宣明゠訳)

◎コラム2 「終末期医療・ケア」関連図書案内(小林道太郎)

第Ⅲ部 先端医療と尊厳の問題

第一章 遺伝子改変人間の時代と日本(香川知晶)

◎コラム3 自己決定と命(宇佐美公生)

第二章 ヒトの生殖細胞系列に対するゲノム編集研究──ドイツにおいても新たな議論を行うことを支持する(ベッティナ・シェーネ゠ザイファート/桐原隆弘゠訳)

第三章 ヒト遺伝子研究における「ロシアンルーレット」?(ベッティナ・シェーネ゠ザイファート/桐原隆弘゠訳)

第四章 中国におけるゲノム編集の倫理学的議論について(魏偉+李亜明)

◎コラム4 「出生前・着床前診断」関連図書案内──人間の尊厳の観点から(小椋宗一郎)

第五章 遺伝子編集の倫理(金相得/水野邦彦゠訳)

◎参考資料 〔韓国〕生命倫理および安全に関する法律(略称:生命倫理法)(水野邦彦゠訳)

編者後書き その生命/生存の条件は人の尊厳を満たすものですか?(後藤玲子)

執筆者・訳者紹介

著者略歴

編:加藤 泰史
1956年生まれ。椙山女学園大学国際コミュニケーション学部教授、一橋大学名誉教授。哲学・倫理学。『スピノザと近代――ドイツ思想史の虚軸』(編著、岩波書店、2022年)、Kant’s Concept of Dignity, Berlin, Boston: De Gruyter, 2019 (Gerhard Schönrichとの共編著)、「公共と尊厳」(『思想』第1139号、2019年)、ほか。
編:後藤 玲子
1958年生まれ。一橋大学博士(経済学)。帝京大学経済学部・先端総合機構教授、一橋大学名誉教授。『潜在能力アプローチ――倫理と経済』(岩波書店、2017年)、『福祉の経済哲学――個人・制度・公共性』(ミネルヴァ書房、2015年)、『正義の経済哲学――ロールズとセン』(東洋経済新報社、2002年)、ほか。

ISBN:9784588151255
出版社:法政大学出版局
判型:A5
ページ数:494ページ
価格:5200円(本体)
発行年月日:2022年05月
発売日:2022年05月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD