叢書・ウニベルシタス 1034
他者のための一者
レヴィナスと意義
著:ディディエ・フランク
訳:米虫 正巳
訳:服部 敬弘
内容紹介
現代フランスの哲学・現象学研究の第一人者が、『存在するとは別の仕方で』をはじめとする後期レヴィナス思想の読解に挑む全22章の探究。〈神の死〉以後のニヒリズムを見据えながら、他者、顔、超越、彼性、痕跡、受動性、隣人、身代わり、正義、語ることなどの主題を通じて、〈存在の意味〉と〈善〉の可能性、最後の〈神〉とギリシャ/ヘブライ思想の謎めいた関係に迫る。
目次
序論
第一章 問いのなかの問い=問いについての問い
第一節 ある問いからもう一つの問いへ=他者へ向けたある問いについて
第二節 主体は存在の関数でしかないのか
第二章 名詞、動詞、存在論的差異
第一節 動詞から名詞へ──同一化
第二節 命題の両義性──〈語られること〉と〈語ること〉
第三章 ある曝露からもう一つの曝露へ=他者への曝露について
第一節 意義性を賦与すること
第二節 ケノーシスと意義
第三節 方法としての激化
第四章 自己に反する唯一者
第一節 〈召喚された者〉の忍耐
第二節 推移と老化
第三節 拒絶不可能な=不変の〔格変化しない〕唯一性
第四節 善から存在へ
第五章 志向性なき感受性
第一節 感覚の麻痺
第二節 意義性としての心性
第三節 抗いえない=不可避な享受
第四節 正義の地位
第六章 魂と身体
第一節 意義のなかの地平
第二節 身体の賦活
第三節 諸々の魂の身体化=合体
第七章 接触と近しさ
第一節 最上級の近しさ
第二節 遺 物
第三節 世界の詩
第八章 意識の遅れ
第一節 近しさから主観性へ
第二節 接 触
第三節 前‐意識的過去
第九章 現象の欠損
第一節 自己自身に不在となる現前
第二節 全く別の戦慄
第三節 態度=容量の喪失と欲望
第四節 彼 性
第十章 痕跡から謎へ
第一節 〈汝〉の根底における〈彼〉
第二節 攪 乱
第三節 謎へ応答すること
第四節 倫理学と第一哲学
第十一章 自己の再帰性
第一節 無起源的強迫
第二節 自己の絶対的受動性
第三節 存在の外なる自己のうちへ追放されて
第十二章 絶対的対格
第一節 カテゴリーのドラマ
第二節 自我の〈存在からの‐超脱〉
第三節 自己との非同等性と同等性
第四節 開示性の誇張
第十三章 〈一人の他者のための一者〉と〈あらゆる他者のための一者〉
第一節 記号とその地平
第二節 〈受動=受難〉
第三節 メシア的自己性
第十四章 善──、存在と悪
第一節 聖書のなかにある見えないものと存在の彼方にある〈善〉
第二節 無責任と存在の遊び
第三節 エロスに瀕して存在すること
第十五章 自由と身代わり
第一節 自己から自由になること、存在から自由になること
第二節 存在の贖罪としての自由
第十六章 〈語ること〉の真摯さ
第一節 体系と主体
第二節 「われここに」
第三節 証 し
第十七章 神という語
第一節 無限者の賛美〔栄光化〕
第二節 預言──始源と仲介
第三節 語られることなしに意義を表すこと
第四節 〈語ること〉のための語
第十八章 言語の誤用
第一節 〈語られること〉から〈前言撤回〉へ
第二節 哲学的言説
第十九章 第三者の介在
第一節 デュオか、それともトリオか
第二節 非対称性の修正
第三節 出発点への回帰
第二十章 正義の時
第一節 近しさと正義の拒否〔裁判拒否〕
第二節 記号の重さと神の正義
第三節 三人称からもう一つの三人称=〔神という〕他者へ
第二十一章 存在の意味、あるいは無‐意味
第一節 イリヤ=ある(il y a)
第二節 無意義性の意義性
第三節 懐疑論とそれへの反駁
第二十二章 〈彼=それ〉 ?
第一節 第三者から神へ
第二節 対話者
第三節 ニヒリズムの果て=境界に
結論
解説 意味概念の拡張とニヒリズムの克服(服部敬弘)
訳者あとがき(米虫正巳)
原註
人名索引