フラグメンテ
著:合田 正人
内容紹介
レヴィナスをはじめとする数多くの翻訳や著作で知られ、90年代以降日本の現代思想研究の最前線に立ちつづける著者の初の論集。ユダヤ思想を光源として哲学史の縺れた迷宮を読み解き、テクストの無数の断片/裂け目からなる「多島海システム」としての現実を生きる倫理(エチカ)を探究する。日本思想や現代美術への鋭利な批評も加えた30篇の論考やエッセーを収録。
目次
序 多島海幻想
灯浮標──H君の個展に寄せて
第一部 非在の海図を継ぎ接ぐ
もの言わぬまなざしの世界戦争──横浜美術館「奈良美智展」に寄せて
歓びの荒野の淵にて──宮崎進展「よろこびの歌を唄いたい」に寄せて
PERSONA──鬼海弘雄と福田定良
曾域/ロクス・ソルス──未知の荒川/ギンズに
アラカワとの対話──『建築する身体』の余白に
現代「音楽哲学」の展開をめぐって──ジャンケレヴィッチとその後
第二部 岸辺の漂流
幸福な場所──ベルクソンと「祖国」
廃墟の造形──ベルクソン/レヴィナス/ベンヤミン
同じものの錬金術──コモン・センス論に向けて
翻訳と裏切り—フランスのハイデガー
ブランショの幼年──「文学空間」とは何か
第三部 華やぐ干瀬(ひし)
パトチカと戦争の存在論──テクネー・前線・犠牲
非同一性の非同一性──途上の「アドルノとデリダ」
鏡のなかの迷宮──ドゥルーズの方法序説
超越論的経験論とは何か──ドゥルーズのヒューム論がひらく地平
オイディプスたちの墓に
第四部 暗礁から暗礁へ
ゲシュタルト概念の転成と「制度論的心理療法」──トスケル・ウリ・ガタリ
アンリ・マルディネにおける美と狂気の現象学
神谷美恵子の「フーコー」
スピナロンガ──ジャン=ダニエル・ポレ『秩序』をめぐって
第五部 大渦旋(メールシュトローム)に呑み込まれて
「種の論理」の生成と変容、その現代的意義
種と場所/種の場所──西田幾多郎と田辺元
「存在の革命」をめぐって──埴谷雄高とレヴィナス
岬と雑人──倉橋由美子、再び
文学的想像力と政治──サルトルと石原慎太郎
翻訳の魔
第六部 まだ見ぬ島々の系譜
十九世紀フランス哲学──「人間の科学」の光と翳
レオン・ポリアコフ歴史学の射程と方法、その問題点
スピノザとユダヤ的生存のトポロジー
あとがき
初出一覧